著作権重要判例要旨[トップに戻る]







ライブや貸切営業に供する店舗経営者の侵害主体性
「ジャズレストラン&バーライブ演奏事件」平成200917日大阪高等裁判所(平成19()735 

 1審被告は本件店舗で演奏される管理著作物の利用主体か否かについて
 
最高裁判所昭和63315日第三小法廷判決は,スナックにおける客のカラオケ伴奏による歌唱について,客は経営者と無関係に歌唱しているわけではなく,従業員による歌唱の勧誘,経営者の備え置いたカラオケテープの範囲内での選曲,経営者の設置したカラオケ装置の従業員による操作を通じて,経営者の管理の下に歌唱しているものと解され,他方,経営者は,客の歌唱をも店の営業政策の一環として取り入れ,これを利用していわゆるカラオケスナックとしての雰囲気を醸成し,かかる雰囲気を好む客の来集を図って営業上の利益を増大させることを意図していたというべきであって,客の歌唱も,著作権法上の規律の観点からは経営者による歌唱と同視しうる旨判示した。本件は,いわゆるカラオケスナックに関する事案ではなく,上記判示をそのまま当てはめることはできないが,同判決は,著作物の利用(演奏ないし歌唱)の主体は著作権法上の規律の観点から規範的に判断すべきものであって,現実の演奏者・歌唱者だけでなく,演奏・歌唱を管理し,それによって営業上の利益を受ける者も含まれうることを明らかにした点で,本件においても参酌すべきである。
(1) ピアノ演奏について
 
前記において認定したとおり,本件において損害賠償請求又は不当利得返還の対象となっているピアノ演奏は,通常のレストラン営業の傍らで定期的に行われるものであって,1審被告が本件店舗に設置したピアノを用いて行われ,スタッフと呼ばれている複数の演奏者が定期的に演奏を行っていたものであり,ウェブサイトにおいても「毎火・金・土曜日にはピアノの生演奏がBGMです。」と宣伝していることからして,ピアノ演奏は,本件店舗の経営者である1審被告が企画し,本件店舗で食事をする客に聴かせることを目的としており,かつ本件店舗の「音楽を楽しめるレストラン」としての雰囲気作りの一環として行われているものと認められる。そうすると,ピアノ演奏は,1審被告が管理し,かつこれにより利益を上げることを意図し,現にこれによる利益を享受しているものということができるのであって,上記認定のとおり,特定の演奏者が定期的に出演していること,出演の日時が特定されてホームページなどで対外的に公表され,したがって出演者はこれに拘束されると解されることなどからみて,1審被告の主張するように,これをレストラン営業とは無関係にアマチュアの練習に場所を提供しただけであると見ることはできない
 
1審被告は,客から演奏鑑賞料を徴収していないし,演奏者に演奏料を支払ってもいないとも主張するが,そうであるとしても,1審被告がピアノ演奏を利用して本件店舗の雰囲気作りをしていると認められる以上,それによって醸成された雰囲気を好む客の来集を図り,現にそれによる利益を得ているものと評価できるから,1審被告の主観的意図がいかなるものであれ,客観的にみれば,1審被告がピアノ演奏により利益を上げることを意図し,かつ,その利益を享受していると認められることに変わりはないというべきである。
 
以上によれば,本件店舗でのピアノ演奏の主体は,本件店舗の経営者である1審被告であるというべきである。
(2) ライブ演奏について
 
本件店舗が主催するライブについては,前記のとおり,本件店舗が最終的に企画し,客からライブチャージを徴収した上で,演奏者等に演奏料を支払うのであるから,その演奏は本件店舗の管理の下に行われるものと評価でき,またそれによる損益は本件店舗に帰属するものであったといえる。したがって,この形態のライブ演奏の主体は,本件店舗の経営者である1審被告であることが明らかである。
 
