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「海賊版」である旨の指摘行為における名誉毀損の成否
「帝国議会説明資料‘海賊版’事件」平成200829日東京地方裁判所(平成19()4777 

【コメント】本件は、原告が、被告に対し、原告の発行する書籍が他の出版社の発行する書籍の「海賊版」である旨を指摘する被告作成の電子メールの内容及びホームページの記事内容が原告の名誉及び信用を毀損するとして、不法行為に基づく損害金の支払い等を求めた事案です。 

 [「海賊版」の意味]
 
「海賊版」とは,一般的には,「著作物を著作権者に無断で複製販売したもの」(「広辞苑第6版」参照),「著作権者の許可を受けないで作成・複製・頒布される書籍,音楽・映像ソフトウェアやコンピューターのソフトウェアなど」(「大辞林第3版」参照)をいうものである。
 
ところで,前提事実によれば,本件表現1は,歴史資料の復刻版である「京城日報」等が無断複製販売されているとの記事に続けて,「(原告書籍)も海賊版。」とした上で,「(歴史文書などを復刻した史料集である原告書籍)は,日本の国会図書館やその他日韓の主たる大学図書館で原資料を集めたとありますが,どの文書がどこから取られたのかをまったく明らかにしていません。」「間違いなく無許可で(他の資料集である書籍を)コピー販売しているものと思われます。」と「海賊版」を構成する具体的内容を指摘しているものである。
 
また,前提事実によれば,本件表現2も,「(原告書籍)は海賊版ということについて。」に続けて,「(原告書籍は歴史文書の復刻版である不二出版書籍を)不二出版の承諾なしに引用している。」「(歴史文書などを復刻した史料集である原告書籍)は,日本の国会図書館やその他日韓の主たる大学図書館で原資料を集めたとありますが,どの文書がどこから取られたのかをまったく明らかにしていません。」「間違いなく無許可で(他の資料集である書籍を)コピー販売しているものと思われます。」と「海賊版」を構成する具体的内容を指摘しているものである。
 
さらに,前提事実によれば,本件表現3は,歴史史料集である原告書籍につき,「1ページでも無断複製があれば(原告書籍)は海賊版』と語る。」としているものである。
 
以上のとおり,本件表現1ないし3における「海賊版」は,単に海賊版と述べるだけでなく,その直後に,原告書籍及び不二出版書籍がいずれも歴史史料を復刻する書籍であることを踏まえた上で,「海賊版」を構成する具体的内容を指摘しているものであるから,一般読者の普通の注意と読み方とを基準とすれば,歴史史料を復刻する他社の書籍を無断で複写して作成された書籍を指し示すものとして使用されていると理解されるものと認められる。
 
原告は,本件表現1ないし3における「海賊版」は著作物を無断で複製したものを意味する旨主張する。
 
確かに,本件表現1に係る電子メールには,ここでいう「海賊版」の発行により「厳罰に処せられることになる」との表現や,「海賊版を買わない,持たない,許さない,のポスター差し上げます。…不正商品対策協議会と警察庁の…ポスター,警察庁から提供していただきました。」との「海賊版」の用語使用があり,本件表現2に係る電子メールにも,ここでいう「海賊版」の発行により「厳罰に処せられる」可能性があるとの表現や,「不二出版が海賊版取扱いで刑事告訴しているC側の弁護士を通じ」との「海賊版」の用語使用がみられる。これらの記載によれば,本件表現1ないし3における「海賊版」との用語が著作権法違反(同法119条参照)となる著作物の無断複製物の意味であることを前提としているかのように読めないではない。
 
しかしながら,被告による表現の全体を一般読者の普通の注意と読み方とを基準として読めば,史料集の復刻版の無断複写物も海賊版の一種であると考えている被告が史料集の復刻版の無断複写を海賊版になぞらえて非難していることを読み取るにすぎないと認めるのが相当であり,原告の上記主張は,採用することができない。
 
[本件表現3の名誉毀損性について]
 
本件表現3は,これを一般読者の普通の注意と読み方とを基準として読めば,原告代表者Fが「仮に一部でも無断複製があったとすれば,原告書籍は海賊版となる」ことを述べたものと理解され,「原告書籍は無断複製されたものである」と述べたものと理解されるものではないと認められる。
 
そして,原告代表者Fが「仮に一部でも無断複製があったとすれば,原告書籍は海賊版となる」との発言をしたこと自体は,何ら原告の名誉や信用を毀損するものではないと認められる。
 
したがって,原告の本件表現3に基づく名誉毀損の主張は,その余の点について判断するまでもなく理由がない。
 
[「海賊版」の真実性−原告の版面権侵害行為について]
 
(龍溪書籍)
 
原告書籍271頁ないし379頁は,奥書も含めて龍溪書籍の版面を複写したものである。
 
(原告書籍6巻〜16巻の一部)
 
…によれば,原告書籍6巻〜16巻の一部のうち前提事実で指摘した頁については,補われた文字等が一致していることが認められるから,原告が不二出版書籍中の対応する頁を複写して原告書籍を作成したことが認められる。
 
(略)
 
[まとめ]
 
以上から,本件表現1及び2で摘示された事実の重要部分につき真実であるとの証明があったから,被告の真実性の抗弁は,理由がある
 
原告は,被告が立証し得たのは原告書籍中のごく一部にすぎず,原告書籍98巻全体を「海賊版」と名指しすることを正当化するに足りる真実性の証明はない旨主張する。
 
しかしながら,上記に説示した龍溪書籍の無断複写は,量からして,それを正当化し得る理由は何らないといわざるを得ないし,上記に説示した原告書籍6巻〜16巻中の一部の無断複写も,全体から見れば量が少ないとはいえ,民族問題研究所が自分で取得した原資料のコピーに書き込むなどの作業を行わずに,不二出版書籍中の対応する頁をデッドコピーしたものである。
 
したがって,上記立証された複写の量及び態様は,本件表現1及び2の真実性を認めるに足りるものと認めるべきであり,原告の上記主張は,採用することができない。
 
したがって,本件表現1及び2に基づく原告の請求は,その余の点について判断するまでもなく理由がない。











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