著作権重要判例要旨[トップに戻る]







県所有にかかる著作権の民間企業に対する使用許諾を私法上の契約関係と認定した事例
「能登原子力発電所海洋調査事件」平成30322日金沢地方裁判所(昭和61(行ウ)2 

【コメント】本件は、石川県の住民である原告らが、@石川県が、本来、原子力発電所の建設を計画している訴外「北陸電力」に実施義務が課せられている環境影響調査を肩代わりすべく、同社のために海洋調査を行ったことが違法であるとして、地方自治法(以下「法」という。)242条の214号に基づき、石川県に代位して、当該調査の実施委託契約を締結し、その費用として公金の支出命令を発した石川県知事である被告Aに対し、該費用に相当する損害金の支払を求め、A被告石川県知事が、北陸電力に対し、県有著作物である海洋調査の結果(報告書)の使用を承諾したことは違法であるとして、主位的に、同項2号に基づき当該使用承諾の取消しを求めた住民訴訟です。

[参考:地方自治法238(公有財産の範囲及び分類)]

1 この法律において「公有財産」とは、普通地方公共団体の所有に属する財産のうち次に掲げるもの(基金に属するものを除く。)をいう。
 
<5> 特許権、著作権、商標権、実用新案権その他これらに準ずる権利
2 (略)
3 公有財産は、これを行政財産と普通財産とに分類する。
4 行政財産とは、普通地方公共団体において公用又は公共用に供し、又は供することと決定した財産をいい、普通財産とは、行政財産以外の一切の公有財産をいう。 


 主位的請求に係る本案前の争点について
 
まず、本件海洋調査の結果の法的性質について判断するに、これが著作権としての保護を受けることは当事者間に争いがないので、法2381項の定める公有財産に該当することは明らかである。そして、同条2項(管理人注:現3項)は公有財産を行政財産と普通財産とに区分しているところ、同条3項(管理人注:現4項)によれば、行政財産とは、普通地方公共団体において公用又は公共用に供し、又は供することと決定した財産を指称するものとされている。
 
本件海洋調査の結果が後段の要件を充たさないことは弁論の全趣旨によって認められるところであるが、原告らは、本件海洋調査は石川県の固有事務として行われたものであるとの同県の説明を前提とすれば、その結果も特定の行政目的に用いられるべき性質を有するとして、行政財産のうちの公用財産に該当すると主張する。
 
なるほど、前記のとおり、本件海洋調査が電源開発並びに水産資源の保全及び開発に関わるものとして石川県の固有事務として行われたことは肯認できるものの、だからといって、本件海洋調査の調査実施委託契約に基づいて得られた著作権自体が右行政目的以外に使用されてはならないということに直ちにつながるものではない。すなわち、庁舎のように、その性質上、特定の行政目的のために取得、供用された場合には、これと異なる使用形態が自ずから排斥される財産もあるが、他方で、特定の行政目的のために取得されたものでありながら、普通財産として活用することが右目的と矛盾しない財産もあり得るところ、本件において、右行政目的に供せられるべきものは、調査海域における海象、海生生物の状況などを記述した報告書たる著作物であり、これを参照することができれば、そこに記載された環境の現況を基礎資料として石川県が電源開発並びに水産資源の保全及び開発に関する政策を立案、策定することは十分に可能であるから、著作権法第二章第三節に規定された権利が右行政目的の達成に不可欠であるというものではない
 
したがって、右本件海洋調査に関する著作権を普通財産として活用することは、石川県の行政目的と矛盾するものではないから、右著作権自体は独立して公用に供されているとはいえない
 
結局、著作権たる本件海洋調査の結果は、公用財産たる性質を欠くものとして普通財産に該当すると判断するのが相当である。
 
ところで、普通財産の使用関係は、これを公法的に規制する法令が存しない限り、一般には私法関係とみるべきものであるところ、…によれば、本件要綱は、石川県財務規則を補充するものとして石川県知事名で制定、告示されたものであるが、その内容は、県有の著作物を使用しようとする者は知事の承諾を得なければならないこと、知事は、承諾を受けた者に対して、経費等を勘案して定めた金額を納付させることができることなど、著作権者なる石川県が有すべき当然な権限を明らかにしているにすぎず、県有著作物の使用承諾の要件や申立に対する応答義務など、使用を希望する者の申立を権利として認めていることを窺わせるに足りる内容が規定されていないこと、現に、右承諾を得られなかった場合の不服申立手続等についても何ら触れるところがないこと、以上の事実が認められ、これに照らすと、被告知事が北陸電力に対してなした本件海洋調査の結果の使用承諾は、公権力の行使としての行政処分たる性質を有せず、単に著作権者のした著作物の使用許諾(著作権法63条)にとどまるものとして、私法上の契約関係に該当すると判断するのが相当である。
 
そうすると、被告知事に対する本件訴えのうちの主位的請求は、行政処分たる性質を有しない行為の取消しを求めたものであるから、法242条の212号の予定する訴訟類型に該当しないものとして、却下を免れない。











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