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アダルトビデオ女優のプライバシー権の侵害を認定した事例
「元
アダルトビデオ女優プライバシー侵害事件平成180523日東京地方裁判所(平成16()27003 

【コメント】本件は、かつて有名なアダルトビデオ女優であり、著作活動及びテレビタレント等としての活動もしていた原告が、出版社である被告に対し、被告の発行している「被告週刊誌」において、被告が原告のプライバシーないし名誉感情を侵害する記事及び肖像権等を侵害する写真を掲載したことは原告に対する不法行為を構成するとして、各掲載行為によって原告が被った精神的損害の賠償等を求めた事案です。 

 [本件第1記事について]
(1) 同@部分について
 
記事は,アダルトビデオ(前記『愛虐の宴』)撮影終了直後の原告とその当時の交際相手との電話での会話をそれを聞いていたD’の談話という形式で紹介するものである。具体的には,原告が当時の交際相手の男性に電話をかけたが予期せずその電話に女性が出たときの原告の狼狽した状況及び同交際相手を責める原告の言動等が紹介されている。
 
他人に知られたくない私的な事柄をみだりに公表されないという利益については,プライバシーとして法的保護が与えられるべきである。前記のような過去の交際相手との会話の具体的な内容及び予期せぬ人物が交際相手の電話に出たことによって自らが動揺している状況等は,私生活上の事実であり,また,一般人の感受性を基準として,当該私人の立場に立った場合,公開を欲しないであろうと認められる事柄であるから,同記事の掲載は,原告のプライバシーを侵害するといえる。
 
また,同記事は,「『愛とセックスは別腹だ』と」という小見出しを設け,前記原告とその交際相手との電話でのやりとりの描写に続けて「その姿を見て,やっぱり女ってのは『愛とセックスは別腹』なんだと。」というD’の意見の表明とみられる部分を掲載することにより,複数の男性と性行為を行うアダルトビデオの撮影直後に,自らの行為は顧みず,交際相手の電話に他の女性が出たことにつき同交際相手を責める原告の態度の二面性を,当時の原告自身のセリフを用いて揶揄する内容となっている。したがって,同記事は,原告の名誉感情をも侵害するといえる。
 
(略)
 
被告は,原告がその著書において,セックスプレイはレストランで食事をすることや社交ダンスをするのと同様に,秘したり恥じらうものではなく自然の振る舞いとして楽しみを享受すべきものであり,また,人間にとって必然的なもので秘め事ではないといった考えを表明していることから,原告には,セックスについてのプライバシーは存在しないか全面的に放棄され,あるいはその侵害に対する包括的承諾があるなどと主張している。
 
確かに,前記のとおり,原告は,その著作の中で,自己を性の表現者と称して,自らのセックス観や性行為の際の状況等を積極的に表現しており,その限度で,自ら性的プライバシーを処分ないし放棄しているともいえる。
 
しかしながら,原告がかつてそのようなことをしていたからといって,原告のすべての私的事柄について包括的にプライバシーを放棄したとは認められないし,いつ,いかなる状況の下においても性生活や性行為についての私的事柄を公開されていいとまで同意していたとは認められない。その上,原告は,一般市民として生活しているXは,性表現者Xとは全く違う哲学をもっており,引退を契機に原告はXというものからは離れた旨供述しており,同人は,本件各雑誌が発行されたころには,前記著書を執筆した当時とは異なる価値観を有していたものと認められるのであるから,前記著書の存在をもって原告が本件第1記事の掲載を承諾していたと認めることはできない
 
(略)
(2) 同A部分について
 
同記事は,原告がアダルトビデオに出演した事実が原告の家族の知るところとなり,その結果原告は家族から放逐され,戸籍も独立のものとされた事実及び同事実をD’が原告とともにパスポートの申請に行った際に認識した経緯を示すものである。
 