第三者が主催するライブについて
 
この形態のライブは,プロの演奏者又は後援会からライブ開催の申込みにより行われ,演奏者が自ら曲目の選定を行い,ちらし等を作り,雑誌に掲載して広告し,チケットを作って販売し,ライブチャージを取得するのであって,本件店舗は,従業員が客からのライブチャージ徴収事務を担当し,例外的に予約を受け付けることがある以外,何らの関与もせず,演奏者等から店舗の使用料等を受領せず,演奏者に演奏料も支払われないのであるから,本件店舗は,ライブを管理・支配せず,基本的に,ライブ開催による直接の利益を得ていない。他方,本件店舗のコンセプトに照らすと,本件店舗は,このようなライブを店の営業政策の一環として取り入れ,かかる雰囲気を好む客の来集を図って営業上の利益を増大させることを意図していた可能性も否定できないが,ライブ開催と来店者及び収益の増加との関係は必ずしも明らかではなく(ライブ開催時の飲食物提供は通常より簡素であると認められる。),仮に一定程度の利益が生じるとしても,管理著作物の利用主体を肯定することにはならない。そうすると,このような形態のライブで,本件店舗(1審被告)が,演奏を支配・管理し,演奏による営業上の利益の帰属主体であるとまではいうことができず,管理楽曲の演奏権を侵害したとは認められない
 
(略)
(3) 貸切営業における演奏について
 
前記において認定したとおり,貸切営業において,1審被告は,場所及び楽器,音響装置及び照明装置を提供しており,本件店舗における演奏を勧誘しているのであるが,結婚披露宴や結婚披露宴の二次会,各種パーティー等において,招待客や参加者が本件店舗内において管理著作物をピアノで演奏したり歌唱したとしても,そもそも演奏するか否か,さらにいかなる楽曲を演奏するか,備付けの楽器を使用するか否か,音響装置及び照明装置の操作等について上記招待客等の自由に委ねられているものであり,その演奏形態は一様ではないといえる。
 
また,前記認定事実のとおり,本件店舗のウェブサイトには、貸切営業の際に通常営業も行うこともできるとの記載があるが,本件において提出された証拠によっては,貸切営業が実際にいかなる場合に通常営業と並行して行われているのかは明らかではなく,むしろ多くの場合,貸切営業においては本件店舗を訪れる不特定多数の客ではなく,専ら当該結婚披露宴の二次会などの招待客に聴かせることを目的とするものであることが認められる。これらの事情にかんがみれば,貸切営業における招待客や参加者が行う演奏行為は,1審被告によって管理されていると認めることはできず,むしろ1審被告とは無関係に行われる場合が多いと認められ,また,1審被告がその演奏自体を不特定多数の客が来訪する店の雰囲気作りに利用するなどして,これによる収益を得ているとは認められない
 
したがって,貸切営業における演奏については,管理著作物の利用主体は本件店舗の経営者たる1審被告であると認めることはできない
 
(略)
(4) 小括
 
以上によれば,本件店舗におけるピアノ演奏及び本件店舗主催のライブ演奏については,1審被告による演奏権侵害の余地があるが,第三者主催のライブ演奏及び貸切営業では演奏権侵害が認められない。
(5) 控訴審における当事者の主張について
 
1審原告は,貸切営業における顧客の演奏は,1審被告による演奏の勧誘,楽器等の備え置き・管理による演奏の勧誘と支援,演奏の時間的空間的制約の下に行われるから,その管理の下にあり,また,1審被告は,顧客の演奏により,雰囲気の醸成及びこれを好む顧客の来集を図っている等と主張する。
 
しかし,本件店舗の貸切営業における演奏の勧誘は,1審原告の主張によっても,ホームページやパンフレット等及び楽器等の備え置き等による一般的・抽象的なものにすぎず,来店した顧客に対する積極的な働きかけを認めるに足りる証拠はないし,演奏の時間的空間的制約も,1審被告の管理を根拠付けるものとはいえない。また,本件店舗を結婚披露宴等で利用する顧客が,1審原告の主張する勧誘をどの程度重視しているかも明らかでなく,上記認定のとおり,貸切営業では,演奏するか否か,いかなる曲を演奏するか等が完全に顧客の自由に委ねられていて,音楽が全く演奏されない場合もあり得る上,このような会では,参加者は音楽演奏の有無にかかわらず参集するものと解されるから,顧客による音楽演奏が,1審原告の主張するような雰囲気の醸成及びこれを好む顧客の来集に資するかは疑問の余地が大きい
 
よって,1審原告の上記主張は採用できない。











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