著作権重要判例要旨[トップに戻る]







著作物の題号の商標権侵害性(2)
CDアルバム『
UNDER TEH SUN』事件」平成70222日東京地方裁判所(平成6()6280 

【コメント】本件は、原告が被告に対して、被告が、業として製造、販売している商品であるCD(シンガーソングライターである【A】の楽曲を収録したコンパクト・ディスク。以下「本件CD」という。)について、「UNDER TEH SUN」という標章(「被告標章」)を付する行為が、原告の登録商標(「指定商品」…「おもちゃ、人形、娯楽用具、運動具、釣り具、楽器、演奏補助品、蓄音機(電気蓄音機を除く。)、レコード、これらの部品及び付属品」)に類似する商標の使用であり、原告の商標権を侵害すると主張して、損害賠償等の支払を求めた事案です。 

 商標法は、21項において、「商標」とは、「文字、図形若しくは記号若しくはこれらの給合又はこれらと色彩との結合(以下「標章」という。)」であって、「業として商品を生産し、証明し、譲渡する者がその商品について使用するもの」(1号。なお、役務について使用する商標については、内容が重複するため、以下省略する。)をいうと規定し、この規定を前提として、31項において、「その商品…の普通名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」(1号)、「その商品…について慣用されている商標」(2号)、「前各号に掲げるもののほか、需要者が何人かの業務に係る商品…であることを認識することができない商標」(6号)を除いて商標登録を受けることができる旨規定している。右によれば、商標法は、立法の仕方として、「需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができ」るか否かにかかわらず、業として商品を生産し、証明し、譲渡する者がその商品について使用する標章をすべて形式的に商標法上の「商標」として定義しているものと解される。
 しかし、形式的な意味での「商標」を除いて、本来的な意味での商標について考えてみると、その本質は、「需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができ」るようにして、自己の業務に係る商品と他人の業務に係る商品とを識別するための標識として機能することにあるというべきである。このことは、1条が「この法律は、商標を保護することにより、商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り、もって産業の発達に寄与し、あわせて需要者の利益を保護することを目的とする。」と規定しており、31項が、前記の1号、2号及び6号の商標並びに「その商品の産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、数量、形状、価格若しくは生産若しくは使用の方法若しくは時期…を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」(3号)、「ありふれた氏又は名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」(4号)及び「極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標」(5号)を除いて商標登録を受けることができる旨、また2項において「前項第3号から第5号までに該当する商標であっても、使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるものについては、同項の規定にかかわらず、商標登録を受けることができる」旨規定し、右の出所表示機能、自他商品識別機能を有する商標についてのみ商標登録を受けることができることを認めた上で、25条で「商標権者は、指定商品…について、登録商標の使用をする権利を専有する」と規定し、もって、形式的な意味での商標でなく、出所表示機能、自他商品識別機能を有する商標のみをその本質を備えた本来的な意味での商標と認めて、これを権利として保護していると認められることから明らかである。
 
以上によると、36条が右25条の登録商標の使用権を侵害する行為、すなわち指定商品について登録商標を使用する行為の差止めを規定し、37条が指定商品についての登録商標に類似する商標の使用又は指定商品に類似する商品についての登録商標若しくはこれに類似する商標の使用について、商標権を侵害するものとみなす旨規定しているのは、商標権者以外の第三者が、登録商標と同一又は類似の商標を、指定商品又はこれに類似する商品に使用することにより、その商品の出所を表示して自他商品を識別する標識としての機能を果たし、もって、商品の出所の混同を生ずるおそれが生じ、商標権者の登録商標の本質的機能の発揮が妨げられるという結果を生じることによるものであるというべきである。また、2612号は、登録要件を定める311号及び3号の規定に沿って、「当該指定商品若しくはこれに類似する商品の普通名称、産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、数量、形状、価格若しくは生産若しくは使用の方法若しくは時期…を普通に用いられる方法で表示する商標」について商標権の効力が及ばない旨を規定しているが、右規定は、第三者が登録商標と同一又は類似の商標を使用しても、その商標が商品に表示されている態様からみて、その商標が、商品の普通名称や産地、品質等を表示するものにすぎず、商標の本質的な機能である出所表示機能、自他商品識別機能を果たしていないと認められる商標について、商標権の禁止権の効力が及ばない旨を定めたものであると解すべきである。
 
したがって、以上の36条、37条及び26条の法意に照せば、第三者が登録商標と同一又は類似の商標を指定商品又はこれに類似する商品について使用している場合でも、それが、その商品の出所を表示し自他商品を識別する標識としての機能を果たしていない態様で使用されていると認められる場合には、登録商標の本質的機能は何ら妨げられていないのであるから、商標権を侵害するものとは認めることはできない。すなわち、2612号の「当該指定商品若しくはこれに類似する商品の普通名称、産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、数量、形状、価格若しくは生産若しくは使用の方法若しくは時期を普通に用いられる方法で表示する商標」に該当しない商標についても、出所表示機能、自他商品識別機能を有しない態様で使用されていると認められる商標については、右に述べた理由により、商標権の禁止権の効力を及ぼすのは相当ではない
 
被告標章が出所表示機能、自他商品識別機能を有しない態様で本件CDに使用されているかどうかについて判断する。
 
…によれば、次の事実が認められる。
 
本件CDは、シンガーソングライターである【A】が、自ら作詞、作曲した曲や共同で作詞、作曲した曲を自ら歌唱し、これに伴奏を加えた楽曲全11曲を収録したものであり、本件アルバムは、その曲の選択と配列の順序についても、同人が一定のコンセプトないしイメージに従って決定し、編集したものである。
 
