著作権重要判例要旨[トップに戻る]







出版者の注意義務(9)-持ち込み企画につき過失なしとした事例-
「医学書分担執筆者氏名脱漏事件」昭和540219日千葉地方裁判所(昭和45()637 

 被告会社は、「仮りに本書出版によつて原告の著作人格権が客観的には侵害された部分があつたとしても、被告会社は同書出版につき無過失であつた。」と主張するので検討する。
 
本書F項文末及び目次同項部分に原告の氏名を脱漏せしめたまま本書を出版販売したことは、原告の著作人格権に対する侵害になることは前判示のとおりである。
 
そして被告会社は、本件著作を本書の一部として前認定の形で出版することにつき、自ら編集会議を開催する等して直接原告の承諾をとることをしなかつたことは当事者間に争いがない。
 
しかしながら被告会社としては、本書出版の企画は被告【A】のいわゆる持ち込み企画であつて、本書出版の企画を被告会社自身として決定した当初においては、本書は、被告【A】の単独著作物として出版されるものであると説明を受けていたこと、また、本書のような目的内容を有する医学書は、たとい教室員の協力があるとしても、教室の事実上の代表者である教授の単独著作名義とすることがこれまでにも多く、仮りに当初から協力教室員の氏名を各分担部分に記載するような編集著作物として出版を申し込まれたとすれば、その商品的価値の点においては、問題があることから、出版販売を受諾していたかどうか疑問であること、従つて被告会社は、本書出版に際しては、被告【A】に対し、特に本訴のごとき著作権に関する紛争を予防するため、その持込み企画の性格上からしても、被告【A】において本書の著作内容及び協力者との関係等一切を調整して、確定した出版原稿を受け取る旨の約束をとりつけていたこと、被告会社は、ゲラ刷りのための原稿を受取つた時点においても、同原稿には、執筆者の氏名の記載は一切なく、また出版についての著作者側との折衝は被告【A】並びに訴外【B】との間においてのみ行なわれていたため、原告が本書の本件著作部分を担当執筆したことを知らなかつたばかりでなく、それを知る必要もなかつたし、またその機会もなかつたこと、そして本書の分担執筆をした教室員らの氏名を本書に掲記することになつた旨の申し入れを受けた時点においても、その氏名の掲記方法並びに掲記すべき者の範囲は、前記出版に関する約定に基づきすべて訴外【B】の指示に従つてこれをなしたものであることは、いずれも前判示のとおりである。
 
従つて被告会社としては、本書出版の確定原稿は、著作者側の代表者である被告【A】ないし実質的統括者であり、かつ、その履行補助者である訴外【B】によつて、すべての点につき、調整が完了しているものと信じたことは、むしろ当然のことと解せざるを得ない
 
よつて右事実関係の下においては、被告会社としては自ら本書出版のために編集会議を開催する等して、原告に対し本件著作を本書第一版のような形式で出版することにつき同意を求めるべき注意義務は存しなかつたと言わざるを得ないし、他にそのような注意義務があることを認めるに足る証拠もない。











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