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確認の利益(5)-米国特許権に基づく差止請求権不存在確認の訴えの利益-
「サンゴ化石粉末健康食品事件」平成151016日東京地方裁判所(平成14()1943 

 訴えの利益(確認の利益)の有無について
 
[請求の趣旨第1項について]
 被告は,米国特許権に基づく差止請求権不存在確認の訴えについて,我が国の裁判所により判決がされても,米国において承認されるかどうか疑問であるから,確認の利益が存在しない旨を主張する。
 
しかしながら,上述のとおり,特許権に基づく差止請求訴訟は,当該特許権の登録国以外の国にも国際裁判管轄が認められるものであるから,登録国以外であっても国際裁判管轄を有する国の裁判所により判決がされた場合には,当該判決は他国において承認・執行されるべきものであり,このことは当該他国が登録国であっても異なるものではない。そして,前記のとおり,特許権に基づく差止請求権不存在確認の訴えであっても,国際裁判管轄の点については差止請求訴訟と同様に解すべきであるから,登録国以外の国であっても国際裁判管轄を有する国の裁判所によってされた差止請求権不存在確認判決は,国際裁判管轄を有する国の裁判所によってされた差止請求棄却判決と同様,登録国を含めた他国において承認されるべきものである。
 
そうすると,本件においては,本件米国特許権に基づく差止請求権不存在確認の訴えにつき,我が国に国際裁判管轄が認められるのであるから,本件につき当裁判所によって判決がされ,これが確定した場合には,当該判決は,登録国である米国を含めた他国において承認されるべきものであって,被告の主張するような理由により確認の利益が否定されるものではない
 
なお,外国判決の承認・執行につき,我が国の民事訴訟法は,外国裁判所の確定判決は,@法例(管理人注:「法令」の誤り)又は条約により外国裁判所の裁判権が認められること,A敗訴の被告が訴訟の開始に必要な呼出し若しくは命令の送達(公示送達その他これに類する送達を除く。)を受けたこと又はこれを受けなかったが応訴したこと,B判決の内容及び訴訟手続が日本における公の秩序又は善良の風俗に反しないこと,C相互の保証があること,の要件のすべてを具備する場合に限り,その効力を有するものと規定している(民訴法118条)。我が国の裁判所によりされた判決については,我が国の民事訴訟法の規定する前記各要件を具備する場合に限り,外国において承認・執行されることを期待すべきであるとの見解もあり得るかもしれないが,仮にそのような見解を採るとしても,本件については,前記のとおり我が国に国際裁判管轄が認められ,被告は適式の呼出しを受けた上で応訴しており,原告の求める請求の内容及び我が国の民事訴訟法に基づく訴訟手続が国際的に一般に認められている公の秩序又は善良の風俗に反するものではない。また,我が国と米国との間には相互の保証が存在するものであり,侵害行為地に該当する米国ネヴァダ州(原告の取引先であるHealth Co.net社の所在地)の民事訴訟法(修正法)においては,「17.350 (外国判決の受付と効力) 外国判決の認証謄本は,当州のいずれの地方裁判所でも書記官が受け付ける。書記官は外国判決を当州の地方裁判所の判決と同様に処理するものとする。このように提出された外国判決は,当州の地方裁判所の判決と同様の効力を有し,これと同様に手続に付され,防御の機会が与えられ,同様に,再審,破棄,執行停止手続が適用され,同様に実施され,履行され得る。」旨が規定されており,他方,米国ネヴァダ州の裁判所によりされた判決が,我が国において,その効力を承認された例(東京地方裁判所平成3()6792号同年1216日判決)が存在する。
 
また,前述のとおり,原告による米国内における原告製品の販売については,被告は,本件米国特許権に基づく差止請求訴訟を,原告の普通裁判籍の存する我が国の裁判所に提起することも可能であるところ,本件において,原告の当該販売につき被告が本件米国特許権に基づく差止請求権を有しないことを確認する判決がされれば,当該判決の既判力により,被告が将来我が国の裁判所において差止判決を得ることを阻止することができるのであるから,この意味においても,請求の趣旨第1項に係る訴えに確認の利益が存在することは,明らかである。
 
[請求の趣旨第3項について]
 
請求の趣旨第3項は,「原告の米国内の取引先による米国内における原告製品の販売につき,被告が本件米国特許権に基づく差止請求権を有しないことを確認する。」というものであり,米国における原告の取引先と被告という,本件訴訟当事者以外の第三者と被告との間の法律関係についての確認を求めるものである。
 
確認の訴えは,一定の法律関係についてこれを確定させることが被告との間の紛争を解決するために必要かつ適切である場合にのみ,即時確定の利益が存在するものとして,当該訴えを提起することが許されるものである。訴訟当事者以外の第三者の法律関係に関する確認の訴えについては,常に確認の利益が否定されるわけではなく,当該第三者の法律関係が原告の権利義務に直接影響を与える場合には,確認の利益が肯定されることもあり得るというべきであるが,本件は,原告製品が本件米国特許権の技術的範囲に属するかどうかをめぐる原告と被告との間の紛争であり,これは請求の趣旨第1項(原告による米国内における原告製品の販売につき,被告が本件特許権に基づく差止請求権を有しないことを確認する。)により解決されるべきものである。また,仮に請求の趣旨第3項につき判決がされたとしても,被告と米国における原告の取引先との間に何らかの法的効果を生ずるものではなく,当該判決の既判力により被告が当該取引先に対して米国等の裁判所において差止判決を得ることを阻止し得るものでもない
 上記によれば,請求の趣旨第3項に係る訴えについては,訴えの利益が存在するということはできない
 
原告は,請求の趣旨第3項につき確認判決がされれば,原告は,米国内での原告取引先に対し,自由に原告製品を販売することができ,原告と取引先の営業上の信用が回復されるから,確認の利益は存在する旨主張するが,上記のとおり,仮に請求の趣旨第3項につき判決がされたとしても被告と米国における原告の取引先との間に何らの法的効果も生じないものであるから,原告の主張する事情は,単なる事実上ないし反射的な効果をいうものにすぎない。したがって,原告主張のような事情をもっては,即時確定の利益が存在するということはできない。
 以上によれば,請求の趣旨第1項に係る訴えについては確認の利益が存在するというべきであるが,同第3項に係る訴えについては確認の利益が存在するということができない。したがって,請求の趣旨第3項に係る訴えは,不適法なものとして,却下すべきものである。











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