一般的にこのような私人の家族関係,特に家族から同一の戸籍にあることを拒否され独立の戸籍を設けることになった事実等は私生活上の事実であることは明らかであり,一般人の感受性を基準として,当該私人の立場に立った場合,公開を欲しないであろうと認められる事柄であるから,同事実を公表する記事の掲載は,原告のプライバシーを侵害するといえる。
 (略)
 
被告は,原告が独立の戸籍に属するようになったころ,原告とD’は内縁関係にあり,原告の家族関係及び戸籍の問題は,原告のみならずD’の問題でもあったことから,D’が同事実について雑誌の取材に応え,それが記事となることについて原告は黙示の承諾をしていた等と主張する。
 
しかし,前記のとおり,家族関係にかかわる事実,とりわけ戸籍の内容にかかる事実は私事性の強い事柄であるから,内縁関係の相手であるからといって当然にその公表を許諾するとまではいえないし,前記のとおり,原告は,平成51月ころまでにはD’との内縁関係を解消し,本件各記事が掲載された平成116月ころにおいては,D’と連絡をとることもなくなっていたというのであるから,原告がD’に対し,前記原告の家族関係ないし戸籍にかかる事実について雑誌の取材に応えること及び同事実を雑誌に掲載することについて承諾を与えていたと認めることはできない
(3) 同B部分について
 
同記事は,原告とD’との性的関係,原告のセックスに対する個人的な悩みの内容及び同原告の悩みをD’が原告から聞かされた事実を掲載するものである。
 
一般的に私人の異性との性的関係,性的な悩みの内容及びその悩みを交際相手に打ち明けた事実が私生活上の事実であることは明らかであり,一般人の感受性を基準として,当該私人の立場に立った場合,公開を欲しないであろうと認められる事柄であるから,同事実を公表する記事の掲載は,原告のプライバシーを侵害するといえる。
 
被告は,原告がその著書の中でD’との性的関係及び性交時に自制が効かなくなり,大声を上げることを告白していること及び同記事が原告と内縁関係にあったD’の体験をそのまま掲載したものであることを根拠として,原告によるプライバシーの放棄ないしプライバシー侵害に対する承諾があったと主張している。
 
しかし,原告がその著書の中でD’との私的な性生活の詳細まで公表していたとは認め難いし,原告が仕事上のセックスとは別に,私的にセックスに対してどのような感情を抱いていたかまで同著書で示していたとも認め難い。これと前記のとおり,被告が前記各著書を執筆したことがあるという事実から被告主張のようなプライバシーの包括的放棄ないしプライバシーの公表に対する承諾があったと認めることはできないことを考え合わせると,被告の前記主張は採用できない。
(4) 同記事C部分について
 
同記事は,原告が出演していたアダルトビデオの印象が強かったため,原告が雑誌やテレビの仕事をしていた際に,雑誌の編集長や他のタレントからセクハラ被害を受けた事実を摘示するものである。
 
一般的に過去にセクハラ被害を受けたという事実が雑誌に公表されれば,同人が羞恥心を感じたり,同記事の読者がいかなる印象を抱いたかについて不安を抱いたりするものといえる。そのような事実は,職業としてビデオに出演するのとは異なる私生活上の事実であり,一般人の感受性を基準として,当該私人の立場に立った場合,公開を欲しないであろうと認められる事柄であるから,同記事の掲載は,原告のプライバシーを侵害するといえる。
 
原告は,さらに,同記事は,原告のふしだらな性生活を連想させるものであって,原告が性的にだらしない人物であるとの人格評価を与えるものであるから原告の名誉をも侵害すると主張する。しかし,同記事が摘示する,「出演したアダルトビデオの影響で原告がセクハラ被害を受けた」という事実から,読者が直ちに原告はふしだらな性生活を送っている,あるいは性的にだらしがないという印象を持つとまではいえないので,この点についての原告の主張には理由がない。
 
(略)
(5) 同記事D部分について
 
同記事は,その前後の文脈も合わせると,原告がD’との同棲生活を解消した約1年半後に,中野区内のビジネスホテルから投身自殺未遂をし,その事実を知ったD’が,原告を保護しなかったことにつき原告の両親に対して腹を立てたという事実を摘示するものである。
 
