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黙示の利用許諾を認定した事例(13)
「‘音響及び香り’の特許アイディア事件」平成200129日東京地方裁判所(平成19()18805 

【コメント】本件は、被告の関連グループ会社に勤務していた原告が被告にアイデアを提案し、被告が出願して登録を受けた特許発明について、原告の特許を受ける権利及び著作権を被告が侵害したと主張して、被告に対し、不法行為に基づく損害賠償金等の支払を求めた事案です。

 
本件には、次のような事実関係がありました。

原告は、被告のアイデア提案制度に応募して、「環境音と芳りと風景が選択できる壁掛けパネル」を発案し、所定のアイデア提出用紙に発案の契機、内容等を記載し(「本件用紙」)、構成の概略図(「本件概略図」)及び三面図と外観図の図面(「本件図面」)を添付した上、これら(以下「本件提案書」という。)を被告に対して提出した。なお、本件用紙の末尾に、定型文言で、「尚,本提案は(株)アルプス技研より出願されます。出願時には,譲渡証書の提出をお願い致します。所属及び氏名を忘れずに!!」と記載されている。

原告と被告は、(出願後の)平成元年45日に原告から被告に本件各発明の特許を受ける権利を譲渡したことを証する内容の同日付け各譲渡証書(「本件各証書」)をそれぞれ作成している。 


 仮に,本件各発明が職務発明でないとしても,…によれば,原告は,本件各発明の特許出願後に本件各発明について特許を受ける権利を被告に譲渡したことが認められる。
 
原告は,上記譲渡が特許法352項に違反して無効であると主張する。
 
しかしながら,上記譲渡は,本件各発明の特許出願後に締結された譲渡契約に基づくものであり,あらかじめ使用者に特許を受ける権利を承継させる契約等に基づくものであるとはいえない。被告に対するアイデアの提案を目的とする本件用紙に,その定型文言のような記載(「尚,本提案は(株)アルプス技研より出願されます。出願時には,譲渡証書の提出をお願い致します。所属及び氏名を忘れずに!!」)があることは,上記のように解することの妨げとなるものとはいえない。
 
原告の上記主張は,採用することができない。
 
前記で述べたところによれば,本件各発明が職務発明である場合はもとより,原告の主張する自由発明であったとしても,被告が本件各発明につき特許出願をして特許の登録を得たことは,何ら,原告の特許を受ける権利を侵害するものでないことは明らかである。原告の特許を受ける権利の侵害があったとの主張は,失当である。
 
[著作権の侵害の有無について]
 
原告は,本件提案書について,本件用紙,本件概略図及び本件図面のそれぞれが原告の創作した著作物であり,被告が被告商品カタログ等に本件提案書と類似する表現を用いて,原告の著作権(複製権)を侵害した旨主張する。
 
しかしながら,仮に,本件提案書に著作物性が認められるとしても,前記で述べたところによれば,本件提案書は,被告の発意に基づき被告の業務に従事する原告が職務上作成した職務著作であるということができるから,被告が著作者であると認められる。
 
仮に,本件提案書が職務著作でないとしても,前記で述べたとおり,本件各証書によって,原告から被告に対する特許を受ける権利の承継が有効にされたと認められる以上,少なくともその際に,本件提案書の著作物としての利用についても,特許出願や製品化に向けて必要となる範囲内においては,原告から被告に対する許諾がされたものと推認するのが相当である。
 
原告の指摘する侵害の内容は,被告による本件公報1,本件公報2及び被告商品カタログの各記載を問題にするものであって,上記の許諾の範囲内にあるものと認められる。
 
以上のとおりであるから,被告に,本件提案書についての原告の著作権を侵害する行為があったとはいえず,原告の著作権が侵害されたとの主張は,失当である。











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