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一般不法行為の成否-否認事例(18)-
「小説『イッツ・オンリー・トーク』脚本出版妨害禁止請求事件」平成220910日東京地方裁判所(平成21()24208 

【コメント】本件は、被告の著作に係る小説「イッツ・オンリー・トーク」(「本件小説」)を原作とする映画の製作のために原告Xが執筆した脚本(「本件脚本」)を原告社団法人シナリオ作家協会(以下「原告協会」という。)の発行する「年鑑代表シナリオ集」に収録、出版しようとしたところ、被告から拒絶されたが、被告の拒絶は「一般的な社会慣行並びに商習慣等」に反するもので、上記小説の劇場用実写映画化に関して締結された原作使用許諾契約の趣旨からすれば、本件脚本を「年鑑代表シナリオ集」に収録、出版することについて原告らと被告との間に合意が成立したものと認められるべきであるとして、原告らが、被告に対し、上記合意に基づき、本件脚本を別紙記載の書籍(「本件書籍」)に収録、出版することを妨害しないよう求めるなどした事案です。 

 不法行為の成否及び原告らの損害額について
 
前記に説示したとおり,被告に原告ら主張の許諾義務があるということはできず,また,本件脚本の利用について共同著作物に関する著作権法653項の規定が類推適用されるということもできない。そうすると,二次的著作物である本件脚本の利用に関し,原著作物の著作者である被告は本件脚本の著作者である原告Xが有するものと同一の種類の権利を専有し,原告Xの権利と被告の権利とが併存することになるのであるから,原告Xの権利は同原告と被告の合意によらなければ行使することができないと解される(最高裁平成131025日第一小法廷判決参照)。したがって,被告は,本件脚本を「年鑑代表シナリオ集」に収録,出版することについて,原著作物の著作者として諾否の自由を有しているというべきであり,その許諾をしなかったとしても,原著作物の著作者として有する正当な権利の行使にすぎない
 原告らは,被告が本件映画の製作や,そのDVD化,テレビ放送等については許諾しているのに,本件脚本の出版についてのみ許諾をしないのは不当である旨の主張をする。しかしながら,被告が本件映画の製作を許諾した経緯は前記に認定したとおりであり,要するに,被告は,本件映画のクランク・イン直前に,本件脚本による映画化の許諾に係る最終決断を求められたことから,多数の関係者に大きな混乱を生じさせることを回避するために,不承不承ながらこれを許諾したというものであって,本件脚本の内容に全面的に承服した結果ではない。また,本件映画のDVD化やテレビ放送の許諾についても,飽くまでも映像作品(映像化)に関するものであり,これを本件脚本の出版(活字化)の許諾と必ずしも同列に論じることはできない。むしろ,前記に認定したとおり,被告は,本件脚本が原作の趣旨を逸脱するものであり,原作者である被告の意に沿わないものであることについて,当初から一貫した態度を示していたのであるから,原告らにおいて,被告が本件映画の製作やDVD化,テレビ放送を許諾したことによって,本件脚本の出版についても許諾を得られるとの期待を抱いたとしても,かかる期待は事実上のものにすぎず,法律上保護されるものとはいえない
 
以上のとおり,被告が本件脚本を「年鑑代表シナリオ集」に収録,出版することを許諾しなかったことが,原告らに対する関係で不法行為を構成するとは認められない。











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