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プログラムの著作物の侵害性が問題となった事例(8)
「携帯配信用コンテンツ『恋愛の神様』事件」平成230228日知的財産高等裁判所(平成22()10051 

 プログラムの創作性及び翻案権侵害等の有無について
ア 著作権法が保護の対象とする「著作物」であるというためには,「思想又は感情を創作的に表現したもの」であることが必要である(同法211号)。思想又は感情や,思想又は感情を表現する際の手法やアイデア自体は,保護の対象とならない。例えば,プログラムにおいて,コンピュータにどのような処理をさせ,どのような指令(又はその組合せ)の方法を採用するかなどの工夫それ自体は,アイデアであり,著作権法における保護の対象とはならない
 また,思想又は感情を「創作的に」表現したというためには,当該表現が,厳密な意味で独創性のあることを要しないが,作成者の何らかの個性が発揮されたものであることが必要である。この理は,プログラムについても異なることはなく,プログラムにおける「創作性」が認められるためには,プログラムの具体的記述に作成者の何らかの個性が発揮されていることを要すると解すべきである。もっとも,プログラムは,「電子計算機を機能させて一の結果を得ることができるようにこれに対する指令を組み合わせたものとして表現したもの」(同法2110号の2)であり,コンピュータに対する指令の組合せという性質上,表現する記号や言語体系に制約があり,かつ,コンピュータを経済的,効率的に機能させようとすると,指令の組合せの選択が限定されるため,プログラムにおける具体的記述が相互に類似せざるを得ず,作成者の個性を発揮する選択の幅が制約される場合があり得る。プログラムの具体的表現がこのような記述からなる場合は,作成者の個性が発揮されていない,ありふれた表現として,創作性が否定される。また,著作物を作成するために用いるプログラム言語,規約,解法には,著作権法による保護は及ばず(同法103項),一般的でないプログラム言語を使用していることをもって,直ちに創作性を肯定することはできない
 
さらに,後に作成されたプログラムが先に作成されたプログラムに係る複製権ないし翻案権侵害に当たるか否かを判断するに当たっては,プログラムに上記のような制約が存在することから,プログラムの具体的記述の中で,創作性が認められる部分を対比し,創作性のある表現における同一性があるか否か,あるいは,表現上の創作的な特徴部分を直接感得できるか否かの観点から判断すべきであり,単にプログラム全体の手順や構成が類似しているか否かという観点から判断すべきではない
 上記の観点に照らして,以下,個別的に検討する。
イ 個別的判断
 
(星座を求めるプログラム)
 
「A恋愛の神様」のプログラムの一部を構成する星座を求めるプログラムは,生年月日の月と日の値を受け取り,星座を示す整数値を返す関数を,switch文とif文を用いて月ごとに日付に応じた値を返すように切り換えることにより表現するものである。同プログラム中の,生年月日の月と日によって決定される星座を求めるに当たり,上記の計算や処理を行う点は,作成におけるアイデアであるといえる。「A恋愛の神様」のプログラムは,上記アイデアを実現するために,基本的な命令であるswitch-caseif-else文を組み合わせて単純な条件分岐をする,一般的,実用的な記述であり,その長さも短いものであるから,作成者の個性が発揮された表現と評価することはできない。なお,プログラムの作成当時,多用されていなかったPHP言語を使用したという事情があるからといって,作成者の個性を認める理由とはならない。
 
したがって,「A恋愛の神様」の星座を求めるプログラムは,ありふれた表現として,創作性がなく,著作物とはいえない。
 (日干計算のプログラム)
 
「A恋愛の神様」のプログラムの一部を構成する日干計算のプログラムは,年,月,日の値を受け取り,1月と2月を前年の13番目,14番目の月として取り扱う処理の後に,年を5倍したものと日の値とを加算し,閏年数等に基づく補正を行った上で10で割った余りの整数値を求め,この整数値を,干支を示す数値として返す関数を,if文と算術演算子を用いて表現するものである。干支を示す数値を求めるために,上記の計算や処理を行うことは,その際にZellerの公式を応用することも含めてアイデアであるといえる。同プログラムは,上記アイデアを実現するための解法を,計算式によりそのまま記述したものであり,その長さも極めて短いものであるから,作成者の個性が発揮された表現とはいえない。また,PHP言語を使用したという事情があるからといって,作成者の個性を認める理由とはならない。
 
