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名誉毀損-否定事例(2)-
「‘カナンの呪い’翻訳本事件」平成190308日知的財産高等裁判所(平成18()10092 

【コメント】本件は、被控訴人(一審被告)のなした下記行為が控訴人(一審原告)の名誉を毀損するとして、不法行為に基づく損害賠償金と遅延損害金の支払を求めた事案です。
 (記)
 被控訴人が監訳者を務める書籍である「カナンの呪い寄生虫ユダヤ3000年の悪魔学」の本文中に以下のア〜ウの各記述があること。
ア 「…私の知らないうちに日本語版が,あたかも私が許可したように,Xなる信用の置けない人物によって訳出,出版されている…」
イ 「私の不信感は原文の約三分の一が勝手に削除されたこと,ましてや翻訳出版は私自身も承諾済みだと主張されたことから間違いのないものとなった。」
ウ 「筆者の全く関知しないかたちで,著しく不十分不備な翻訳が平成9年,10年に出てしまった。」 


 [本件記述アについて]
 
控訴人は,被控訴人が原著者Cを買収し,原著者がこう言っているという設定で控訴人を中傷した旨主張する。しかし,…によれば,本件記述アは,「「カナンの呪い」日本語訳公認版の読者へ」との見出しで,その末尾に「200312C」と記載された欄中にあり,原著者が述べた言辞であって,「監訳者」と表示された被控訴人の言辞ではないことが認められる。また本件において,被控訴人が原著者を買収したことや,原著者がこう言っているという設定で実際は本件記述アは被控訴人が述べた言辞であることを認めるに足りる的確な証拠はない。
 以上によれば,本件記述アについて被控訴人が控訴人の名誉を毀損したということはできず,控訴人の上記主張は採用することができない。
 
[本件記述イについて]
 控訴人は,本件記述イの内容は全く事実に反すると主張する。しかし,…によれば,本件記述イも,本件記述アと同様に,「「カナンの呪い」日本語訳公認版の読者へ」との見出しで,その末尾に「200312C」と記載された欄中にあり,本件書籍の原著者が述べた言辞であって「監訳者」と表示された被控訴人の言辞ではないことが認められるから,本件記述イにより被控訴人が控訴人の名誉を毀損したということはできない。
 
以上によれば,控訴人の上記主張は採用することができない。
 [本件記述ウについて]
 控訴人は,本件記述ウの内容は全く事実に反すると主張するところ,…によれば,本件記述ウは,「監訳者」と表示された被控訴人が,「監訳者解説」欄において,本件書籍の発行に際してその読者に向けて述べた言辞であること,その前後の部分とのつながりをみると,「本書「カナンの呪い」は,平成4年秋に原書を入手してから熟読し,再読し,三読し,またその論評もいろいろな機会に発表している。当時の筆者の知人が翻訳出版の準備をしていたところ,筆者の全く関知しないかたちで,著しく不十分不備な翻訳が平成9年,10年に出てしまった。だが平成145月末から6月にかけて,筆者がC氏を日本に招待したことを契機として,正式に成甲書房が本書「カナンの呪い」の日本語版権を獲得し,今般,このように立派な完訳書を日本の読書界に問うことができて,筆者の喜び,これに優るものはない。…」(判決注,下線部は判決で付記。本件記述ウ)となっていることが認められる。
 そうすると,本件記述ウは,一般の読者の普通の注意と読み方を基準にすれば,控訴人の平成9年,10年の翻訳(控訴人を訳者として表示する日本語書籍「カナンの呪い闇の世界権力の系譜」平成910月刊,同じく平成103月刊。原判決のいう「原告翻訳版」。以下,順に,原告書籍12という。)が著しく不十分不備であるという事実を摘示したという点において控訴人の社会的評価を低下させるものと解する余地がある(なお,「筆者の全く関知しないかたちで,」とある部分については,一般の読者の普通の注意と読み方を基準としても,控訴人の社会的評価を低下させるものとは認められない)。
 しかし,…によれば,原著者は,「原告書籍12における誤訳により被害を被り,控訴人はその誤りを正そうとせず,原告書籍12は原著者が見せられることのないまま,原著者の知らない間に出版された」,という認識を有していること,控訴人は,原告書籍12において,原著者の原著に存在する複数の記載部分を割愛しており,原告書籍12の各本文の頁数は,被控訴人が監訳者を務めた本件書籍の約7割であること,が認められる。
 以上の事実を総合勘案すれば,控訴人が原著者との間で原告書籍12の翻訳出版について合意しているかどうかにかかわらず,本件記述ウの内容は,控訴人の平成9年,10年の翻訳(原告書籍12)が著しく不十分不備であるという点について真実であるというべきであり,また,本件書籍の発行に際してその読者に向けて述べた本件書籍に関する言辞であることから,公共の利害に関する事実に係り,もっぱら公益を図る目的に出た場合であるということができる
 
したがって,被控訴人が本件記述ウを記載した行為は違法性を欠くというべきであるから,控訴人の上記主張は採用することができない。











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