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利用許諾契約の解釈(20)-商品化権許諾契約A-
「相撲キャラクター商品化許諾契約事件」平成130518日東京地方裁判所(平成10()18531 

【コメント】本件は、原告が、@被告は、「本件契約」15条により別紙「商品化申請目録」記載の本件キャラクター商品を製造する義務があるから、その許諾料を支払う義務がある、A被告は、本件契約に違反して、別紙「商品化申請目録」記載の本件キャラクター商品を製造販売した、B被告が本件契約に違反して別紙「商品化申請目録」記載の本件キャラクター商品を製造販売した行為は原告が有する本件キャラクターに係る著作権を侵害すると主張し、主位的には本件契約に基づいて許諾料を請求し、予備的には本件契約の債務不履行又は著作権侵害を理由として損害賠償を請求した事案です。

 
本件においては、次のような事実関係がありました。

平成5510日、原告と被告は、原告が被告に対して「本件キャラクター」を使用した商品(「本件キャラクター商品」)を製造販売することを許諾することを内容とする商品化権使用許諾契約を締結した。この契約には、次の条項が含まれていた。
 「第4条(許諾料)
 被告は,原告に対し,商品化権許諾料として許諾商品の製造数量にメーカー希望小売価格の5パーセントを乗じた金員を現金で次のとおり支払うものとする。
 (ア) 最低保証料(最低責任製造数量に相当する使用料) 金1000万円 本契約締結後30日以内に支払う。
 (イ) 追加使用料(最低製造数量を超えて製造する数量に相当する使用量)は,追加製造後30日以内に支払うものとする。」
 
「第7条(商品化の承認)
 
原告は,株式会社エムエヌオー(以下「エムエヌオー」という。)を通じて,被告より本キャラクターの商品化についての承認申請がされた場合,1週間以内に原告はエムエヌオーを通じて被告に対し承認の可否を連絡するものとする。この期間を過ぎてエムエヌオーを通じて原告より返答がない場合,被告よりの申請は承認されたものとする。」
 
「第15条(報告及び正価販売価格)
 
被告は,本契約締結日から3か月以内に許諾商品を製造しなければならない。ただし,原告が承認した場合は,被告はその製造を延期することができる。」

平成5720日、ABらは、原告及び被告に対し、本件キャラクター商品の販売禁止等を求める仮処分の申立てをした(「本件仮処分事件」)。

被告は,平成5810日ころ,「潟oンダイ 『どすこい!わんぱく土俵』商品化申請(販売期間は3年を予定しております。)」と題する書類(別紙「商品化申請目録」と同内容の商品アイテム及び予定上代,計画数量が記載されたもの,予定上代総額754830万円)を作成し,原告に送付した

本件仮処分事件が取り下げられた後、相撲協会らと被告との間で、和解交渉がされ、平成5924日、被告が本件キャラクター商品の製造販売を別紙「調整数量一覧表」記載のものに限ること等を内容とする和解契約が成立した。

原告と被告は、上記和解契約を前提とする被告の製造販売数量の減少等を内容とする合意書(「本件修正合意」)を作成した。なお、上記の原告と被告間で締結された商品化権使用許諾契約の内容は、本件修正合意により変更されなかった部分はそのまま有効とされた(以下、本件修正合意後の原告被告間の契約を「本件契約」といい、本件修正合意前の契約は、「本件修正合意前契約」という。)。

 
なお、原告の第一の主張は次のとおりです:『本件契約15条は,「被告は本契約締結日から3か月以内に許諾商品を製造しなければならない。ただし,原告が承認した場合は,被告はその製造を延期することができる。」と規定している。これは,被告の許諾商品に対する製造義務を定めたものである。本件契約7条によって,「原告は被告より…承認申請がなされた場合,1週間以内に認証の可否を連絡する。この期間を過ぎて原告より返答がない場合,被告よりの申請は承認されたものとする。」と規定されているとおり,被告から商品化許諾申請がなされ,原告が承認するか又は1週間以内に拒絶しなければ,上記申請に係る商品は許諾商品になる。したがって,上記許諾商品に関しては,本件契約15条によって,被告に製造義務が生じ,原告には許諾料の請求権が発生する。被告は,原告に対し,平成5810日,ファックスで,別紙「商品化申請目録」に記載されている本件キャラクター商品に関する承認申請を出したから,被告には,別紙「商品化申請目録」記載の数量の商品について,製造義務が生じ,原告は被告に対して,その許諾料の支払を請求することができる。』 


