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プロモーター(興行主)の侵害主体性
「ダイサン音楽興行事件」
平成140628日東京地方裁判所(平成13()15881/平成150116日東京高等裁判所(平成14()4053 

【原審】

 
被告ダイサンは,本件演奏会(1)及び本件演奏会(2)37番,41番,42番を除く)に,被告オカモトは,本件演奏会(3)79番,90番を除く)に,いわゆるプロモーターとして関与した。
 
これらの演奏会は,いわゆる歌謡ショーであって,歌手やバンドが楽曲を演奏するものであるところ,上記演奏会において,原告の管理著作物が演奏された。演奏された楽曲の大部分が原告の管理著作物であった。
 
(略)
 
被告ダイサン又は被告オカモトは,プロダクションに対して支払う出演料及びその他の経費(250万円程度は必要である)を基に,いくらのチケットが何枚販売できると利益が上がるかを計算して,入場料金を決定する。プロダクションに対しては一定額の出演料を支払うのみであるので,予想よりも収入が多かった場合は,被告ダイサン又は被告オカモトの利益となり,逆に予想よりも収入が少なかった場合は,被告ダイサン又は被告オカモトの損失となる。
 
上記の各演奏会については,被告ダイサン又は被告オカモトとプロダクションとの間で,著作権使用料をいずれが負担するかの明示の契約はない。一般的にも,著作権使用料を,プロダクションが負担するのか,プロモーターが負担するのかを,契約書上明示しない場合が多い。
 
原告は,原則として,プロモーターに対して,著作権使用料の支払手続をするよう求め,プロモーターから著作権使用料の支払を受けている。
 
以上認定した事実からすると,確かに,演奏会の内容(演奏時間や演奏楽曲,使用するバンド等)に関しては,演奏会に出演する歌手等が所属するプロダクションが決定し,かつ,プロダクションは,出演料収入を得ていると認められる。しかしながら,上記認定した事実からすると,演奏会の内容以外の点,すなわち,演奏会の会場を設定し,入場料金を決め,チケットを販売し,演奏会に関する宣伝を始めとするセールス活動を行い,演奏会当日の会場の運営,管理をするなどの業務は,すべてプロモーターである被告ダイサン又は被告オカモトが行っていたこと,プロダクションが得る出演料は定額で,演奏会の損益は被告ダイサン又は被告オカモトに帰属すること,以上の事実が認められ,これらの事実からすると,上記の各演奏会における演奏は,被告ダイサン又は被告オカモトの管理の下に行われており,かつ,被告ダイサン又は被告オカモトは,その演奏によって経済的利益を得ることができる地位にあったものと認められるから,これらの演奏会に関しては,被告ダイサン又は被告オカモトが,原告の管理著作物を演奏使用したものと認めることができる
 
(略)
 
[本件演奏会(3)中の79番,90番について]
 
…によると,本件演奏会(3)中の79番,90番の演奏会については,KHMプロモーションが,会場の設定,チケット販売,セールス活動,演奏会当日の会場の管理等を行い,売上げを管理し,経費を支出したもので,被告オカモトは,KHMプロモーションが会場を確保する際に,名義を貸し,KHMプロモーションから謝礼として10万円か20万円を受け取ったのみであることが認められ,これを覆すに足りる証拠はない。そうすると,上記演奏会に関しては,被告オカモトは,KHMプロモーションが会場を確保する際に,名義を貸し,その謝礼を得たのみであると認められるから,その演奏の主体が被告オカモトであるとは認められない。
 
この点,原告は,名義を貸したか否かは対内的な問題にすぎず,対外的な関係では主催者として表示された者が責任主体となると主張するが,対外的に主催者とされているとしても,実際に演奏の主体としての行為をしなかった者を,演奏の主体と認めることはできないから,原告のこの主張を採用することはできない。

【控訴審】

 
被控訴人オカモトは,KHMプロモーションの会場確保のために名義を貸してやっただけであり,謝礼としてもわずかな金額しか受け取っていないから,演奏会の主体ではない,と主張する。
 
事実関係が被控訴人ら主張のとおりであったとしても,ダイサンエージェンシーの名称で興行事業を行ってきていた被控訴人オカモトが,KHMプロモーションの懇請を受けて,同社に名義を貸したことにより,同社が控訴対象演奏会を開催することが可能ないし容易になったものであるから(同社にはスタッフも対外的な信用もなく,会場の確保ができなかったことは,被控訴人らの自認するところである。),両者は,協力して,同演奏会を開催したものと解するべきであり,その結果,故意又は過失により,著作物使用料相当額の損害を控訴人に与えたのであれば,両者のそれぞれにそれを賠償する責任が生じるのは当然というべきである(民法719条,709条)。そして,このことは,特定の法的側面においては,KHMプロモーションこそが演奏会の主体であると評価されることがあり得るとしても,そのことによって,何ら影響を受けるものではない。
 
被控訴人オカモトが,確定的な故意により,控訴対象演奏会に係る著作物使用料の不払を惹起させた,と認めるに足りる証拠はない。しかし,前記で認定したところによれば,被控訴人オカモトは,歌謡ショー等の演奏会を開催する場合,控訴人の事前の許諾を得て,その定める著作物使用料を支払う義務があることを認識していたものであり,かつ,興行事業における事実上の前身ともいうべきダイサン自身の行為等から,この義務が守られないことも珍しくないことも十分認識していたものというべきであるから,KHMプロモーションと協議するなどして,その手続に遺漏のないようにすべきであったのに,そのための行為を何らしていないことは,弁論の全趣旨で明らかである。そうである以上,控訴対象演奏会に関して,控訴人の管理著作物の許諾が求められていないこと,著作物使用料が支払われていないことについて,被控訴人オカモトには,確定的な故意はなかったとしても,未必的な故意又は重大な過失があったものというべきである。
 
以上のとおりであるから,控訴対象演奏会についても,被控訴人オカモトは,控訴人に対し,著作物使用料相当損害金を支払う義務がある,とする控訴人の主張には理由がある。…











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