著作権重要判例要旨[トップに戻る]







編集著作物における「素材」とは(3)
「色画用紙見本帳事件」
平成120323日東京地方裁判所(平成11()16101 

【コメント】本件では、色画用紙の製造販売業者である原告が、競業関係にある同業者である被告に対し、原告の作成した見本帳(「原告見本帳」)は色彩及び色名の選択に創作性のある編集著作物に該当するところ、被告の作成した見本帳(「被告各見本帳」)は、いずれも原告見本帳に依拠し、原告の氏名を表示することなく作成されたものであるから、原告の原告見本帳についての著作権及び著作者人格権を侵害する行為に当たると主張しました。

 
本件でその編著作物性が問題となった「原告見本帳」は、その表紙に原告の会社名とともに商品名などの記載があり、見開きには、原告の商品である全52色の色画用紙のすべてに対応する52種類の紙片と、原告の別の商品である表裏の色が異なるタイプの色画用紙に対応する8種類の紙片が、いずれも一覧できるようにひな壇状に重ね合わされて貼付された上、それぞれの紙片の左横に色名及び色番号が記され、また、上部に「用途」及び「規格」についての所定の記載がされているものでした。 


 著作権法121項は、編集物でその素材の選択又は配列に創作性のあるものを著作物(編集著作物)として保護する旨を規定するが、これは、素材の選択・配列という知的創作活動の成果である具体的表現を保護するものであり、素材及びこれを選択・配列した結果である実在の編集物を離れて、抽象的な選択・配列方法を保護するものではない当該編集物が何を素材としたものであるのかについては、当該編集物の用途、当該編集物における実際の表現形式等を総合して判断すべきである。
 (略)
 本件においては、まず、原告見本帳及び被告各見本帳がそれぞれ何を素材としたものであるかについて争いがあるが、前記認定の事実によれば、原告見本帳は、原告の取扱商品の見本にほかならず、その素材は、原告の取扱商品である色画用紙についての色、材質、用途、サイズ、包装状態等の商品情報であって、純粋に色彩及び色名を素材としたものではないというべきである。また、被告各見本帳は、被告の取扱商品の見本であり、その素材は、被告の取扱商品である色画用紙についての商品情報であって、原告見本帳同様、色彩及び色名ではないというべきである。
 たしかに、原告見本帳及び被告各見本帳には、いずれも色彩及び色名について表現された部分があるが、各見本帳の用途やその余の記載に照らせば、それは原告及び被告の個々の取扱商品についての説明事項の一つにすぎず、原告見本帳及び被告各見本帳が色彩及び色名を素材とする編集物であると認めることはできない。
 したがって、原告見本帳が色彩及び色名を素材とする編集著作物であることを前提とする原告の主張は失当であって、被告各見本帳が原告見本帳についての著作権及び著作者人格権を侵害するとはいえない。
 前記のとおり、原告見本帳の素材は、原告の取扱商品についての情報であり、当該商品のすべての種類についての情報を掲げている以上、その商品情報の選択について創作性を認めることもできない。
 
原告は、色画用紙においてはどの色彩を備えているかが商品価値を左右することから、原告が企業努力を傾けて市場性、品質に秀でた色彩及び色名を選択したところ、被告は何の開発努力もリスクも負うことなく、これをそのまま踏襲しようとしていると主張するが、原告の右主張は、結局、原告及び被告それぞれの取扱商品たる色画用紙の品揃えの同一性又は類似性を問題視するものにすぎず、著作権ないし著作者人格権の侵害の問題とは、無縁のものというべきである。











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