著作権重要判例要旨[トップに戻る]







写真フィルムの返還合意の存在を否定した事例
「鮎釣り大会等スポニチ外部委託写真掲載事件」
平成220909日大阪地方裁判所(平成20()2813 

 返還約束について
 
原告会社は,本件フィルム等は,被告新聞への写真掲載後は速やかに返還するとの合意があったと主張する。そして,その理由として,原告会社には2次使用による収益や無断使用防止の必要がある一方,被告は2次使用を行わない限り保有の必要がないから,特段の事情がない限り,一度掲載したら返還するというのが,当事者の合理的意思であること,実際にも,当初は返還されており,被告も返還を前提とする行動をとっていたことを挙げる。
 しかしながら,以下のとおり,これらの事情は,返還約束があったとの事実を裏付けるものとはいえない
() 原告会社における保有の必要性について(返還請求の放置)
 一般に,著名人の写真については,パブリシティ権が問題となり得るところ,本件フィルム等に関しては,当該著名人側が,マスコミ報道による宣伝効果を考慮の上,新聞社である被告に対し,用途を被告新聞への掲載に限定して,特別に撮影を許可し,通行証などが発行されたと認められる。また,一般人であっても,新聞掲載にあたってはプライバシー権が問題となり得るから,例えば鮎釣り大会の参加者であれば,大会の主催者が被告であるからこそ,被告新聞への写真掲載や,その前提としての撮影について,承諾を得られたと見るべきである。したがって,当該写真は,本来,被告が,被告新聞へ掲載する場合の使用のみが想定されており,原告会社において,使用収益を期待すべきものではないはずである
 また,原告会社は,フィルム等の管理を業としており,平成167月に死亡した著名人Gの写真により,平成174月だけで約252万円,その後平成216月までに,さらに約86万円の収入を得るなどの業績を有している。だからこそ,原告会社としては,本件フィルム等について2次使用による収益を予定しているというのであれば,財産的価値が高く,あるいは,いつ高くなるかもしれないため,時機を逸することなく,いつでも使用収益できる状態に置いておくべきであり,本件フィルム等について,返還約束が存在するにもかかわらず,返還を受けないままでいるというのは不自然である。被告は,原告会社に対し,頻繁に撮影依頼をしているわけではなく(別表によれば,年間数回から十数回である。),撮影報酬も安価であり,原告会社にとって,唯一の取引先というわけでもなく,原告会社は,被告から実際にフィルム等の返還を受けたこともあり,返還を求めることについて支障があったとは考えにくい。しかし,本件フィルム等の交付時期は,被告新聞への掲載日直前と考えられるから,主として1990年代後半から2000年代前半であり,返還を求めなかった期間は,単に取引関係にあったというだけでは説明がつかないほど長期である
 また,既に管理していたプリントを交付した場合であれば,交付したプリントは,原告会社が,現に事業活動に供している財産であるが,原告会社には貸出規定も存在するのであるから,返還約束が存在するにもかかわらず,返還を受けずにいることは,いっそう不自然である。特に,平成162004)年69日掲載の「■■■&●●●」の写真と平成31991)年425日掲載の「●●●・▲▲▲」の写真は,同一の写真であるから,原告会社の主張を前提にすれば,同一のプリントを2度にわたって交付し,そのいずれについても返還を受けていないということになるが,返還約束があったプリントについて,13年以上も返還を受けず,返還を受けないまま再び交付し,再び返還を受けないまま3年近くが経過したというのであれば,むしろ,返還約束がなかったと考えるのが自然である。
() 被告における保有の必要性について
 
被告写真部では,写真を紙面掲載したか否かにかかわらず,また,自社カメラマンによる撮影であるか外部カメラマンによる撮影であるかを区別することなく,後日の利用に備えてフィルムを保管している。
 したがって,被告において,被告新聞への写真掲載後はフィルム等を返還するというのが合理的意思であるとはいえない。
 前記のとおり,原告P1らに対し,返還されたフィルムがあることが認められるが,被告としては,被告新聞への写真掲載後,特段の保有の必要性がないと判断したから返還要請に応じて交付したと認めることができる。しかし,本件のような撮影委託契約の実態等に照らすと,これら写真映像の著作権や著作者人格権が,撮影者に帰属することはともかく,被告において,フィルムの返還の義務を認識していたとは考えにくい(むしろ,上記同契約に基づき撮影し,提供されたフィルムである限り,著作権,著作者人格権が撮影者に帰属するとしても,これらの権利による制限の及ばない限り,未感光フィルムの所有権の帰属にかかわらず,撮影後,被告にフィルムを交付することにより,その現像,掲載,トリミング,保管の要否などを含め,フィルムの一切を被告に委ねたと認めることができる。)。
() 返還の事実について
 
前記のとおり,被告写真部においては,通常は保管するフィルムについても,事前に他部署から交付要請があった場合は,保管せず当該部署に交付する扱いにしている。したがって,予め,原告会社と被告との間に返還約束があれば,一律に返還されているはずであるし,実際に返還されたものも存在するのであるから,それにもかかわらず本件フィルム等が長期間返還されていないのであれば,本件フィルム等については,返還約束がなかったことが窺われる。
 また,返還されたフィルムが存在するからといって,直ちに返還約束の存在を認めることもできない。被告新聞は日刊新聞であり,日々の出来事を報道することを主たる目的としているから,掲載写真は1回的な使用となるのが通常である。しかも,前記のとおり,掲載写真は,報道目的で撮影を許可された写真といえるから,他の目的に使用収益することも困難である。したがって,予め返還約束がなかったとしても,当該写真を撮影した外部カメラマンの希望があり,かつ被告において,当該フィルムを保有する必要がないと判断できるものであれば,返還約束がなくても,フィルムを当該カメラマンに任意に交付することは,十分考えられることである。これは,他部署からの返還要請がある場合は当該部署に返還するという,被告写真部における扱いとも合致する。
 なお,P3は,原告P1からフィルムの返還を求められたため,フィルムを探すことを試みた上,時間的な猶予を求めているが,上述した事情に照らすと,被告の一従業員であるP3の上記行為をもって,被告の返還意思を推認することはできないというべきである。
 
以上のとおりであるから,原告会社が,本件フィルム等を被告に交付した事実については,一部これを認めることができるものの,その具体的な数量や,これらについて返還約束があったとの事実は,いずれについても,これを認めるに足りる証拠がない。











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