著作権重要判例要旨[トップに戻る]







不法占有者に対し、正当権利者の所有権取得に要した費用相当額をもってその損害賠償の支払いを命じた事例
「浮世絵春画デジタルワーク・出版事件」平成141210日東京高等裁判所(平成13()5284 

【コメント】本件は、被控訴人(一審原告)が、控訴人ら(一審被告)が被控訴人との出版契約に基づき出版した「浮世絵春画一千年史」(「本件出版物」)について、上記出版に当たり、本件出版物に収録する写真(浮世絵春画の写真)のデジタルワーク処理を担当した一審被告B及び控訴人らによって、被控訴人に無断で、同人が作成した本件出版物のペーパーレイアウトの内容が改変されたこと等により著作者人格権を侵害されたと主張して、控訴人らに対し、損害賠償を求めた(本訴請求)のに対し、控訴人らが、被控訴人に対し、上記契約に基づく本件出版物の出版に当たり、被控訴人の作業の遅れにより損害が生じたとして損害賠償の支払を求め、併せて、本件著作物の出版に当たり控訴人らが費用を支出して作成し、被控訴人が現に所持するフォトCD(「本件フォトCD」)の作成費用等の支払などを求めた(反訴請求)事案の控訴審です。 

 フォトCD化の費用の返還請求について
 
本件フォトCD作成の費用を,控訴人らが負担すべきであると解すべきことは,原判決に記載されたとおりであるから,引用する。しかしながら,本件フォトCD作成の費用を控訴人らが負担する以上,作成された本件フォトCDの所有権は,反対の結論に導く特別の事情が認められない限り,控訴人らに属するものと解するのが相当である。ところが,上記特別の事情に該当する事実は,本件全証拠によっても認めることができないから,本件フォトCDの所有権は,少なくとも当初は,控訴人らに属したということができる。
 
被控訴人が本件フォトCDを占有していることは,弁論の全趣旨により明らかである。本件訴訟において,控訴人らは,所有権に基づきフォトCDの返還請求をすることをしないで,返還を求めてもこれに応じないことは明らかであるとして,その返還を求める代りに,本件フォトCD作成費用相当額の支払を求めている。控訴人らが返還請求をしても,被控訴人がこれに容易に応じるとは考えられない状態にあることは,弁論の全趣旨で明らかである。
 
被控訴人が,本件フォトCDの占有権原(所有権の取得によるものを含む。)を有することは,本件全証拠によっても認めることができず,むしろ,そのような権原がないことが弁論の全趣旨で認められる。控訴人らは,本件フォトCDの所有権に基づき被控訴人に対しその返還を請求することができる状態にあるものと認められる。また,控訴人らの所有に属する本件フォトCDを権原なく占有し,その返還を請求してもこれに容易に応じない態度をとることは,反対の結論に導く特別の事情が認められない限り,それ自体,控訴人らに対する不法行為を構成するものというべきである。そして,上記特別の事情に当たる事実は本件全証拠によっても認めることができない。
 このような場合,本件フォトCDの所有者である控訴人らは,所有権に基づく返還請求権の行使が可能であっても,本件フォトCD自体の返還を求めることなく,その取得に要した費用に当たる額の支払を求めることは,不法行為に基づく損害賠償請求として許されるものと解するのが相当である。このような不法行為により生じた損害の回復の方法の一つとして,本件フォトCD自体の回復の実現を断念する代りに,その価値に見合う額の金員の支払を受けるということを,他のもの(例えば,本件フォトCD自体の返還を求めつつ,返還によって補えないものを金銭で請求するなど)とともに認め,その選択を許すとすることには,不法行為という制度の目的に照らし,十分合理性があるということができるからである。
 
控訴人らは本件フォトCDの作成費用として合計1787562円を負担しているから,特段の事情が認められない限り,本件フォトCDには少なくとも同額の価値があるというべきである。そして,上記特段の事情は本件全証拠によっても認めることはできない。
 
控訴人らは,被控訴人に対し,不法行為に基づく損害賠償請求権に基づき,1787562円及びこれに対する平成1278日(反訴状送達の日の翌日)から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求めることができるというべきである。











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