 原告は,本件契約15条は,被告に対して許諾商品の製造義務を定めたものであり,原告は,被告が製造義務を負う商品の許諾料を請求する権利を有する旨主張する。
 
確かに,本件契約15条の文言では,「3か月以内に製造しなければならない」となっている。しかし,前記認定のとおり,本件修正合意前契約の契約期間は,平成65月までであり,延長することができたこと,前記認定のとおり,被告が,平成58月に送付した「潟oンダイ 『どすこい!わんぱく土俵』商品化申請」と題する書類には,総額75億円余りの商品が記載されていたが,証拠(証人Eの証言)によると,売行きをみることなく,このような大量の商品を契約後3か月間で製造することはあり得ず,もしそうであれば,被告は,本件契約を締結しなかったものと認められること,前記認定のとおり,被告と相撲協会らとの間の合意によって製造期間は,平成73月までとなり,原告と被告との契約の契約期間も延長され,前記認定のとおり,被告は,原告に対し,別紙「被告製造報告一覧表」記載のとおり本件キャラクター商品を製造販売したとして報告していること,この報告が行われていた間に,原告が,被告に対して特段異議を述べたことを認めるに足りる証拠はないことからすると,本件契約15条は,被告が製造に着手すべき時期を定めたものであって,3か月以内に製造を完了することまで定めたものではないと認められる。
 また,前記認定のとおり,本件契約中には,被告が支払うべき最低保証料が定められているとともに,被告に,製造数量等の報告義務が課されており,被告は,最低保証料を超えて製造する数量については,追加製造後30日以内に許諾料を支払うものとされていること,実際にも,前記認定のとおり,被告は,原告に対し,別紙「被告製造報告一覧表」記載のとおり報告し,製造販売した数量分の許諾料のみを支払っており,この間に,原告が,被告に対して特段異議を述べたことを認めるに足りる証拠はないこと,原告は,平成12414日付け準備書面における主張までは,本件契約15条によって被告が製造義務を負う商品の許諾料を請求する権利を有する旨の主張をしていなかったこと(当裁判所に顕著な事実)からすると,本件契約において,被告は,最低保証料のほかは,製造数量に応じて許諾料を支払う義務を負っているものと認められ,許諾を得たが実際に製造していないものについてまで許諾料の支払義務が発生するとは認められない
 
以上からすると,本件契約15条を根拠とする原告の主張は理由がない。
 
そして,前記で認定した事実によると,原告は,被告に対し,本件修正合意により確認された別紙「調整数量一覧表」記載に係る商品アイテム及び数量の範囲内において本件キャラクター商品の製造販売を許諾したと認められ,被告は,その範囲内であれば,本件キャラクター商品を製造販売することができ,実際に製造販売した数量分の許諾料の支払義務を負っていたと解することができる。
 
(略)
 
以上の事実からすると,大永寝具は,1280円のクッションを13198枚製造し,そのうち少なくとも125866枚販売したものと認められ,この製造数量は,原告が本件修正合意によって被告に許諾した数量6200枚よりも6998枚多いことになる。
 
(略)
 
このように,被告が本件証紙の転用を了解し,1280円のクッションが原告と合意した数量よりも多く製造販売されることを認めていたことからすると,大永寝具が,原告が許諾した数量6200枚よりも6998枚多いクッションを製造したことについて,被告には,原告に対して,債務不履行による損害賠償責任があるというべきである。
 
(略)
 
上記認定判断のとおり,被告は,1280円のクッションを本件修正合意後の調整数量(6200枚)の合意に反し,同数量よりも6998枚多く製造したことが認められる。
 
原告は,被告が得た利益額に基づく損害を主張しているが,原告は,被告に対して,本件キャラクター商品の製造販売を許諾して,許諾料を得ていたのみで,同種の商品を製造販売していたとは認められないから,許諾料相当額の損害を被ったとは認められるが,それを上回る損害を被ったとは認められない
 
既に認定したとおり,本件修正合意前契約においては,許諾料は商品上代の5パーセントであったが,この契約は,相撲協会らと被告との和解契約及びそれを前提とする本件修正合意がされたことによって変更され,その結果,被告が原告に対して支払うべき許諾料は,商品上代の4パーセントとなったのであるから,許諾料相当額は,商品上代の4パーセントであると認められる。
 
1280円のクッションについての許諾料相当額は,1枚当たり512円(1280円の4パーセント)であるから,被告の損害額は,358298円(ただし,小数点以下四捨五入)となる。
 
なお,原告は著作権に基づく損害賠償請求もしているところ,既に認定した諸事実によると,原告の著作権に基づく損害賠償請求について,原告の損害額が上記金額を超えるものとは認められない











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