著作権重要判例要旨[トップに戻る]







他人の著作権と抵触する商標の先願登録がある場合における商標法4111号適用の可否
「キューピー図柄商標登録無効審判事件@」
平成201217日知的財産高等裁判所(平成20(行ケ)10139/「キューピー図柄商標登録無効審判事件A」平成220915日知的財産高等裁判所(平成22(行ケ)10093等) 

【@事件】

 被告は,ローズ・オニールの著作物である「キューピー」の著名性を引用商標において無償で利用している原告が,「キューピー」の著作権を譲り受けた上,本件商標の登録を受けた被告に対してその無効を主張することは,公正な競争秩序に反するものであり,権利の濫用である旨主張するので,以下において検討する。
 
商標法は,上記のとおり,著作権等との抵触を調整する規定を置いた上,同法46条において,商標登録を無効とすることについて審判を請求することができる旨定め,そのための要件として無効理由を規定しているところ,無効審判請求の主体について商標法上の明示の制限はない。そして,商標法は商標登録について先願主義を採用しているから,ある登録商標の商標権者が,当該登録商標は引用商標と類似の商標であるとの無効理由(商標法4111号所定の無効理由)を回避するためには,先願の地位を有する引用商標の商標登録について無効審判請求をし,これを無効としなければならないことになるが,他人の著作権と抵触することは商標登録の無効理由とはされていない。
 
そうすると,商標法上,他人の著作権に抵触する商標であっても,これが一旦登録されれば,抵触の一事をもって無効とされることはないのであり,このような商標も,当該商標登録出願の日より後の出願に係る商標との関係では,引用商標となり得るのであり,引用商標の商標権者が,商標法4111号違反を無効理由として,これと類似の商標に係る商標登録の無効審判請求をすることに商標法上の問題はない
 
ところで,商標法4111号は,同一又は類似の商標が複数登録されてしまった場合において,これらが同一又は類似の商品等に使用されれば,取引者・需要者において商品等の出所について誤認混同が生じ,商標使用者の業務上の信用の維持を図り,もって産業の発展に寄与し,あわせて需要者の利益を保護するという商標法の目的が達せられなくなることから,これを登録障害事由として規定し,同様の趣旨で同法4611号において無効理由とされているものと考えられる。そして,このような場合において,商品等の出所について誤認混同が生じないようにするためには,無効審判請求に係る商標登録か引用商標に係る商標登録のいずれか一方を無効とする必要があるところ,商標法においては,上記のとおり,後願に係る商標登録についての無効審判請求を待って無効理由の有無を審査し,無効とする制度を採用しているものである。
 
以上を前提として本件についてみると,本件商標が引用商標と類似の商標であることは上記のとおりであるから,原告が被告に対して本件商標登録が無効であるとの主張をすることが許されないとすれば,原告は本件商標登録の無効審判請求をすることができないこととなり,引用商標とこれらと類似する本件商標が併存することとなるところ,本件商標と引用商標が共に使用されると,商品の出所について取引者や需要者の間で誤認混同が生じ,商標法の上記目的に反する事態を招く可能性を否定することはできない。
 
また,弁論の全趣旨によると,原告は,ローズ・オニール又はその遺産財団よりキューピーの著作権の譲渡を受けた被告から,キューピーのキャラクターの使用について許諾を受けていないと認められるものの,ローズ・オニールのキューピーについての著作権は既にその保護期間を経過していると認められる。
 
さらに,…によると,原告がキューピーのキャラクターをマヨネーズの宣伝広告に数十年の長期にわたり継続的に使用してきたことにより,我が国において「キューピーマヨネーズ」が極めて著名となったことから,「キューピー」の称呼及び観念を生じる引用商標は,本件商標の指定商品について格別の自他識別力を獲得するに至っていると認められる。
 
上記のとおりの商標法が採用する制度を前提として,上記の各事情を考慮すると,本件において,被告がローズ・オニールに由来する著作権に基づいて引用商標に係る商標登録を無効とすることが困難であることを考慮しても,商標法に適合する原告の無効審判請求及びその審決に対する本件取消訴訟の提起が権利の濫用であって許されないとした上,取引者や需要者の間で誤認混同を生じるおそれを発生させることとなってもやむを得ないとすることはできないというべきである。
 
そして,他に原告の権利の濫用を根拠付ける具体的な事実の主張立証はないから,被告の主張を採用することはできない。

【A事件】

 
原告は,知的財産法秩序を無視しキューピーの著名性を利用して商標登録を受けた被告が,同秩序を尊重し著作権との抵触を解消して本件商標の登録を受けた原告に対してその無効審判の請求をすることが,権利濫用に当たる旨を主張する。
 
しかしながら,前記認定のとおり,我が国においては,キューピーのキャラクターが大正期以来長年にわたって高い人気を博してきた一方,他方において,その作者であるローズ・オニールの名前がキューピーの作者として広く知られているとは到底いえなかったばかりか,複数の企業や個人(著作権取得以前の原告及び訴外会社を含む。)がキューピーのキャラクターを各種の媒体で広く使用し続けてきたという実情があることに加えて,現時点では,既に原告の上記著作権の保護期間が満了していると解されることも併せ考えると,引用商標に基づく無効審判請求が商標権の濫用になるものではないというべきである。
 
よって,原告の前記主張は,採用できない。











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