著作権重要判例要旨[トップに戻る]







一般不法行為の成否-否認事例(19)-
「月刊誌『月刊ネット販売』事件A」平成220617日東京地方裁判所(平成21()27691/平成230322日知的財産高等裁判所(平成22()10059 

【コメント】本件は,原告図表について著作権を有すると主張する原告が、本件書籍の執筆者である被告に対し、@本件書籍中に掲載された被告図表は各原告図表の複製物に当たり、被告が本件書籍中に各被告図表を掲載した行為は、各原告図表に係る原告の著作権(複製権)を侵害する行為であるなどとして、損害賠償を求めるとともに、A被告が、本件書籍の表題中に「カラクリ」という言葉を使用したことにより、原告の名誉・信用が毀損されたなどとして、不法行為による損害賠償を求めた事案です。
 なお、【】内は、控訴審で改められた箇所です。 


 被告が,本件書籍の表題中に「カラクリ」という言葉を使用したこと等が,原告の名誉・信用を毀損する不法行為であるといえるかについて
 原告は,被告が,その執筆した本件書籍の表題に「カラクリ」という言葉を使用したことにより,原告の通信販売業界からの信用を著しく毀損し,また,原告が「カラクリ」と表されるような,表沙汰にはし難い暗部を抱える業界と密接な関連を有しているとの印象を与えて,原告の社会的評価を低下させたとして,被告の上記行為が原告に対する不法行為に該当する旨主張する。
 表題を含め書籍の表紙の記述の意味内容が他人の客観的な信用や社会的評価を低下させるものであるかどうかは,当該記述についての一般読者の普通の注意と読み方を基準として解釈した意味内容に従って判断すべきである。
 …によれば,「からくり」とは,「@糸のしかけであやつって動かすこと。また,その装置。転じて,一般に,しかけ。Aしくんだこと。計略。たくらみ。B絡繰人形に同じ。C絡操眼鏡の略。Dやりくり算段。」(広辞苑第6版),「@糸・ぜんまい・水などの動力を利用して,人形や器物を動かす仕掛け。また,その仕掛けを使った見せ物。A機械などの動く原理。また,仕組み。仕掛け。B計略。たくらみ。」(大辞林第3版),「@ちょっと見には分からない複雑な仕掛けによって内部から動きを操作する装置,A普通では不可能と思われる事をなんとかごまかしてつじつまだけはうまく合わせておくやり方。」(新明解国語辞典第5版)といった意味を有することが認められる。
 また,本件書籍の表紙カバーの表面上部には,「図解入門業界研究」,「最新通販業界の動向とカラクリがよ〜くわかる本」と,表面下部には,「業界人,就職,転職に役立つ情報満載」,「発展を続ける通販業界がわかる最新トピック満載!」,「急成長を遂げるネット通販の戦略とは!」,「カタログ・TVなど広告媒体がわかる!」,「アマゾンなどの最新ビジネスモデル紹介!」,「健康食品・化粧品通販,成長の秘訣とは!」,「通販に関わる法規制強化の最新事情解説!」と,表面の下端部には,「渡辺友絵 著」と,それぞれ記載されており,カバー背表紙には,「図解入門業界研究」,「最新通販業界の動向とカラクリがよ〜くわかる本」と記載されている。
 そして本件書籍では,「カラクリ」という言葉は,「通販業界の動向」という言葉と一緒になって表題となっている上,カバーにおいて「図解入門業界研究」,「業界人,就職,転職に役立つ情報満載」,「発展を続ける通販業界がわかる最新トピック満載!」,「通販に関わる法規制強化の最新事情解説!」というように,通販業界について解説・情報提供することを意味する文言と並んで使われていることからすれば,一般読者は,「カラクリ」という言葉を,一般人には知られていない「しかけ,仕組み」といった意味で理解した上,本件書籍は通販業界の最新の動向やしかけ・仕組みについて,業界人でのみ知られている情報を提供し解説することを内容とするものと受け止めると認めることができる
 この点,控訴人は,「カラクリ」という言葉は「他者をあざむく計略や謀略」といった悪印象を与える意味に理解される旨主張するところ,例えば証拠(週刊現代2010109日号)の表紙及び62頁〜63頁に「買ってはいけない人気テレビショッピングの『からくり』」等と記載されているように,「買ってはいけない」というテレビショッピングに対する否定的な文言と共に,そのような趣旨の文脈の中で使用されるような場合には,控訴人の主張するような悪印象を与えるものとして使用される場合もある。しかし,本件書籍の表紙の上記認定の記載からすれば,「カラクリ」という言葉が通販業界に対する否定的な文脈の中で使用されているとは認められないのであって,「からくり」という言葉が,場合によっては上記雑誌のように一般読者(ないし視聴者)に否定的な意味を与えるものとして理解される場合があるからといって,本件書籍における「カラクリ」という言葉が控訴人の主張するような悪印象を与えるものと一般読者が受け止めると認めることはできない
 また,本件書籍の表題に「カラクリ」という言葉が使用されていることにつき,通信販売業界の業者らに不快と感じたり不適切であると考える者がいるとしても,それは,自身だけが不快と感じている実態を踏まえてのうがった印象にすぎず,一般読者の普通の注意と読み方を基準として解釈した意味内容に従って判断した場合には,本件書籍の表題が控訴人の主張するような悪印象を与えるものと認められないことは前記のとおりである。
 
したがって,控訴人が,その執筆した本件書籍の表題に「カラクリ」という言葉を使用したことが,控訴人の信用を毀損し,あるいは控訴人の社会的評価を低下させる不法行為であると認めることはできない。】











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