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サブライセンサーの侵害主体性
「テレビ番組『蘇れ!サーキットの狼』DVD化事件」平成220716日東京地方裁判所(平成21()3188)/平成221228日知的財産高等裁判所(平成22()10066 

【コメント】本件は、漫画「サーキットの狼」を題材にしたテレビ番組の製作業務の下請をした「原告会社」及び同テレビ番組でナレーションの実演を行った「原告X」が、同テレビ番組がDVD化されることについての承諾をしていないのに、同テレビ番組製作の発注者である株式会社「JIC」から同テレビ番組をDVD等の表現媒体に二次利用することを他に許諾する権利(サブライセンス権)の設定(許諾)を受けた被告が、株式会社「交通タイムス社」に同テレビ番組のDVD化を許諾するライセンス契約を締結し、交通タイムス社を通じて同番組のDVDを製作販売したなどと主張し、被告に対し、原告会社においては同テレビ番組の製作業務に関する追加の請負代金の支払を、原告Xにおいては同テレビ番組の追加の出演料及び当該実演に係る実演家の録音権(著作権法911項)侵害の不法行為による損害賠償の支払を求めた事案です。 

【原審】

 [原告会社の請求について]
(1) 原告会社の主張によれば,原告会社の本訴請求は,本件番組制作請負契約に基づく請負代金の一部を請求するものと解されるところ,このような請負契約に基づく請負代金の支払義務を負うのは当該契約を締結した当事者たる発注者であって,それ以外の者が請負代金の支払義務を負うのは,その者が発注者の債務を引き受けるなど,債務負担の原因となり得る特段の事実がある場合に限られるものといえる。
 
しかるところ,原告会社は,本件番組制作請負契約について,ソニアと原告会社との間において,ソニアを発注者,原告会社を請負人として締結されたものと主張する一方で,本件番組制作請負契約の当事者ではない被告が原告会社に対し同契約に基づく請負代金の支払義務を負うべき原因となり得る事実を何ら主張していない。原告会社は,交通タイムス社による本件番組のDVDの製作,販売によって,原告会社の本件番組制作請負契約に基づく追加の請負代金請求権が発生したこと,他方,交通タイムス社によって本件番組のDVDが製作,販売されるに至ったのは,被告が原告会社の承諾を得ることなく交通タイムス社との間で本件ライセンス契約2を締結したことによるものであることから,原告会社は上記追加の請負代金を被告に対して請求することができる旨主張するが,原告会社が主張する上記各事実によっても,被告が原告会社に対し本件番組制作請負契約に基づく追加の請負代金の支払義務を負うべきことが何ら根拠付けられることにはならない。
 
したがって,原告会社の本訴請求に係る上記主張は,その主張自体において失当であることが明らかである。
(2) 以上によれば,原告会社の本訴請求は理由がない。

 
[原告Xの請求について]
(1) 追加の出演料請求について
 
原告Xの主張によれば,原告Xの本訴請求は,本件番組出演契約に基づく出演料の一部を請求するものと解されるところ,このような番組出演契約に基づく出演料の支払義務を負うのは当該契約を締結した当事者たる出演依頼者であって,それ以外の者が出演料の支払義務を負うのは,その者が出演依頼者の債務を引き受けるなど,債務負担の原因となり得る特段の事実がある場合に限られるものといえる。
 
しかるところ,原告Xは,本件番組出演契約について,ソニアと原告Xとの間において締結されたものと主張する一方で,本件番組出演契約の当事者ではない被告が原告Xに対し同契約に基づく出演料の支払義務を負うべき原因となり得る事実を何ら主張していない。原告Xは,交通タイムス社による本件番組のDVDの製作,販売によって,原告Xの本件番組出演契約に基づく追加の出演料請求権が発生したこと,他方,本件番組のDVDが製作,販売されるに至ったのは,被告が原告Xの承諾を得ることなく交通タイムス社との間で本件ライセンス契約2を締結したことによるものであることから,原告Xは上記追加の出演料を被告に対して請求することができる旨主張するが,原告Xが主張する上記各事実によっても,被告が原告Xに対し本件番組出演契約に基づく追加の出演料の支払義務を負うべきことが何ら根拠付けられることにはならない。
 
したがって,原告Xの追加の出演料請求に係る上記主張は,その主張自体において失当であることが明らかである。
(2) 実演家の録音権の侵害による損害賠償請求について
 
原告Xは,被告が原告Xの承諾を得ることなく交通タイムス社との間で本件ライセンス契約2を締結したことにより,交通タイムス社によって本件ナレーションの録音が含まれる本件番組のDVDが本件各書籍の付録として製作され,販売されるに至ったのであるから,被告が原告Xの承諾を得ることなく交通タイムス社との間で本件ライセンス契約2を締結した行為は,原告Xの本件ナレーションについての実演家としての録音権を侵害する旨主張する。
 しかし,仮に原告Xが本件ナレーションについて実演家としての録音権を有するとしても,本件ナレーションの録音行為は交通タイムス社による本件番組のDVDの製作によって行われたものであり,被告が交通タイムス社との間で本件ライセンス契約2を締結した行為それ自体は本件ナレーションを録音する行為に当たるということはできない
 
