著作権重要判例要旨[トップに戻る]







独占的利用権許諾契約の成否と解釈が問題となった事例
「円谷プロ国際契約事件B」平成220930日東京地方裁判所(平成21()6194 

【コメント】被告は、「本件著作物」の著作権者です。参加人は、@脱退原告は、後記契約に基づき、被告から、本件著作物の日本以外の国における独占的利用権(以下「本件独占的利用権」という。)の許諾を受けた、A被告は、日本以外の国において、第三者に対し、本件著作物や、同著作物の制作後に被告が制作したいわゆるウルトラマンキャラクターの登場する映画作品及びこれらを素材にしたキャラクター商品の利用を許諾している、B上記Aの被告の行為は、上記@の許諾契約に違反するものであり、被告は、脱退原告に対し、上記契約の債務不履行に基づく損害賠償義務ないし上記第三者から得た許諾料につき不当利得返還義務を負う、C参加人は、脱退原告から、上記Bの損害賠償請求権及び不当利得返還請求権を譲り受けた、と主張しています。
 本件は、参加人が、被告に対し、上記損害賠償請求権の一部請求又は上記不当利得返還請求権の一部請求として、所定金額の支払を求めた事案です(本件は、脱退原告が被告に対して提起した平成18年…号損害賠償請求事件に参加人が独立当事者参加した訴訟で、脱退原告は、本件訴訟から脱退しました)。

 本件における主要な事実関係は、概ね次のとおりです。

参加人は、舞台・映像関係、キャラクター等の企画デザイン等を目的とする株式会社として設立登記のされた日本法人である。

被告は、劇場用映画及びテレビ用映画の制作供給等を業とする日本法人である。被告は,本件著作物について著作権を有している。

脱退原告は、タイ王国人である。脱退原告は、被告から本件著作物につき本件独占的利用権の許諾を受けたと主張している。訴外Bは、タイ王国人であり、脱退原告の子である。

脱退原告は、「本件契約書」を所持している。本件契約書には、円谷プロド・アンド・エンタープライズ・カンパニー・リミテッド(Tsuburaya prod.and Enterprise Co.,Ltd)がチャイヨ・フィルム・カンパニー・リミテッド(Chaiyo Film Co.,Ltd)の社長である脱退原告に対し、昭和5134日付けで、日本を除くすべての国において、期間の定めなく、独占的に、本件著作物について以下の権利等を許諾する旨の記載がある
 @ 配給権(Distributing Right)(第33.1
 
A 制作権(Production Right)(第33.2
 
B 複製権(Reproduction Right)(第33.3
 
C 著作権(Copyright)(第33.4
 
D 商標(Trademark)(第33.5
 
E ラジオ・テレビなどのあらゆるマスメディアを介した放送及び全ての新聞による広告権(Broadcasting through any mass media such as Radio, Television, etc. and the right to advertise in any newspaper.)(第33.6
 
F 本件著作物の制作において使用されたオリジナルのモデル及びキャラクターについて、商業上の目的のためにする複製(Reproduction of all models and characters used in the production of the films mentioned in article 1 under the original character by any material and in any form for commercial purposes.)(第33.7
 
G 上記権利の第三者への譲渡(Transfer the rights mentioned above to the third person.)(第33.8

被告は、平成97月、脱退原告を被告として、東京地方裁判所に対し、脱退原告が日本以外の国において本件著作物についての著作権及び利用権を有しないことの確認等を求める訴えを提起した(以下「東京訴訟」という。)。東京訴訟では、本件契約の成否(本件契約書は真正に成立したものか)及び本件契約の内容が主たる争点となり、被告及び脱退原告は、それぞれ上記と同様の主張をした。東京地方裁判所は、平成15228日、本件契約書は真正に成立したものと認められるが、同契約書は、全体としては、本件著作物についての独占的な利用権につきライセンスを付与するものであると認められ、著作権の譲渡契約であるとは解されないことなどを理由に、被告の請求のうち、脱退原告が本件著作物についての著作権を有しないことの確認を求める部分は認容したものの、脱退原告が本件著作物についての利用権を有しないことの確認を求める部分等については、これを棄却する旨の判決(以下「東京地裁判決」という。)を言い渡した。また、東京訴訟において、脱退原告は、本件契約により、被告から脱退原告に対し、本件著作物についての著作権だけでなく、ウルトラマンシリーズの将来の作品の著作権ないし独占的利用権についても与えられたものであると主張したが、東京地裁判決は、本件契約書は第1条によりライセンスの対象となる映画を本件著作物に特定していることなどから、上記脱退原告の主張は認められないとした。東京地裁判決に対し、被告及び脱退原告は、いずれも東京高等裁判所に控訴した。控訴審において、脱退原告は、主位的反訴請求として、脱退原告が日本以外の国において本件著作物の著作権を有することの確認を求め、予備的反訴請求として、脱退原告が本件独占的利用権を有することの確認を求めた。東京高等裁判所は、平成151210日、東京地裁判決とほぼ同様の理由により、被告及び脱退原告の控訴並びに脱退原告の主位的反訴請求をいずれも棄却し、脱退原告の予備的反訴請求を認容する旨の判決(以下「東京高裁判決」という。)を言い渡した。被告は、東京高裁判決に対して上告及び上告受理の申立てをした。最高裁判所は、平成16427日、同上告を棄却し、本件を上告審として受理しない旨の決定をした。これにより,東京高裁判決は、確定した。

