著作権重要判例要旨[トップに戻る]







著作権譲渡の黙示の合意の成立を否定した事例(9)
「グラブ浚渫施工管理プログラム事件」平成190726日大阪地方裁判所(平成16()11546 

 プログラムの著作権を譲渡する場合,当然のことながら,譲渡後は,譲渡人は同プログラムの著作権(著作者人格権を除く)に関して何らの権利も有さなくなるのであって,同著作権に係る著作物を自らも複製・頒布・翻案することができない上,第三者が同著作物を複製等しても,同著作権に基づく差止請求,損害賠償請求をすることもできなくなる。他方,譲受人は,同著作物を複製・頒布・翻案することができるし,第三者(譲渡人も含む)による同著作物の複製等に対して,同著作権に基づく差止請求や損害賠償請求をすることができる。
 
このように,著作権を譲渡するということは,著作権法21条ないし28条が規定する著作者の権利を全て譲渡するということであり,対象となる著作物の経済的価値が大きければ大きいほど,譲渡する著作権の対価も高額なものとなるのは当然である。そして,著作物の経済的価値の大小については,同著作物の複製物が販売されている場合は,その販売価格の多寡が参考となる
 
本件において,G1X MS-DOS版の著作権の譲渡の対価であると評価することができる程度の額の金銭の授受の有無について検討すると,GDX等の開発からG1Xシリーズの開発ないし修正に至るまで,例えば,GDX等の複製物が少なくとも一船分200万円ないし300万円で販売されていることに見合うような著作権譲渡の対価が,著作権の譲渡時に授受されたと認めるに足りる証拠はない
 
むしろ,G1X MS-DOS版については,GDX等の複製物が一船分200万円ないし300万円で販売されるものについて,Aは,システムを導入する作業船に併せてプログラムを修正し,複製物が作業船所有者に納品,販売される際に,一船につき70万円ないし90万円等の報酬を受領していたというものであった。このことからすると,G1X MS-DOS版に関してAに支払われた対価は,著作権の譲渡代金ではなかったと思われる
 
(略)
 
これらの事情に鑑みれば,Aは,G1X MS-DOS版の著作物について,橘高工学に特定のバージョンのデッドコピーによる複製,譲渡を許諾ないし黙認していた可能性はあるものの,その著作権自体までも橘高工学に譲渡し,自らの著作権を失ってしまったと評価することはできない。
 
したがって,G1X MS-DOS版の著作権はAに帰属し,同著作権は,平成185月までにAから原告に譲渡されているので,原告に帰属する。
 
(略)
 
次に,被告は,Aは,橘高工学にソースプログラムを提出し,プログラムに橘高工学の表示をし,橘高工学の指示に基づきかなり高額の作成料でプログラムを作成し,ライセンス料の請求をしたことがない等の事情からすれば,著作権譲渡の明示的な書面はなくても,橘高工学に対し著作権(共同著作と認められる場合は持分)を譲渡し,同一性保持権を放棄する旨の黙示の合意をしたと主張する。
 
しかし,プログラムにある橘高工学の表示は,前記のとおり,著作権表示ではなく,むしろ,納入先の名称を記載したものにすぎないと認められることは前示のとおりである。
 
プログラムの作成料ないし開発費についても,前記のとおり,著作権譲渡の対価といえる程度に高額な報酬が支払われたものではないことは前記のとおりである。
 
また,橘高工学にソースプログラムを提出したとしても,そのことによって直ちに著作権を譲渡したとすることはできない。かえって,橘高工学が,プログラムの修正はAに発注することを約束していたことは,B自身認めるところであり,A自身もソースプログラムを管理しており,自ら複製,翻案することも可能な状態であった。
 
(略)
 被告は,橘高工学破産管財人が平成133月に被告に対して,橘高工学が有していたサーバを動産一式に含まれるものとして譲渡した際,同サーバにはプログラム(G1X MS-DOS版を含む。)が保存されていたので,プログラム著作権も売買の目的物として被告に移転していると主張する。
 
しかし,前記のとおり,動産であるサーバが譲渡されたからといって,その中に保存されていたプログラムについて,著作権も譲渡されたことになるものではないから,被告の主張は失当である。











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