また,…を総合すれば,@被告と交通タイムス社間の本件ライセンス契約2は,JICから本件ライセンス契約1に基づいてJICの著作物である本件番組をDVD等の表現媒体に二次利用することを他に許諾する権利(サブライセンス権)の設定(許諾)を受けた被告が,交通タイムス社に対し,本件番組のDVDを製作し,交通タイムス社が発売する書籍に付録として添付して販売することを許諾する内容の契約であり,JICが保有する本件番組の著作権以外の他の権利を対象とするものではないこと,A被告は,本件ライセンス契約2に基づいて,交通タイムス社から,交通タイムス社が発売する書籍の出版部数に応じて本件番組の著作権使用料(最低保証料を含む。)を取得することができるが,交通タイムス社が行う本件番組のDVD(その複製物を含む。)の製作及び販売には,被告が直接関与することはなく,上記書籍の出版部数,ひいては,本件番組のDVDの複製物の製作数量をいくらとするのかなどについても交通タイムス社の独自の判断で行うものとされていたことが認められる。
 
上記認定事実に照らすならば,本件番組のDVD(その複製物を含む。)の製作及び販売の主体は,あくまで交通タイムス社であって,被告が交通タイムス社を通じてあるいは交通タイムス社と共同して本件番組のDVDの製作及び販売を行ったものということはできない
 
したがって,原告Xの上記主張は,採用することができない。
 
(なお,本件ライセンス契約2の契約書の2条には,「AはBに対し,本契約を締結する有効且つ正当な権利及び権限を保有すること,本番組に関し第三者から一切の異議,請求がないこと,及び万一第三者から何らかの異議,請求等があった場合はAの責任においてこれを処理し,Bに一切の迷惑を及ぼさないことを保証する。」(「A」は被告,「B」は交通タイムス社)との規定があるが,上記規定は,被告が,交通タイムス社に対し,本件番組の著作権者であるJICとの関係で,本件ライセンス契約2を締結する有効かつ正当な権利及び権限を保有することを保証する趣旨の条項であって,上記規定から被告が交通タイムス社に対し本件番組に係る著作隣接権の権利処理が行われていることを保証したものとまで認めることはできないし,上記契約書を全体としてみても,そのような保証をしたことをうかがわせる条項は他に存しない。したがって,本件ライセンス契約2の解釈としては,本件番組のDVD化に係る利用行為を行う主体である交通タイムス社が,その責任において,本件番組の利用のために必要とされる著作隣接権者の許諾を得るべきものと解される。また,仮に被告と交通タイムス社との間において本件番組の利用のために必要とされる著作隣接権者の許諾があることについて被告が保証するとの合意があったと解釈する余地があるとしても,その合意の効力は,本件ライセンス契約2の契約当事者である被告と交通タイムス社間の法律関係を規律するにすぎず,原告Xに及ぶものではない。)
(3) 小括
 
以上によれば,原告Xの本訴請求はいずれも理由がない。

【控訴審】


 当裁判所の判断
 次のとおり付加するほか,原判決の…とおりであるから,これを引用する。
1 原告らは,当審において,被告に対し,それぞれ期待権侵害による損害賠償請求又は慣習に基づく二次使用料請求を追加し,その理由として,TV業界においては,テレビ番組をビデオ化あるいはDVD化する場合,出演者,ナレーター,そのほか番組に協力した者に対し,ビデオ化(DVD化)使用料を支払う慣習が長期間にわたり存在し,かかる使用料支払に対する期待権が法律上の利益となっているなどと主張する。
 しかし,本件全証拠によっても,使用料支払を受ける期待権が法律上の利益として確立していることを裏付ける事実を認めることはできない。この点,原告会社代表者Aは,テレビ番組のビデオ化あるいはDVD化の際には,制作会社等は,出演者,ナレーター,そのほか番組に協力した者に対し,音楽,ナレーション等がそのまま使用可能かなどにつき,連絡をしていた旨を述べるものの,そのようなことが行われていたとしても,そのことから,使用料支払を受ける期待権や慣行上の二次使用料請求権が法律上の利益として確立しているとは,到底認めることはできない。
 したがって,被告が,原告らに対して,本件番組のDVD化に関し,期待権侵害による損害賠償義務,又は慣習に基づく二次使用料支払義務を負うべき理由はなく,原告らの上記主張は採用することができない。
2 原告Xは,以下の理由により,交通タイムス社に対しサブライセンスをした被告の行為が,原告Xの有する実演家としての録音権の侵害行為に当たると主張する。すなわち,@被告は,交通タイムス社にサブライセンスをして本件番組のDVDを製作,販売させることにより,利益を得る立場にあったことA被告と交通タイムス社との間で締結された本件ライセンス契約2では,交通タイムス社に対し,本件番組のDVDについて,内容(コンテンツ)の審査,校正及び改正等の監修権並びに業務に関する監視監督権を有していたので,交通タイムス社を支配・管理していたことに照らすならば,被告自身が,本件番組のDVDを製作,販売したと評価することができるか,又は,交通タイムス社の侵害行為を幇助したと評価できるから,原告Xに対し,上記損害賠償をする義務があるなどと主張する。
 しかし,本件番組のDVD(その複製物を含む。)を製作,販売したのは交通タイムス社であるから,交通タイムス社との間でサブライセンス契約を締結した被告が,同サブライセンス契約において,一定の範囲で監修をする権能等を保有していたとしても,本件において,被告が,交通タイムス社を支配・管理していたとか,交通タイムス社の行為についての幇助者に当たるとみることはできない。原告の主張は,その他の要件も含めて,これを認めるに足りる証拠はなく,採用の限りでない。











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