著作権重要判例要旨[トップに戻る]







著作権表示と商標的使用
「絵はがき『A to Z』商標取消請求事件」
平成81219日東京高等裁判所(平成8(行ケ)68 

 特許庁における手続の経緯
 
原告(審判被請求人)は、別紙表示のとおり「A to Z」の欧文字を横書きしてなり、…「印刷物(書籍を除く)、書画、彫刻、写真、これらの附属品」を指定商品とする登録第…号商標(以下、「本件商標」という。)の商標権者である。
 
被告(審判請求人)は、平成31023日、その指定商品中「印刷物(書籍を除く)」について本件商標の登録を取り消すことについて審判を請求し、平成3年審判第…号事件として審理された結果、平成828日、「本件商標の指定商品中「印刷物(書籍を除く)」についてはその登録は、取り消す。」との審決がなされ、その謄本は同年311日原告に送達された。
 
(略)
 
そこで、原告主張の審決取消事由の当否を検討する。
 
原告は、「(C)1990A to Z」は万国著作権条約が定める著作物の複製物の表示といえないから、本件各絵はがきの表面の「A to Z」は著作権者の表示ではなく、したがって甲第3号証の絵はがきの裏面の「A to Z」も著作権者の表示とみる余地はないと主張する。
 
成立に争いのない甲第3、第4号証によれば、本件各絵はがきの表面の下部中央に68ポイント程度の活字で「(C)1990A to Z」の文字が一体として表示され、また、甲第3号証の絵はがきの裏面の建造物の写真の下部右側余白に1214ポイント程度の活字で「A to Z」の文字が表示されていることが認められる。
 
そこで、まず、本件各絵はがきの表面の「(C)1990A to Z」という表示について考えるに、原告が「(C)1990A to Z」は万国著作権条約が定める著作物の複製物の表示といえないとする論拠は、「A to Z」が人の氏名あるいは法人・団体の名称でないことは一見して明らかであるという点のみである。
 
しかしながら、「A to Z」は、人の氏名でないことは明らかであるとしても、法人あるいは非法人団体の名称としておよそありえないということはできない。そして、「(C)」に4桁の数字を付し、これに続いて氏名又は名称と認識し得る表示が付されているときは、それが当該著作物の複製物の第一発行年及び著作権者名であることを示す例が少なくないこと(当裁判所に顕著な事実である。)を考えれば、絵はがきの取引者、需要者が、一体として表示された「(C)1990A to Z」という表示をみたとき、それが1990年に最初に発行された、「A to Z」と称する法人あるいは非法人団体が著作権を有する著作物の複製物を意味するものであると理解するのは、全く当然のことというほかはない
 
したがって、絵はがきの「取引者、需要者は、甲第3号証及び甲第4号証の表面に表示されている「(C)1990A to Z」の文字は、裏面に印刷されている写真の著作権者を表したもの(中略)と認識し把握する」とした審決の判断は正当である。
 
しかしながら、甲第3号証の絵はがきの裏面の「A to Z」という表示をも、同面に印刷されている写真の著作権者を表したものと解しなければならない理由はない
 すなわち、原告が主張するように、絵はがきの商品価値が専ら裏面の絵あるいは写真の価値に依拠することは明らかであって、絵はがきの取引者、需要者は、専らその裏面に注目して絵はがきの商品としての価値を決定し選択することは自明の事実であるから、その際に、表面の微細な印刷文字に考慮を払うことはほとんどないと考えざるをえない。そうすると、取引者、需要者が絵はがきを商品として購入するかどうかの選択をする場合、裏面の絵あるいは写真の余白に付されている文字は、取引者、需要者にその商品の出所を表示するものと認識され得るというべきである。したがって、甲第3号証の絵はがきの裏面に印刷されている写真の下部右側余白に表示されている「A to Z」という標章(前掲甲第3号証によれば、縦約5mm、横約15mmの大きさである。)は、同絵はがきの表面の最下方に小さく表されている「(C)1990A to Z」という表示とは無関係に、絵はがきの製造者・販売者等の名称を示しているものとして、自他商品の識別力を有すると認めることは十分に可能というべきである。
 
のみならず、そもそも商品に付された1つの標章が、商品流通の過程において常に1つの機能しか果たしえないと考えるべき理由はないから、商品が著作物の複製物であり、かつ、著作物の名称がそのまま商標とされている場合に、商品に付された1つの標章が、著作物の著作者を示すと同時に、商品の製造者・販売者等を示す商標の使用でもあると解することは、何ら背理といえない。したがって、甲第3号証の絵はがきの裏面に表示されている「A to Z」という標章が、同面に印刷されている写真の著作権者の名称と一致するとしても、その標章が、同時に、自他商品を識別させるために付されている商標でもあると解することには、何らの妨げもないと考えるのが相当である。
 以上のとおりであって、原告は、本件審決請求の登録前3年以内に甲第3号証の絵はがきに本件商標を付して使用したものというべきであるから、原告提出の証拠をもって本件商標が「絵はがき」について使用されているということはできないとして、本件商標の登録はその指定商品中の「印刷物(書籍を除く)」について取り消すべきものとした審決の認定判断は、明らかに誤りである。











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