著作権重要判例要旨[トップに戻る]







著作権譲渡の黙示の合意の成立を否定した事例(11)
「鮎釣り大会等スポニチ外部委託写真掲載事件」平成220909日大阪地方裁判所(平成20()2813 

 被告は,著作権の譲渡を裏付ける間接事実として,被告において,未感光フィルムの交付,撮影に係る指示,トリミングを行っていたこと,対価の支払状況,原告P1らによる権利行使の不存在などを挙げる。
 しかしながら,以下のとおり,これらの事実は,著作権の譲渡を裏付けるものとはいえない
() 未感光フィルムの交付について
 フィルムの所有権とフィルムに感光された写真の著作権とは,本来,別個に存在するものである。したがって,被告が所有する未感光フィルムを交付した後,原告P1らの撮影によって未感光フィルムが感光されても,そのことによって,フィルムに感光された写真の著作権が被告に移転することにはならない
 また,前記のとおり,本件で被告が支払った対価には,原告P1らが撮影に使用するフィルムの代金も含まれており,撮影者側でフィルムを用意することが前提となっていたものである。確かに,被告が未感光フィルムを交付したこともあるが,必要数量のフィルムが,毎回必ず交付されていたとは認められないし,被告において,交付本数や使用本数などを記録ないし管理していた事実も窺われない。
 
したがって,未感光フィルムの交付は単なるサービスであったといえ,著作権の帰属に影響するものではない。
() 撮影時の状況(撮影に係る指示)について
 
本件においては,被告あるいは被告記者が,原告P1らの撮影にあたり,具体的な指示を出していたことを認めるに足りる証拠はない。
 写真は,一般に,撮影にあたり何らかの指示が行われた場合であっても,同じものが出来上がるわけではなく,撮影者の個性が表れるものであり,そうであるからこそ,プロカメラマンが存在するものである。仮に何らかの指示があったとしても,それにより著作権が指示した者に移転するものではない
 また,撮影企画,被写体との交渉,場所の設営等を,被告の発案ないし費用負担で行ったとしても,これらは,被告新聞へ記事を掲載するための準備行為であって,そもそも被告が行うべきものである。したがって,これらを被告が行うことで,被告への著作権の譲渡が裏付けられるわけでもない
() 撮影後の状況(トリミング等)について
 
被告新聞への掲載にあたっては,原告P1らが撮影した写真に,被告によるトリミングが行われているところ,トリミングの可否や方法等は,被告に任されていたと認められる。
 しかしながら,トリミングは,新聞掲載のために必要な作業であるところ,原告P1らは,新聞掲載の目的で撮影を行っていたため,それに必要な限度において改変を承諾していたに過ぎないといえ,被告の判断でトリミングが行われていることにより,被告への著作権の譲渡が裏付けられるとはいえない
() 対価の支払形態について
 写真の著作権の譲渡にあたっては,通常は,撮影者や被写体が誰であるか,希少性,芸術性などの要素をもとに,写真毎に対価の算定が行われるものである。
 
しかしながら,本件で被告が支払った対価は,1作業あたりで計算され,交付されたフィルムの本数や写真の枚数,被告新聞への掲載枚数などとは無関係に,被告の規定に基づいて決定されている。また,前記のとおり,被告新聞は,日々の出来事を報道することが主たる目的の日刊新聞であるから,同一の写真について,複数回にわたって掲載したり,一定期間継続して掲載することは,通常は予定していない。
 そのため,依頼した対象物が依頼した意図に沿って撮影されていれば,通常は依頼の目的を達成するのであり,それ以上に,写真の出来栄えや希少価値を考慮して,対価を支払っていたわけではない。
 これらのことからすれば,写真撮影にあたり被告が支払っていた対価は,主として撮影作業に対する報酬であり,当該写真に係る著作権譲渡の対価ではないといえる
() 権利主張の不存在について
 写真の著作権の帰属主体は,当該写真を保有する主体とは必ずしも一致するものではなく,本件写真について,被告がフィルムを保有したままになっていることは,写真の著作権が被告に移転したことを意味するものではない
 
特に本件では,前記のとおり,原告P1らが,本件写真の著作権を有していても,当該写真は,被告新聞による報道のために撮影されたものであり,原告らが,自由に使用収益の対象とすることができるわけではないから,原告P1らが,本件写真について,フィルムの返還を強く求めることがなかったり,著作権が自己に帰属すると主張しなかったりしても,不自然ではない。











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