私人の自殺未遂歴及びそれについての家族の関わり等は,同人が通常の一般人である限り,私生活上の事実であり,また,それを知った人に通常否定的な印象を与えるものであるから,一般人の感受性を基準として,当該私人の立場に立った場合,公開を欲しないであろうと認められる事柄であり,自殺を図った経歴があるという事実は,通常人の一般的な読み方に従えば社会的評価の低下を招くものということができる。
 
前記のとおり,原告の落下事故については,新聞各紙はもとよりその他のメディアにより報じられ,その中の多くのものが,自殺未遂あるいは自殺未遂騒動などと報じて,原告が自殺を図ったのではないかとの憶測を流していた。したがって,原告が自殺を図ったのではないかとの憶測は,原告が一時,マスコミにおいてもてはやされていたことと相まって,当時,社会の広範囲な人々の間で共有されたものと認められるが,本件第1記事が掲載された当時は,既に上記事故から5年を経過し,原告が芸能活動や執筆活動をやめていたこともあって,人々の関心も薄らぎ,上記憶測についても記憶の中から消えようとしていたと認めるのが相当である。一方,原告は,入院中から自殺を図ったことを一貫して否定しており,前記のとおり,被告週刊誌編集部デスクのHが入院中に原告に面会した内容に基づいて作成された記事においても,原告が自殺未遂説を否定していたことが掲載されていた。したがって,被告は,このような原告の主張内容を知っていたと認められるところ,本件第1記事D部分において,D’の発言を引用しつつ,原告が投身自殺未遂をしたと断定的に事実を適示したと認めるのが相当である。
 
以上の事実に照らすと,上記記事は,前記のとおり,社会の関心が沈静化した時期に改めて断定的に原告の自殺未遂という事実を適示し,公開したという点において原告の名誉を毀損し,プライバシーを侵害するものと解するのが相当である。
(6) 本件第1記事全体についてプライバシー侵害に対する正当な社会的関心事であることに基づく違法性阻却の抗弁あるいは名誉毀損に対する公共の利害に関する事実についての真実性,相当性の抗弁が認められるか。
 
被告は,本件第1記事は,アダルトビデオについて歴史的に再考察する意図で連載された記事の一部であり,原告及びD’は,前記「SMぽいの好き」の衝撃的かつ画期的な内容で社会的なニュースにもなったこともあり,アダルトビデオの歴史をふり返る際,取り上げるのは不可避にして必須であったこと,原告は,アダルトビデオ界で一時代を画した有名女優であり,その人物像を理解する上で,本件第1記事の内容を掲載することが必要であったことを根拠に,同記事には,公共性があり,かつ同記事掲載には公益目的があると主張する。
 
公共の利害に関する事実とは,専らそのことが不特定多数人の利害に関するものであることから,不特定多数人が関心を寄せてしかるべき事実をいうものであって,単なる興味あるいは好奇心の対象となるものを含むものではない。したがって,私人の私生活上の行動については,当該私人の社会的地位ないし活動等が公的なものである場合はともかく,そうでない場合には,特段の事情がない限り,公共の利害に関する事実とはいえないと解すべきである。
 
