著作権重要判例要旨[トップに戻る]







氏名権侵害による一般不法行為を認めた事例
「中国法人ウェブページ事件」
平成190726日大阪地方裁判所(平成18()4490 

【コメント】本件は、中国法人の日本語版ウェブサイトのウェブページに、原告らが同法人の代理店であるかのような表示がなされ、さらに同ページに原告会社が開設するウェブサイトにリンクを設定された原告らが、上記中国法人及び被告による上記行為は原告らの名誉及び信用を毀損する共同不法行為を構成するとともに、原告会社との関係では不正競争防止法2114号所定の不正競争行為に該当し、原告Xとの関係では氏名権侵害の不法行為も構成すると主張して、原告会社は民法709条の不法行為又は不正競争防止法4条に基づき、原告Xは民法709条の不法行為に基づき損害賠償を請求し、併せて民法723条又は不正競争防止法14条に基づき被告ウェブサイトのトップぺージへの謝罪広告の掲載を求めた事案です。 

 当事者間に争いのない事実等
(1) 当事者
 
原告会社は,美容機器の販売及びエステティックサロンの経営等を目的とし,「エステクリス」の屋号(なお,後に「エフシーエスクリス」という屋号に変更した。原告会社代表者尋問の結果)でエステティックサロン及びメイクスクールを経営する株式会社である(以下,原告会社の経営する上記エステティックサロン及びメイクスクールを併せて「エステクリス」という。)。
 原告Xは,原告会社の取締役であり,エステクリスにおいて,美容技術講師として美容業者へのメイク技術指導を行っている者である。
 被告は,美容機器の販売,美容室の経営等を目的とする株式会社であり,原告会社と競争関係にある。
(2) ウェブページの表示内容
 中国法人北京泰富集団有限公司(国内では「北京トップレーザー有限公司」と称している。以下「北京泰富」という。)のウェブサイトのトップページから「日本語」の項目をクリックして表示されるトップページの「日本大阪子会社と代理店…アドレスと連絡方法」の項をクリックすると更に表示されるウェブページ(URL…。以下「本件ウェブページ」という。)に,別紙のとおり,「日本大阪子会社と代理店…アドレスと連絡方法」,「トップグルプの子会社と代理店」との表示がなされ,この表示の下部に,被告の社名,連絡先住所及び電話番号等と,エステクリスの名称,連絡先住所及び電話番号等が並べて掲載され,エステクリスの名称上部に原告Xの氏名を一部誤記した「Y」との氏名も表示され,この氏名の表示にエステクリスのウェブサイトへのリンクが設定されていた(以下,本件ウェブページ上にこれらの表示をする行為及びリンクを設定する行為を併せて「本件表示行為」という。)。
 
(略)
 原告Xの被告に対する請求について
(1) 本件表示行為が原告Xの名誉及び信用毀損行為及び氏名権侵害行為に該当するか否かについて
 
本件表示行為における原告Xの名の表記には誤字があるものの,そのリンク先であるエステクリスのウェブサイトと併せて見れば,読み手は原告Xの氏名を表記しているものと理解するものと認められる。
 
そして,本件表示行為が原告Xの名誉・信用を毀損するものであるかを検討するに,原告Xは,アートメイク指導の専門家として,エステクリスにおいて自ら指導に当たりながら,セミナーの受講生に対して原告会社が輸入する美容機器を販売する業務にも携わっており,その際,受講生は指導を担当した原告Xが推奨しセミナーで使用した美容機器であることを主たる動機として原告会社から美容機器を購入するものである。このように,原告Xは,自らが有する信用を利用して美容機器の販売に携わっている(なお,美容業界新聞における原告会社及びエステクリスの広告には,美容機器の製造メーカー名を表示していない。)。それにもかかわらず,本件表示行為によって,あたかも原告Xが北京泰富グループの代理店であるかのように本件ウェブページに表示されたものであり,既に一定の信用を得ている原告Xが,同原告よりも知名度や信用力において劣る北京泰富グループの系列下に入りその従属的地位にあるような印象を与えることになる。かかる意味で,本件表示行為は,原告Xの経済面における社会的信用を低下させる行為であるということができる
 
したがって,本件表示行為は,原告Xに対する名誉・信用毀損の不法行為に該当する
 
さらに,原告Xは,本件表示行為により,誤った字を用いて氏名が無断で表示されたことをもって,氏名権の侵害であると主張するので検討する。
 氏名は,社会的にみれば,個人を他人から識別し特定する機能を有するものであるが,同時に,その個人からみれば,人が個人として尊重される基礎であり,その個人の人格の象徴であって,人格権の一内容を構成するものというべきである(最高裁昭和63216日第三小法廷判決)。したがって,他人の氏名を無断で使用し,真実に反する記載をすることは,日記等の他人の閲覧を予定しない個人的なものにおいて使用される場合を除き,原則として,それ自体で人格権の一内容を構成する氏名権を侵害するものと解するのが相当である。
 
本件表示行為は,原告Xの氏名を無断で使用し,かつ,原告Xが北京泰富グループの代理店であるという虚偽の事実を記載するものであるから,原告Xの氏名権を侵害するものというべきである。なお,原告Xの氏名の一部を誤記している点については,被告及び北京泰富が害意をもって不正確な表記をしたとまで認めることはできず,単なる誤記であると認められるに止まることによれば,それ自体を氏名権を侵害する違法な行為であるまでいうことはできない。
 以上によれば,本件表示行為は,原告Xの名誉・信用を毀損し,かつ,氏名権を侵害する不法行為に該当する。
(2) 共同不法行為の成否
 被告は,北京泰富と共に本件表示行為をしたものであり,原告Xに対し共同不法行為責任を負う。その理由は,前記と同一である。
(3) 原告Xに生じた損害について
 
被告は,前記のとおり,本件ウェブページに本件表示行為をすることによって,原告Xが北京泰富グループの代理店であると誤認されるおそれを生じさせるとともに,原告Xの氏名権を侵害したものである。
 本件表示行為は,あたかも原告Xが北京泰富グループの代理店としてその系列下にあり,これに従属する地位にあるかのように表示するものであって,原告Xの名誉・信用を毀損する一方で,いわば原告Xが北京泰富製の美容機器にお墨付きを与えたような印象を与えるものであって,原告Xの信用を利用するものということが可能である。しかし,原告Xは,メイクスクールで使用する機器については慎重に試験した上で使用する機器を選定していることによれば,同原告が北京泰富製の美容機器一般に関してかかる表示をされることを許容することは到底想定できない。以上のほか,原告Xが一部の美容業者には知られた存在であること,本件ウェブページは誰でも閲覧できるものであり,被告が営業活動をする際に顧客に見せていたこと,その他本件に顕れた一切の事情を考慮すると,原告Xがその名誉・信用を毀損され,かつ氏名権を侵害された無形損害に対する賠償額としては,40万円をもって相当とするべきである。
 
なお,原告らは,被告に対し,被告ウェブサイトのトップページに,別紙記載の謝罪文を投稿する旨の謝罪広告掲載請求をする。しかし,本件ウェブページが平成1832日には削除されており,その後相当程度の時間が経過していること,現時点においては原告X及びエステクリスが北京泰富の代理店であると問い合わせる者もいないことなどの事情によれば,現時点(口頭弁論終結時点)において原告らに無形損害に対する賠償のみでは填補できない名誉・信用の低下があるとはいい難い。よって,原告らの名誉を回復する処分として,被告に謝罪広告の掲載を命ずる必要はない。











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