したがって,「A恋愛の神様」の日干計算のプログラムは,ありふれた表現として,創作性がなく,著作物とはいえない。
 
(九星を求めるプログラム)
 「A恋愛の神様」のプログラムの一部を構成する九星を求めるプログラムは,年,月,日の値を受け取り,それぞれ38個と3個の要素を有する2つの整数値配列d25,d23を参照してshunbunという変数に435のいずれかを格納した上で,月の値が1又は2で,日がshunbunより小さい場合にoffという変数に−1(補正値)を格納し,年の値とoffを用いた特定の算術演算の結果である整数値を九星を示す数値として返す関数を,for文,if文,算術演算子等を用いて表現するものである。九星を求めるための特定の算術演算の結果を用いることはアイデアであるといえる。同プログラムは,上記アイデアを実現するために,上記のような算術演算の解法をそのまま記述したものにすぎず,その長さも短いものであるから,作成者の個性が発揮された表現とはいえない。また,PHP言語を使用したという事情があるからといって,作成者の個性を認める理由とはならない。
 
したがって,「A恋愛の神様」の九星を求めるプログラムは,ありふれた表現として,創作性がなく,著作物とはいえない。
 (年月日を得るプログラム)
 
「A恋愛の神様」のプログラムの一部を構成する年月日を得るプログラムは,文字列を受け取り,文字列からの先頭の4文字を整数値としたもの,次の2文字を整数値としたもの,さらにその次の2文字を整数値としたものを,年,月,日に対応する3個の要素を有する整数値配列として返す関数である。このプログラムは,文字列を,プログラム言語が用意する文字列用関数を用いて変数に設定するという単純な内容の構文にすぎず,その長さも極めて短いものであるから,作成者の個性が発揮された表現とはいえない。また,PHP言語を使用したという事情があるからといって,作成者の個性を認める理由とはならない。
 
したがって,「A恋愛の神様」の年月日を得るプログラムは,ありふれた表現として,創作性がなく,著作物とはいえない。
 (画像タグを生成するプログラム)
 「A恋愛の神様」のプログラムの一部を構成する画像タグを生成するプログラムは,画像タグに用いる画像を示すパスとファイル名を受け取り,HTMLimgタグに含めて出力されるべき画像を指定する情報を,これらのパスとファイル名の間の部分にユーザーがあらかじめ設定した情報に基づいて生成された文字列と連接して生成する機能を有する関数である。複数用意された画像のうち,どの画像を出力するかを決定し,かつ,ユーザーが求めれば,カラー端末でも白黒画像を表示することを可能とするために,上記の関数を用いることはアイデアであるといえる。同プログラムは,上記のアイデアを実現するための関数を,短く,機能的に記述したものにすぎないから,アイデア自体に個性的な部分があるとしても,プログラムの表現において作成者の個性が発揮されたものとはいえない。また,PHP言語を使用したという事情があるからといって,作成者の個性を認める理由とはならない。
 したがって,「A恋愛の神様」の画像タグを生成するプログラムは,ありふれた表現として,創作性がなく,著作物とはいえない。
 
(守護星を求めるプログラム)
 
「A恋愛の神様」のプログラムの一部を構成する守護星を求めるプログラムは,守護星のデータを収めたテーブル,年,月,日の値を受け取り,年,月,日の値を所定の整数値に変換し,この整数値を用いて守護星のデータを収めたテーブルを検索して所定の整数値を求め,求めた整数値から守護星を示す数値として返す関数を,for文,if文を用いて表現したものである。このプログラムを使用する相性占いをコンテンツに含めることや,守護星を求めるために上記関数を用いることはアイデアであるといえる。同プログラムは,上記のアイデアを実現するための関数を,短く,機能的に記述したものにすぎないから,「aquarius」を初期値とすることを含め,アイデア自体に独創的な部分があるとしても,プログラムの表現において作成者の個性が発揮されたものとはいえない。また,PHP言語を使用したという事情があるからといって,作成者の個性を認める理由とはならない。
 
