著作権重要判例要旨[トップに戻る]







著作権紛争解決のための和解契約の成立を否定した事例
「週刊誌ジャニーズタレント写真無断掲載事件」平成110830日東京地方裁判所(平成10()14106
 

【コメント】本件は、タレント【E】を撮影した写真四枚(「本件写真」)について著作権又は著作者人格権を有する原告らが、被告に対し、本件写真を被告発行の週刊誌「週刊現代」に無断で掲載した被告の行為が、同権利を侵害すると主張して、損害賠償の支払と謝罪広告の掲載を請求した事案です。 

 [損害額について]
 
(原告麻布台出版社の損害)
 
原告麻布台出版社は、被告に対し、本件写真について通常受けるべき使用料相当額を、自己の受けた損害として請求することができる。そこで、右使用料相当額について検討すると、週刊現代の販売額は24000万円であること(発行部数は80万部、定価は300円として算定)、総頁数は214頁であり、他方本件写真の掲載頁数は四頁であること、本件写真は、人気タレントである【E】を撮影した写真であり、当時かなりの話題性を有していたこと等一切の事情を考慮すると、本件写真の使用料相当額は80万円と解するのが相当である。また、被告の行為と相当因果関係を肯定できる弁護士費用を8万円の範囲で認めることができる。
 
そうすると、被告の賠償すべき原告麻布台出版社の損害額は、88万円となる。なお、原告麻布台出版社は、被告が本件写真を掲載した後、タレントの所属事務所との信頼関係を害され、慰藉料の損害が生じた旨主張するが、本件全証拠によっても、そのような具体的損害を認めることはできない。
 (原告【C】の損害)
 
著作者人格権を侵害されたことによって原告【C】に生じた精神的損害の額は、掲載の態様、本件紛争の経緯、既に謝罪広告が誌上掲載されたことなど一切の事情を考慮すると30万円が相当である。
 
[和解契約の成否について]
 
…によれば、以下のとおりの事実が認められ、これを覆すに足りる証拠はない。
 
平成104月ころ、M弁護士は、被告から本件著作権紛争の解決のための委任を受け、被告を代理して、原告らと交渉を進めた。ところで、原告らを実質的に代理して、原告らのために交渉を担当したのは、E弁護士であった。M弁護士は、E弁護士から、同弁護士は、被告の関連企業である訴外株式会社光文社と関係があることから、あくまでも事実上、原告らを代理して交渉をする旨の説明を受けた。
 
平成10513日、M弁護士は、E弁護士と電話で交渉し、同弁護士は、本件紛争の解決案として、週刊現代誌上に謝罪文を掲載すること、損害賠償金として50万円を支払うことを提案した。その後、M弁護士は、E弁護士に対し、謝罪広告文を掲載するか、賠償金の支払のいずれかの範囲で応ずると回答したところ、E弁護士は、謝罪広告が掲載されるなら、賠償金は30万円でよい旨再提案をした。M弁護士は被告と検討した上、E弁護士に対し、右提案に応じると返答し、あわせて、謝罪広告用の文案を同弁護士に送信した。右返答に対して、E弁護士が特に異論を唱えたり、意見を表明したりするなどの具体的な対応はなかった。なお、原告ら及び被告間で和解契約書が作成されたことはなかった。
 
M弁護士は、E弁護士の右態度から、本件紛争は右内容で解決したものと判断し、被告担当者に、返答に沿った被告の義務の履行を指示した。
 
ところが、M弁護士は、同年526日、E弁護士から、【E】所属の株式会社ジャニーズ事務所が反対したため、本件紛争を和解で解決きない旨の説明を受けた。
 
謝罪広告文については、M弁護士の指示に沿って、61日発行の週刊現代(613日号)に掲載された。また、被告は、平成11218日、本件賠償金として、金30万円を東京法務局に供託した。
 
右認定した事実を総合すると、E弁護士が原告らを代理し、M弁護士が被告を代理して、本件紛争の解決に向けた交渉は重ねられたものの、双方の弁護士の間で、被告は、週刊現代に謝罪文を掲載し、30万円の慰謝料を支払い、原告らはその余の請求を放棄するとの内容で合意したと認めることはできない
 
[供託について]
 
…によれば、以下のとおりの事実が認められ、これに反する証拠はない。
 
被告は、平成11610日ころ、本件著作権侵害による損害賠償金及び遅延損害金を原告らに弁済提供したが、原告らがその受領を拒絶したので、平成11623日、東京法務局に、損害賠償金及び遅延損害金として、原告麻布台出版社のために106万円、原告【C】のために318000円を、それぞれ供託した。
 
被告が原告麻布台出版社に対して賠償すべき金額は922794円(損害額88万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成1074日から右供託の日である平成11623日までの355日分の年5分の割合の遅延損害金42794円の合計)であり、また、被告が原告【C】に対して賠償すべき金額は314589円(損害額30万円及びこれに対する355日分の年5分の割合の遅延損害金14589円の合計)であり、被告が供託した額は、いずれも、右金額を超えるので、被告の本件損害賠償義務は右供託により消滅した。
 
原告らの本件損害賠償請求は理由がない。
 
[謝罪広告について]
 
前記認定した経緯を総合すると、本件において、被告に対し謝罪広告等の措置を命ずる必要性はないというべきである。











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