著作権重要判例要旨[トップに戻る]







損害及び加害者を知った時」(民法724条)の意義
小学校用国語教科書準拠国語テスト事件B」平成180331日東京地方裁判所(平成15()29709/平成181206日知的財産高等裁判所(平成18()10045 

【原審】

 
「損害及び加害者を知りたる時」の意義
 
民法724条は,不法行為に基づく法律関係が,未知の当事者間に,予期しない事情に基づいて発生することがあることにかんがみ,被害者による損害賠償請求権の行使を念頭において,消滅時効の起算点に関して特則を設けたものであるから,同条にいう「損害及び加害者を知りたる時」とは,被害者において,加害者に対する賠償請求が事実上可能な状況の下に,その可能な程度にこれらを知ったときを意味するものと解され(最高裁昭和481116日第二小法廷判決参照),このうち,同条にいう被害者が「損害を知りたる」時とは,被害者が損害の発生を現実に認識した時をいうものと解される(最高裁平成14129日第三小法廷判決参照)。なお,被害者が不法行為に基づく損害の発生を知った以上,その損害と牽連一体をなす損害であって当時においてその損害を予見することが可能であったものについては,すべて被害者においてその認識があったものとして,民法724条所定の時効は前記損害の発生を知った時から進行を始めるものと解すべきである(最高裁昭和42718日第三小法廷判決参照)。
 
本件は,著作権侵害に基づく請求についていえば,教科書掲載著作物の著作権者である原告らが,教科書に準拠した国語テストを製作販売する教材会社である被告らに対し,原告らの著作物が国語テストに無断で複製されたとして,原告らの複製権が侵害されたことを理由として不法行為に基づく損害賠償を請求するものである。このような事案において,被害者が,加害者に対する賠償請求が事実上可能な状況の下に,その可能な程度に損害及び加害者を知り,損害の発生を現実に認識したといえるためには,原則として,教科書掲載著作物の著作権者において,ある特定の教材会社が,同人の特定の著作物を国語テストに掲載していたことを認識する必要があり,かつそれをもって足りると解すべきである。
 
他方,特定の著作物が特定の教材会社の製作販売する国語テストに掲載されたことを認識したとしても,それ以外の教材会社との関係では損害を知ったことにならないし,それ以外の著作物についても当然に損害を知ったとはいえない。
 
なお,ある教材会社が教科書掲載著作物をその著作権者に無断で長年にわたって広範囲に国語テストに複製して販売してきたという一般的事実が存在し,以前から教科書に掲載されている著作物に係る著作権者が上記事実を認識していたという事実関係の下において,当該著作権者が,教科書に掲載された自己の著作物がある特定の教材会社との関係で同社の製作販売する国語テストに複製されたことを認識した時は,それ以前における複製権侵害による損害についても,継続的かつ牽連一体をなす損害であって,その時点で著作権者においてその認識があったものと解される。それは,著作権者が前記一般的事実を認識していたという事実関係の下においては,著作物が教科書に掲載される場合は著作者にその旨通知され著作権者に補償金が支払われるのであるから(著作権法332項),当該著作権者は,自己の著作物が教科書に掲載されていることをも認識しており,ある教材会社が教科書に掲載された自己の著作物を国語テストに複製したことを認識した時点において,経験則上,教科書に掲載されていた期間,それ以前にも継続的に複製権侵害があったことを認識できるものと解されるからである。

【控訴審】

 
民法724条にいう「損害及び加害者を知った時」とは,被害者において,加害者に対する賠償請求が事実上可能な状況の下に,その可能な程度にこれらを知ったときを意味するものと解すのが相当であり(最高裁昭和481116日第二小法廷判決参照),また,そのうちの「損害を知った時」とは,被害者が損害の発生を現実に認識した時をいうと解すべきである(最高裁平成14129日第三小法廷判決参照)。これを本件についてみると,被害者が「損害及び加害者を知った時」とは,教科書掲載著作物の著作権者において,ある特定の教材会社が自己の特定の著作物を国語テストに掲載していたことを認識した時をいうと考えられる。
 
ところで,教科書掲載著作物の著作権者は,著作物を教科用図書に掲載する旨の通知を受けるとともに,補償金の支払いを受けるから(著作権法332項),当然に,自己の著作物が教科書に掲載されていることを認識しているものである。そして,ある教材会社が教科書掲載著作物をその著作権者に無断で長年にわたって広範囲に国語テストに複製して販売してきたという一般的事実が存在し,以前から教科書に掲載されている著作物に係る著作権者が上記事実を認識していたという事実関係の下においては,教科書掲載著作物の著作権者が,ある教材会社が教科書に掲載された自己の著作物を国語テストに複製したことを認識した時には,経験則上,教科書に掲載されていたそれ以前の期間,上記教科書掲載著作物を国語テストに複製していたことを認識したものと推認することができる。なお,教科書掲載著作物の著作権者が,ある教材会社が教科書に掲載された自己の著作物を国語テストに複製したことを認識したとしても,それ以外の著作物についても国語テストに複製していたことを認識することはないし,それ以外の教材会社が国語テストに複製していたことを認識することもない。











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