前記のとおり,原告は,平成66月以降,女優ないしタレントとしての活動は一切しておらず,執筆活動も停止して,一般人として生活しており,本件各雑誌発行当時においても,同様の生活をしていた。したがって,原告が女優等の活動をしていたころはともかく,少なくとも本件各雑誌発行当時において,原告がその私生活上の行動につき不特定多数人の利害にかかわるといえるような公的地位を有し,あるいは公的な活動をしていたということはできない。さらに,本件第1記事の内容を見ても,同記事には,「Dが語り尽くす『ダイヤモンドの女優たちA』」という大見出し及び「『愛とセックスは別腹』だと」,「母親や親戚にも紹介した」,「自分を失うことを怖がって…」という小見出しの下,原告がアダルトビデオ女優をしていた当時内縁関係にあったD’による暴露という形態で,いずれも原告の私的事柄に当たる事実が掲載されているにとどまり,そこには被告が主張する同記事掲載の目的に沿うような,原告のアダルトビデオ業界及びテレビ,雑誌等におけるタレントとしての活動についての具体的な内容は記載されていない。したがって,同記事の内容は,読者の興味ないし好奇心の対象となるにすぎないのであり,アダルトビデオについて歴史的に再考察する意図の下,アダルトビデオ界で一時代を画した有名女優である原告の人物像を紹介する上で必要な事実を掲載したものであるから公共性が肯定されるという被告の主張には根拠がない(なお,原告の自殺未遂の事実については,前記)の事実に照らすと,真実であること,あるいは真実であると信じるに足る相当な理由があることについても認められない。)。以上のとおり,本件第1記事に掲載された事実に公共性は認められず,公益を図る目的も認められないから,被告の主張には理由がない。

 
[本件第2記事について]
(1) …によれば,本件第2記事は,平成11年ころ,かつて原告が出演したアダルトビデオ「SM麗奴」の無修正版が裏ビデオ「破廉恥な女」として発売されたのを契機として,同ビデオの内容の紹介として掲載されたことが認められる。
(2) 同記事によるプライバシーの侵害
 同記事には,原告の性器を含む身体的特徴や原告の性行為の状況が擬音やせりふを交えながら詳細に描写する方法で掲載されている。一般に,性器の形状など秘匿性の高い身体的特徴及び性行為のときの具体的な言動等は,他人に公開することを前提とするものではなく,一般人の感受性を基準として,当該私人の立場に立った場合,公開を欲しないであろうと認められる事柄であるから,プライバシーに属するものといえる。したがって,上記裏ビデオの内容を詳細に紹介する中で上記プライバシーに属する事柄を具体的に描写した本件第2記事は,原告のプライバシーを侵害するものと認められる。
 
被告は,アダルトビデオ出演者にとって作品中の性行為については仕事上の行為としてプライバシーの要件である「私生活上の事実・情報」に当たらないなどと主張する。しかしながら,後記のとおり,作品中の行為であることにより一定の範囲でのプライバシーの処分ないし公表の承諾が認められることはあり得るが,アダルトビデオ出演の事実だけで,直ちに上記の事柄についての私事性が失われ,あらゆる表現媒体において性器の形状ないし性行為の状況についてあからさまに描写したものを公開することが許されるようになるとまではいえないので,被告の主張には理由がない。
(3) 原告による性的プライバシーの放棄ないし承諾による違法性阻却との主張について
 
被告は,原告が,撮影されたビデオフィルムが作品として作成・頒布されることを了承し,その対価として出演料を取得するという出演契約をしたこと及び表ビデオが数年のうちに多数裏ビデオとして流通販売されているのは業界の実情であるから,原告も上記ビデオフィルムが裏ビデオとして流通することを当初から予測していたと主張し,これらのことから,原告には性行為や性器について,表ビデオ,裏ビデオを問わずプライバシーは存在しないか,原告によってその処分がなされているなどと主張する。
 
確かに,原告は,アダルトビデオ「SM麗奴」が商品として流通することを前提に同ビデオに出演して性行為の撮影を許しているのであるから,その限度で自らの性的プライバシーを処分し,同ビデオが流通する範囲での公開について承諾しているといえる。
 
しかし,…によれば,少なくとも原告が同ビデオに出演した当時においては,表ビデオが裏ビデオとして流出することは当然の前提ではなかったことが認められ,原告が同ビデオの発表ないし発売を承諾したことをもって,性器の描写等に修正が施されていない裏ビデオである「破廉恥な女」が公表,発売されることについても当然に承諾したと認めることはできない。また,被告週刊誌の流通範囲はアダルトビデオの流通範囲とは異なる。さらに,前記のとおり,本件第2記事が掲載された当時,原告がアダルトビデオ女優ないしタレントとしての活動を停止してから既に5年が経過しており,原告は,一般人としての生活の継続を望んでいたことからみて,このような時期に原告が改めて過去の出演作の内容を詳細かつ露骨に記載した記事の掲載を望むとは到底考えられないから,上記時点においては,もはや過去の同ビデオの公表ないし発売についての原告の承諾をもって本件第2記事の掲載を正当化することはできないというべきである。したがって,原告が表ビデオの出演契約を締結したという事実から,直ちに裏ビデオの内容の紹介記事の違法性が阻却されるということはできない
 
