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差止の射程範囲(5)
「ジャズレストラン&バーライブ演奏事件」平成200917日大阪高等裁判所(平成19()735 

 [請求の趣旨第1項の差止請求に関する差止めの必要性について差止めの必要性について]
 
上記認定事実及び前記のとおり,本件店舗は,そのウェブサイトに「ジャズやボサノバを中心にここちよい音楽を楽しみながら,お食事やお酒を味う贅沢な空間です。」とし,「Cのコンセプト」を「音楽を愛するすべての人に心から楽しんでいただく素敵な空間です。」と明示して営業しているレストランカフェであり,1審原告が行った実態調査によれば,演奏されていた楽曲のほとんどが管理著作物であった。1審被告は,平成17223日の本件仮処分事件の審尋期日において,本案訴訟による解決がなされるまでの間,本件店舗では管理著作物を演奏しないことを表明したが,これも本件の終局判決が言い渡されるまでの間の措置として管理著作物を演奏しない旨を表明しているにすぎないものであることが,その主張の趣旨に照らし明らかであり,その後の対応については態度を明らかにしていない。
 
これらの状況に加えて,1審原告の管理著作物である日本国内外の楽曲は,1審原告によれば460万曲以上にも及ぶことからすると,1審被告は,将来においてなお本件店舗において管理著作物を演奏するおそれがあるというべきである。
 
したがって,請求の趣旨第1項については,本件店舗における「ピアノリクエスト・ピアノ弾き語り・ピアノBGM」における演奏,本件店舗主催の入場料を徴収する「ライブ」における演奏について,ピアノ,ウッドベース,ドラムセット,パーカッション,ギター,ベース等の楽器演奏及び歌唱による管理著作物の使用差止めの請求は,理由があるが,第三者主催のライブ演奏・貸切営業については,上記に認定説示のとおりであるから,差止めの対象とならない。
 
[請求の趣旨第2項の差止請求に関する差止めの必要性について]
 
…によれば,本件店舗におけるピアノ演奏で演奏された楽曲のほとんどは管理著作物であったことが認められるから,本件店舗に備え置かれたピアノは,主として1審原告の演奏権を侵害する管理著作物の無断演奏に使用されていたと認められる。もちろん,ピアノは,本来,管理著作物以外の楽曲の演奏の用にも供し得るものではあるが,現実の使用態様が主として管理著作物の無断演奏に供されるもので,その状態が今後も継続するおそれがある場合に,1審原告がその撤去を求めることは,本件店舗における1審被告による演奏権の侵害を停止又は予防するために必要な行為に該当する(著作権法1122項)。
 
前記のとおり,たとえ1審被告が現時点においてはピアノリクエスト,ピアノ弾き語り及びピアノBGMを中止していたとしても,今後,これらの演奏が再開されれば管理著作物が無断で演奏されるおそれがあることは否定できない。よって,ピアノについては,請求の趣旨第2項の差止請求を認める必要がある。
 
他方,1審原告が撤去を求めるその他の楽器,すなわちウッドベース,ドラムセット,ギター,パーカッション,ベースについては,ライブ奏者であれば自ら使用する楽器を持参し,本件店舗備え付けの楽器は使わない場合も多いと推認され,また,これらの楽器が貸切営業においても使用される可能性が否定できず,専ら著作権侵害の行為に供された機械又は器具であるとまでは認めることができない
 
ミキサー,アンプ,マイクなどの音響装置については,ピアノ演奏,本件店舗主催のライブ,貸切営業のいずれの演奏態様においても用いることがあるものである。そして,貸切営業の営業日数は,月によっては1か月に7日ある場合もあり,営業日数全体に占める割合がわずかであるとまでいうことはできない。また,上記のとおりピアノの撤去請求が認められ,かつ,後記のとおりピアノを含むその他の楽器の搬入禁止請求が認められる(ただし,第三者主催のライブ及び貸切営業を除く。)ことによれば,ライブの出演者がこれらの楽器を持ち込むことも禁止されるのであるから,1審被告による著作権の侵害行為の予防の観点からも,1審被告による管理著作物の利用行為に当たらない貸切営業にも使用され得る音響装置の撤去まで命じる必要はないというべきである。
 
よって,請求の趣旨第2項のうち,本件店舗にピアノの撤去を求める部分は理由がある。
 
[請求の趣旨第3項の差止請求に関する差止めの必要性について]
 
前記のとおり,1審被告は,1審原告が再三にわたって音楽著作物利用許諾契約の締結を促しても,これに応じなかったばかりか,自ら本件店舗においては管理著作物は演奏しないという方針を明らかにした後も,管理著作物の演奏を継続してきたものである。このような経緯に照らせば,1審被告が判決により管理著作物の使用を差し止められても,これに従わず,また,ピアノを撤去されても,ピアノその他の楽器を搬入して,管理著作物の使用を継続するおそれが高いものといわざるを得ない。
 
ただし,マイク等の音響装置の搬入禁止を求める部分は,上記のとおりマイク等の音響装置の撤去を禁じていない以上,搬入禁止を命じる必要はないというべきである。
 
よって,請求の趣旨第3項のうち,本件店舗に「ピアノリクエスト・ピアノ弾き語り・ピアノBGM」における演奏,本件店舗主催の入場料を徴収する「ライブ」における演奏においてピアノその他の楽器の搬入禁止を求める部分は理由があるが,第三者主催のライブ,貸切営業については理由がない。











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