一般に、歌手やシンガーソングライター等が歌唱、演奏する曲をレコードやCDの媒体物に録音して、発売する形態として、その収録されている曲の曲数に着目した場合、「シングル」と「アルバム」とに二分することができる。
 
「シングル」は、ある特定の単数の曲を録音し発売することを意図して、その1曲を収録するものであるが、レコード盤に収録する場合には、レコード盤には表面(A面)と裏面(B面)の二つの収録可能な面があるため、裏のB面にも付随的な曲を収録して発売するのが通常である。そして、シングル盤の主となる収録曲の題名は、一般に、収録されるレコード盤のA面やCD盤の表面上に、収録曲として表記されるほか、これを収納するジャケットの表面にも、その曲を歌唱、演奏する歌手等の名前と共に、比較的大きく表記されて発売されることが多い。また、これらの商品の製造、発売元の表示としては、その商標やその商号が比較的小さく表記されることが多い。
 
一方、「アルバム」は、複数の曲が一定の数だけ集められ、特定の順序で配列されて収録されたものであるが、これは、アルバム製作者が、一定のコンセプト、イメージ等に基づいて、複数の曲の中から、収録する一定数の曲を選択し、その配列の順序を決定した上で製作するものであって、編集著作物となりうるものである。そして、この特定して選択、配列された複数曲の集合体に関して、その個々の曲の題名とは別個の題号が付けられるのであるが、このアルバムタイトルは、アルバム製作者が、その収録曲の内容やコンセプト、イメージ等を凝縮して表現するものとして決定することが多く、収録曲の題名とは全く異なる題号が付けられたり、その収録曲のうちの一曲の題名が付れられることもある。
 
このように、アルバムタイトルは、特定の複数曲の集合体に関して付けられるものであるが、このアルバムタイトルは、一般に、その特定の複数曲が収録されるレコード盤の両面やCD盤の表面上に表記されるほか、これを収納するジャケットの表面に、その曲を歌唱、演奏する歌手等の名前と共に、比較的大きく表記されて発売されることが多い。また、これらの商品の製造、発売元の表示としては、その商標やその商号が比較的小さく表記されることが多い
 
このアルバムタイトルは、それらの音楽がどのような媒体(CD盤、レコード盤、カセットテープ、ミニ・ディスク等)に収録されようとも、媒体ごとにその題名が変更されることは全くなく、また、その媒体たる商品を発売するレコード会社が変わった例や、一旦廃盤とされた後にリバイバル発売された例においても、収録曲の集合体が同一である限り、そのアルバムタイトルが変更されないで使用される実例が多数存在している
 
右によれば、アルバムタイトルは、収録する媒体如何やその媒体たる商品の製造、発売元に関わりなく、専らレコード盤やCD盤に収録されている特定の複数曲の集合体に対する題号として、固定されて付けられたものであるということができる(なお、アルバムの中には、レコード会社等の一定の編集方針に基づき、内容たる曲がそれぞれ異なるアルバムが同一のタイトルの下に反復、継続して製作、販売されるシリーズものが例外として存在し、これらについては、以上とは別個の考慮が必要とされるが、本件アルバムがこれに当たらないことは明らかである。)。
 
本件CDにおいて、被告標章を構成する「UNDER THE SUN」との文字や、その片仮名表記である「アンダー・ザ・サン」との文字及び本件CDを製造、販売している被告を表記する文字等の商標が使用されている態様は、次のとおりである。
 
(略)
 以上によれば、被告標章並びにフォーライフ商標及び被告の社名の具体的な表記の態様をみると、被告標章は、前記認定のアルバムタイトルの一般的な表記の態様と何ら異なることはなく、また、フォーライフ商標及び被告の社名も、前記認定のアルバムにおける製造、発売元の一般的な表記の態様と何ら異なることはないのであり、したがって、本件CDに表示されている被告標章は、専ら本件CDに収録されている全11曲の集合体すなわち編集著作物である本件アルバムに対して付けられた題号(アルバムタイトル)であると認められ、本件CDの需要者としても、被告標章を、専ら本件CDの内容である複数の収録曲の集合体すなわち編集著作物である本件アルバムについて付けられた題号(アルバムタイトル)であると認識し、有体物である本件CDを製造、販売している主体である被告を表示するのは、アルバムタイトルとは別に本件CDに付されているフォーライフ商標や被告の社名であると認識することは明らかである。よって、本件CDに使用されている被告標章は、編集著作物である本件アルバムに収録されている複数の音楽の集合体を表示するものにすぎず、有体物である本件CDの出所たる製造、発売元を表示するものではなく、自己の業務に係る商品と他人の業務に係る商品とを識別する標識としての機能を果たしていない態様で使用されているものと認められる。なお、原告は、CD商品のタイトルは、収録された音楽情報を視覚的イメージに変えて瞬時に訴え、他の商品との識別をもたらす機能を有している旨主張するが、アルバムタイトルである被告標章が、本件CDに収録されている音楽情報を表示する機能を有しているとしても、本件CDの製造、発売元を表示する機能を有していないものであることは、右に認定したところから明らかであり、さらに、アルバムタイトルについては、その媒体たる商品を発売するレコード会社が変わった場合でも、収録曲の集合体が同一である限りそのタイトルが変更されずに使用される実例が多数存在しているとの前記認定事実等からも確認されるところである。また、原告の右以外の前記各主張も、以上に述べたところにより、いずれも採用することはできない。
 
よって、被告が本件CDに被告標章を使用した行為は、原告の本件商標権を侵害するものとは認められないから、原告の請求は、その余の点について判断するまでもなく理由がない。











相談してみる

ホームに戻る