(略)

 
[本件第1写真及び同第2写真Aについて]
(1) (略)
(2) 人はおよそ自己の容姿をみだりに撮影され,それを公表されない権利である肖像権を有しており,特に本件第1写真のように女性が内縁関係にある異性と寄り添いながら脇毛を見せるという仕草をしている写真や,同第2写真Aのように,下着姿で股を開き,脇毛を見せている写真は,一般的には羞恥心を伴うものであり,その公表により精神的苦痛を受ける可能性が高いということができるから,それらを公表されない利益は大きいといえる。したがって,本人が一度その撮影及び公表に同意した場合においても,本人の同意の範囲の判断に当たっては,慎重に解釈すべきであり,その同意の範囲を超えたものについては,人格的利益を侵害する違法な行為であると評価すべきである。
(3) 前記(1)のとおり,原告は,本件第1写真については,被告雑誌の対談記事に掲載すること,また,本件第2写真Aについては,当時発売されたビデオの販売促進のためマスコミに対して配布するという説明を受け,その前提のもとに撮影に同意していることが認められる。しかし,それ以上にどの範囲で上記写真を再使用することを許諾していたかについては,これを明記した書面等の存在が認められないので,当該使用が承諾の範囲内にあるか否かについては,その使用の形態,使用された媒体,使用された時期などを考慮しながら決するほかない。
 
そこで判断するに,確かに前記のとおり,本件第1写真のように脇毛を見せるというポーズは,一般の女性が通常好んで見せるようなものではないが,原告の場合は,アダルトビデオ女優及びテレビタレントとしてマスコミにおいて人気を博していた時代に,脇毛を売り物としていて,広く原告のイメージとして定着していたものであること,脇毛の点を除いてはD’とともに写った通常の肖像写真であること,前記のとおり,本件第1写真は,被告週刊誌に掲載するために,被告週刊誌担当カメラマンによって撮影されたものであり,被告に著作権が帰属することからみて,原告としても被告による再使用を予期し得なかったとまではいえない。また,前記のとおり,原告が平成66月以降アダルトビデオ女優ないしタレントとしての活動の一切を停止し,上記写真が掲載された当時には一般人としての生活を継続していたとしても「X」についての正当な範囲内での紹介,論評まで拒否することはできないと考えられる。以上の点を考慮すると,被告による本件第1写真の再使用について原告の承諾が及ばず,違法になるとまで解することはできない
 
一方,本件第2写真Aは,脇毛を見せているにとどまらず,下着姿で股を開いている姿勢を撮影しているという点で,より羞恥心を高める度合が大きいこと,前記のとおり,上記写真の撮影時には当時発売されたビデオ「SMぽいの好き」の宣伝用にマスコミに対して配布するという説明であり,原告においてこの目的を超えて将来にわたり原告の姿を紹介する写真として使用することを予期していたとまでは認め難いこと,上記写真が掲載された当時,原告は,一般人としての生活をしていたことからすれば,撮影の後10年以上が経過した本件第1雑誌発刊時に本件第2写真Aがビデオの宣伝という範囲を超えて上記雑誌に掲載されることは,原告による従前の同意の範囲外にあるというべきである。したがって,本件第2写真Aの掲載は,原告の人格的利益を違法に侵害する不法行為に当たる