したがって,「A恋愛の神様」の守護星を求めるプログラムは,ありふれた表現として,創作性がなく,著作物とはいえない。
 (メインメニュープログラムのモジュールの選択・配列)
 
原告が,創作性の根拠として主張する点は,モジュールの構成,ユーザー関数の定義,タイトルロゴ画像を表示させること,メインメニュープログラムからメニュー項目の一つを選択し,「0〔恋神メニューへ〕」を選択することで回帰的にメインメニュープログラムが再実行されるように記述されていること,メニューを一層化していること,占いの種類及び占い事項の中から一定のものを選択していること,占い以外の項目としてプレゼント等を選択していることなどであるが,これらは,アイデアというべきである。同プログラムに,表現上の特徴部分はない。
 
したがって,著作物とはいえない。
 
(占いサンプルに関するモジュールの選択・配列)
 
原告は,「A恋愛の神様」のプログラムでは,占いサンプルを外部のデータファイルとするモジュール構成をとり,プログラム本体を簡潔にして,プログラムを読みやすくしたとして,モジュールの選択・配列に創作性があると主張するが,上記の点は,アイデアというべきである。同プログラムに,表現上の特徴部分はない。したがって,著作物とはいえない。
 
(有料会員登録に関するモジュールの選択・配列)
 
原告は,「A恋愛の神様」のプログラムでは,登録と解約を同じプロフラムで統一的に行うことで,メモリの節約と変更などの保守が容易になるような工夫をしたとして,モジュールの選択・配列に創作性があると主張するが,上記の点は,アイデアというべきである。同プログラムに,表現上の特徴部分はない。したがって,著作物とはいえない。
 
(メインメニュープログラム)
 
原告は,「A恋愛の神様」のプログラムの一部を構成するメインメニュープログラム(index.php3)は,「A−1旧恋愛の神様」のメインメニュープログラム(main.c)との類似する部分(各種初期化処理,メニュー表示データの定義,表示開始,ロゴ画像の表示,メニュー表示,表示終了)について,その表現に創作性があると主張する。しかし,「A恋愛の神様」中の原告の主張に係る部分は,創作性のある部分といえないのみならず,前者と後者とは,その表現上の本質的な特徴部分において共通するものではない。
 
したがって,原告の主張は認められない。
 
(「今月の運命」のプログラム)
 
原告は,「A恋愛の神様」のプログラムの一部を構成する「今月の運命」のプログラム(destiny.php)は,「A−1旧恋愛の神様」の「今月の運命」のプログラム(destiny.c)との類似する部分(各初期化処理,非会員へのメッセージ,占いデータの読み込み処理,表示開始処理,登録ユーザーか未登録ユーザーかを見分ける処理,生年月日が入力された後の処理,生年月日の入力フォームを表示する処理,占い結果を表示する処理)につき,その表現に創作性があると主張する。しかし,「A恋愛の神様」中の原告の主張に係る部分は,創作性のある部分とはいえないのみならず,前者と後者とは,その表現上の本質的な特徴部分において共通するものではない。
 したがって,原告の主張は認められない。
 (「相性占い」のプログラム)
 原告は,「A恋愛の神様」のプログラムの一部を構成する「相性占い」のプログラム(aisho.php)は,「A−1旧恋愛の神様」の「相性占い」のプログラム(aisho.c)との類似する部分(各種初期化処理,非会員へのメッセージ,占いデータの読み込み,表示開始,登録ユーザーか未登録ユーザーかを見分ける処理,相手の生年月日が入力された後の処理,相手の生年月日の入力フォームを表示する処理,占い前にデータを取得する処理,男女の生年月日が入力された後の処理,男女の生年月日の入力フォームを表示する処理,占い結果表示の処理,表示終了)につき,その表現に創作性があると主張する。しかし,「A恋愛の神様」中の原告の主張に係る部分は,創作性のある部分とはいえないのみならず,前者と後者とは,その表現上の本質的な特徴部分において共通するものではない。(なお,「相性占い」のプログラムの中に存する「守護星を求めるプログラム」については,上記で判示したとおりである。)。
 
したがって,原告の主張は認められない。











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