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利用許諾契約の解釈(21)
「携帯配信用コンテンツ『恋愛の神様』事件」平成220428日東京地方裁判所(平成18()24088 

 [複製物の交付について]
 
(改変許諾条項)
 
本件確認書は,3条但し書において「またコンテンツサービスを継続的に維持するために…行う改変については認める…」と規定している。
 
そして,そのほか,「改変」の内容を特段限定する趣旨の文言はない。
 
前記に説示したとおり,被告ホールディングスは,もともと原告プログラムの使用をすることができるのであり,したがって,「当該電子計算機において利用し得るようにするため」,又は「電子計算機においてより効果的に利用し得るようにするため」に必要な改変は著作権法上許容されている(著作権法2023)。それにもかかわらず,あえて上記の条項を設定し,このことも含めた対価が原告に対して支払われるのであるとするならば,この条項は,上記法定の許容範囲を越える広範な改変を許容したものと解するのが相当である。
 
そこで,上記条項をみてみると,その条項は「コンテンツサービスを継続的に維持するために」として,コンテンツサービスの維持継続を目的としているものであって,プログラム稼働の維持継続を目的としているものではなく,現に,本件確認書2条においても,「別紙ロイヤリティ契約分のプログラムに関連する該当コンテンツサービス」として,「プログラム」と「コンテンツ」とは一応分けて観念されているほか,原告も,同条につき,前訴において,「コンテンツ」と「プログラム」とは異なるものであるからたとえ「プログラム」が全く別なものに変更されても「コンテンツ」が同一であればロイヤリティの支払義務がある旨の主張をしていたところである。しかるところ,コンテンツの同一性は画面表示等のアウトプットで認識されるのであって,プログラム部分の同一性で認識されるものではない。
 そうすると,本件確認書3条但し書で許容された改変とは,全く該当コンテンツの維持に関係のない改変はともかくとして,そうでない場合には,改変内容に特段の限定は付けないものとした趣旨と解するほかない。このように解しても,被告ホールディングスは,相応の対価を支払い,使用期限経過後は,たとえ改変されたプログラムが派生物(2次的著作物)に該当する場合でもその権利の一切を事実上放棄することになっているのであり(もちろん,新たな著作物であればその後の使用に制約が課されるいわれはない。),衡平を欠くというものではない。
 また,プログラムを改変するためには,ソースコードの解析行為が必要であり,その際,必ず複製行為を必要とするから,上記条項が,プログラム(ソースコード)の複製を許容していることはいうまでもない。
 
(外部漏洩・販売禁止条項)
 
本件確認書は,3条但し書において「プログラムを外部に漏洩・販売することは認めない。」と規定している。
 
プログラムの複製物を販売することにより公衆に提供することは,譲渡権の侵害であり,わざわざ規定を置くまでもなく許容されないことが明らかであるから,「外部に…販売」とは,公衆への提供に該当しない場合,すなわち,デリリオスに対する販売のような特定かつ少数に対する提供のような場合でも(ただし,占有改定のような観念的な提供でも足りるかは一応問題になる。),被告ホールディングスがその関係者以外に販売すればこれを直ちに契約違反とする趣旨と解される。一方,上記において判断したとおり,被告ホールディングスには広範な改変権原が付与されており,その際に原告プログラムを複製することが許容されている。そして,コンテンツ配信事業者にすぎず,しかも,この事業目的に資するに足りるプログラムを要する被告ホールディングスが,プログラムの改変を含むプログラムの開発をするためにプログラム開発会社又は個人にプログラム開発を委託することは当然の企業行動であるから,「外部に…販売」と並置されている「外部に漏洩」とは,このことを前提としたものと考えられる。そして,上記条項ではわざわざ「漏洩」を禁止するとしているのであって,単純な「開示」を禁止しているものではない
 
このような観点から「外部に漏洩」の意義を検討すれば,「外部に漏洩」とは,「外部に…販売」されたプログラムの買受人のように無制約に自己のための利用を許容されるような態様でプログラムの内容が開示されることを意味するものと解するのが相当であり,単に開発を委託されたプログラム開発会社に原告プログラムを開示することは含まれないものというべきである。
 
(略)
 
以上のとおりであるから,被告らに複製物の交付による著作権侵害行為があったことは認められない。

 [翻案について]
 
本件確認書は,3条但し書において「またコンテンツサービスを継続的に維持するために…行う改変については認める…」と規定しており,この改変許諾条項の解釈については,前記のとおり,全く該当コンテンツの維持に関係のない改変を除いて,改変内容に特段の限定は付さないものとしたものと認められる
 
原告は,本件確認書の改変許諾条項は,別途独立した新たなプログラムを新規に作ることを禁止している旨を主張する。
 
しかしながら,前記に認定判断したとおり,コンテンツが同一である限りは,その維持のためのプログラムの改変は,本件確認書の改変許諾条項により許諾されていることであり,改変より生じた当該改変プログラムが原告プログラムと類似性があるか否かは本件確認書の改変許諾条項の律するところではない。本件確認書の改変許諾条項は原告プログラムの改変を許容しているのであり,改変が積み重なった結果,類似性のないプログラムに至ってしまえば,以後,そのプログラムは本件確認書の許諾ではなく一般法規により律せられるだけであり,ひるがえって途中の改変が契約違反とされるいわれはない
 
また,原告プログラムの改変をした結果,類似性のないプログラムが生じ,その結果,コンテンツも同一性でなくなった場合には,本件確認書の改変許諾条項の「コンテンツを継続的に維持するため」という条件には合致しないことにはなるが,プログラムもコンテンツも同一性がないならば,それは全く本件確認書と関係のない行為をしているだけであり,改変が積み重なった結果,類似性のないプログラムに至ってしまったことによってひるがえって途中の改変が契約違反とされることがないのは,上記のとおりである。むしろ,本件確認書の改変許諾条項が禁じているのは,原告の主張するような場合ではなく,原告プログラムと類似性あるプログラムを類似性のないコンテンツに転用又は流用することである。この場合には,元のコンテンツ配信サービスの維持に全く関係のない理由で原告プログラムを改変して使用することになり,それを制限する合理性はある。しかしながら,いずれにしても,前記までの認定判断のとおり,本件証拠上,原告プログラムと類似するプログラムを別なコンテンツに流用していることを認めるに足りる証拠はない。
 
原告の上記主張は,採用することができない。
 
(略)
 
以上のとおりであるから,被告らに翻案による著作権侵害行為があったとは認められない。











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