著作権重要判例要旨[トップに戻る]







複製権又は翻案権侵害の判断基準(11)-「贋作」の侵害性が問題となった事例-
「大阪税関絵画積戻し命令事件」
平成80131日大阪地方裁判所(平成6(行ウ)4/平成90528日大阪高等裁判所(平成8(行コ)8 

※以下の【】の部分は、控訴審で訂正又は追加された箇所です。

 …を総合すると、次の事実が認められる。
 
原告は、絵画の輸入、販売業者であるところ、ハンガリー生まれの画家【A】が制作した本件各絵画を含む絵画13点を日本国内において展示、販売するため、平成4716日、被告に対し、右絵画の輸入申告をした。右絵画の輸入申告書には、仕入書とともに英字新聞記事のコピーが添付されており、仕入書には、「【B】、【C】、【D】」等の著名画家の名が記され、英字新聞記事には、「【E】 De Hory-the master of imitation」との記載があった。そこで、被告部下職員が現品検査を実施したところ、本件各絵画には、右著名画家の署名がそれぞれ記載されており、裏面には、鉛筆による「【E】」の署名と四桁の数字が記されていた。【A】は、米国人作家【F】の「贋作」という伝記小説のモデルとなったことで知られ、右小説によると、同人は、著名画家の絵画を模倣し、これを本物として売却していたとされている上、我が国においても、昭和41年に国立西洋美術館が【A】の作品を誤って【G】等著名画家の作品として高値で購入した疑いがあることが指摘され、国会で審議されたことがあったことから、被告は、前記絵画13点が関税定率法2114号所定の著作権侵害物品に該当する疑いがあるとして、調査を開始した。その結果、被告は、本件各絵画が本件各原画の著作権を侵害するものと判断し、平成5823日付けで本件処分に及んだ。
 
(略)
 
以上の事実が認められ、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。
 
そこで、まず、本件各絵画が本件各原画の複製物ないし二次的著作物に該当するか否かについて判断する。
 
前記認定事実、殊に本件各絵画が、本件各原画と構図、筆致、色調【(ただし、被控訴人の徹底的な調査にもかかわらず、本件原画@の色調は不明であるが、この点は、本件絵画@が本件原画@の複製物ないし二次的著作物であるとの判断を左右するものではないというべきである。)】においてよく似通っており、その画面下方に本件各原画の著作者の署名が記されているところ等からすれば、本件各絵画が【単に本件各原画の画風を模倣したものではなく、】本件各原画に依拠して制作されたことは明らかというべきであり、前記認定のとおり、本件各絵画と本件各原画との間には、画中人物等の数や描写、首飾りの有無等、その細部において若干の相違が見られ、本件絵画Bについては色調にも差異が認められるとはいうものの、いずれの場合もその構図及び筆致は酷似していて、【本件各絵画から本件各原画における表現形式上の本質的な特徴自体を直接感得することは十分に可能というべきであり、本件各絵画は、本件各原画の複製物ないし二次的著作物に該当すると解するのが相当である。なお、本件原画Bはリトグラフ、本件絵画Bは油彩という相違点も認められるものの、これは、技法の相違に過ぎず、本件絵画Bが本件原画Bの複製物ないし二次的著作物であるとの判断を左右するものではないというべきである。
 
もっとも、控訴人は、本件各絵画と本件各原画との間には一見して明らかな相違点があり、これらの相違点は、【A】が作為的に盛り込んだのであり、【A】は、原画に似せることを主眼としておらず、同人自身の作品として流通させる目的で本件各絵画を描いたとか、本件各原画の著作者の署名の存在は本件各絵画が本件各原画の複製物であるか否かを判断する上で決定的な意味を持たないというべきであるとか、本件各絵画は、本件各原画の持つイメージ、雰囲気を全く別に作り変えており、本件各原画の二次的著作物にも当たらないというべきであるとか主張する。
 
しかし、前記認定説示のとおり、【A】の主観的意図はいずれにあるにせよ(【A】が本件各絵画自体に自己の署名をせず、本件各原画の著作者の署名を記載し、自己の署名は本件各絵画の裏側にしかも鉛筆という容易に消去することができる方法で記載したことに照らしても、同人の本件各絵画の著作の意図が控訴人主張のとおりであったと認めるのは困難であるが、この点をさておくとしても)、あるいは、仮に、本件各絵画に【A】独自の創作性が加えられているとみるとしても、本件各絵画が本件各原画とは別個独立の著作物となったということはできず、本件各絵画は本件各原画の複製物ないし二次的著作物にとどまるものというべきである。また、本件各原画の著作者の署名の存在は、本件各絵画が本件各原画に依拠していることを端的に示しているというべきである。
 したがって、控訴人の右主張は理由がない。】
 
(略)
 
【控訴人は、本件各絵画が出回ることで本件各原画の評判が高まり、その価値が上がることはあっても下がることはないとか、本件各絵画を本件各原画の複製物として購入することも考えられず、本件各絵画が本件各原画の著作者の権利を侵害するものということはできないとか、このような絵画を取締りの対象とすることは、著作権法の目的に反するものであり、鑑賞者の判断、市場の評価によって淘汰、選別されるべきものであるとか主張する。
 
しかし、前記で説示したとおり、本件各絵画が著作権のうちの複製権ないし翻案権を侵害するのであり、本件各絵画が出回ることで本件各原画の評判が高まるか否か及び本件各絵画を本件各原画の複製物として購入することが考えられるか否かはその著作権侵害の有無の判断を左右するものではなく、また、著作権法は、著作者等の権利の保護を図ることを目的としているのであるから、本件各絵画のような著作権侵害物件を輸入しないように積戻しを命ずることは、まさに著作権法の目的に適うものというべきである。
 
したがって、控訴人の右主張は理由がない。】
 
以上によれば、本件各絵画が関税定率法2114号所定の著作権侵害物品に該当するとしてされた本件処分は適法であり、原告の請求は理由がない。











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