 
[本件第2写真B,同第3写真A及びBについて]
(1) …によれば,本件第2写真Bは,「SMぽいの好き」,同第3写真A及びBは,「破廉恥な女」からのいわゆる画撮であり,原告出演のアダルトビデオ映像の1コマを写真として掲載したものであることが認められる。
(2) 本件第2写真Bは,原告の裸体を,同第3写真Aは,原告の裸体及び性行為の状況を,同Bは,性行為の際に目を閉じて口を開けている原告の表情を顕わすものである。これらの写真の公表は,一般的に羞恥心を伴うものであり,それにより精神的苦痛を受ける可能性が高いということができ,それらを公表をされない利益は大きいといえる。したがって,前記のとおり,本人が一度その公表に同意した場合においても,本人の同意の範囲の判断に当たっては,慎重に解釈すべきであり,その同意の範囲を超えたものについては,上記人格的利益を侵害する違法な行為であると評価すべきであり,この点については,同写真がビデオ映像の画撮であっても変わるところはない
(3) 前記各写真の内容は,いずれも修正を要する種類の画像ではないので,表ビデオである「SM麗奴」の映像と変わるところはなく,同ビデオについて出演を承諾している原告においては,同画像がビデオの映像として公表されることについての承諾がなされたものといえる。また,ビデオの画撮をそのビデオの紹介のために使用することは,一般的に承認された宣伝方法であるから,ビデオ出演者はその限度でビデオ中の映像が写真として公表されることも認容しているといえる。
 
しかし,原告の前記ビデオ出演の事実から前記各写真の公表についての黙示の承諾を推認できるのはこの限度であって,本件各雑誌が発行されたのは「SMぽいの好き」及び「SM麗奴」の公表から10年以上が,原告がアダルトビデオ女優ないしタレントとしての活動を停止してから約5年が経過した平成116月ころであり,その掲載の態様をみても,本件第2写真Bは,前記のとおり,原告の私的事項を公表する内容の本件第1記事に添付される形で掲載され,同第3写真A及びBは,前記のとおり,原告がその公表ないし流通に同意したとは認められない「破廉恥な女」の紹介記事である本件第2記事に添付される形で掲載されていることからすれば,原告が本件各雑誌に前記各写真が掲載されることにつき承諾を与えていたと認めることはできない。したがって,前記各写真の掲載も不法行為となる

 
[損害]
 
以上のとおり,被告による本件各記事の掲載行為及び本件第1写真を除く本件各写真の掲載行為は,不法行為をそれぞれ構成する。そこで,これにより原告が被った損害を検討する。
 本件第1記事は,原告の私的事柄を原告とかつて内縁関係にあったD’が暴露する形で公表するものであり,また,「愛とセックスは別腹」など,侮辱的な表現も用いられ,さらに原告が自殺未遂を図ったなど,真実とは認められない部分も含まれている。本件第2記事は,原告の予期に反して流通した「破廉恥な女」の内容を文字化して紹介するものであり,同ビデオの流通により生じていた原告のプライバシーの侵害を拡大するものといえる。本件各写真は,男性の性的関心ないし好奇心を駆り立てる一方で女性の羞恥感を伴うものである。弁論の全趣旨によれば,本件各雑誌は全国の書店,コンビニエンスストア等に流通し,その発行部数も多数であったと認められ,原告がこれらの記事及び写真の掲載により自らのプライバシーを売り物にされたように感じ,大変傷つき,このような記事の掲載が今後も続くと新しい人生のスタートを切ることができず,不安を感じたと供述していることからすれば,本件各記事及び同各写真の本件各雑誌への掲載により,原告は精神的苦痛を受けたと認めることができる。
 
他方で,本件各記事は,原告の実名を用いておらず,原告の現在の私生活を暴露するものではなく,原告がかつては,自己のアダルトビデオ出演作や自己の著書などにおいて自らのセックスについての体験や性行為の状況を積極的に公表していたこと,本件各写真についても,原告がかつて何らかの形で公表を承諾したものをその承諾の範囲を超えて掲載したものにすぎないことなど本件に現れた諸般の事情を考慮すると,原告の前記精神的苦痛を慰謝するためには,200万円の慰謝料の支払をもって相当とすべきである。











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