被告は、平成912月、タイ王国の国際貿易・知的財産中央裁判所に対し、脱退原告及びBほか2名を相手方として、脱退原告は本件著作物についてタイ王国における著作権を有しておらず、被告から利用の許諾も得ていない、本件契約書は脱退原告が偽造したものであるなどと主張して、本件著作物についてのタイ王国における脱退原告ほか3名の著作権侵害行為の差止め及び損害賠償等を求める訴えを提起した(以下「タイ訴訟」という。)。国際貿易・知的財産中央裁判所は、平成1244日、刑事及び民事両事件についての被告の告訴及び請求を却下する旨の判決をした。被告は、上記判決を不服とし、タイ王国の最高裁判所に上告した。タイ王国最高裁判所の国際貿易・知的財産部は、平成2025日、本件契約書は偽造されたものと認められるとして、脱退原告に対し、本件契約に基づく権利主張及び本件契約の使用の禁止並びに被告の本件著作物に関する著作権の侵害等を理由とする損害賠償金の支払等を命じ、脱退原告の反訴請求(脱退原告が日本以外の国において本件著作物についての著作権を有することの確認等を求めたもの)を棄却する旨の判決(以下「タイ最高裁判決」という。)を言い渡した。

参加人は、平成201118日、設立の登記がされた株式会社である。参加人の取締役は、脱退原告の知人であるD及びBらであり、Dが同社の代表取締役である。 


 [本件契約の成否,効力及び存否について]
ア 本件契約の成否及び効力について
 脱退原告及び参加人と被告との間には,本件契約書が被告により真正に作成されたものであるか(本件契約の成否)及び本件契約の効力について争いがあり,被告は,本件契約書は偽造されたものであるから本件契約は成立しておらず,また,本件契約を締結するに際して被告の取締役会の決議がされていないから本件契約は無効であると主張する。
 しかしながら,…によれば,@被告は,被参加事件の訴えに先立ち,脱退原告に対して東京訴訟を提起したこと,A同訴訟においても,本件契約の成否及び効力が主たる争点となり,被告は,本件契約書は偽造されたものであるから本件契約は成立しておらず,本件契約に際して被告の取締役会の決議はされていないから本件契約は無効であると主張したこと(なお,契約無効の主張は,控訴審において追加されたものである。),Bこれに対し,東京地裁判決及び東京高裁判決は,判決主文において脱退原告が本件独占的利用権を有することを確認し,その理由中において,脱退原告の供述等の証拠から,本件契約書は真正に成立したものであって,本件契約は成立しており,本件契約の有効性についても,代表取締役が取締役会の決議を経ないで重要な財産を処分した場合でも契約自体は原則として有効であることから,本件契約は有効である旨の判断を示したこと,C東京高裁判決は,最高裁判所により被告の上告が棄却され,上告不受理の決定がされたことにより,確定したこと,が認められる。また,本件訴訟において,被告は,本件契約書が偽造されたものであることの裏付けとして,本件契約書がCの筆跡ではない旨の筆跡鑑定結果や,本件契約書における誤記等の記載内容,被告と第三者との間で本件契約当時既に本件著作物の独占的利用権許諾契約が成立していた事実,脱退原告は本件契約成立後約20年間も被告に対して同契約に基づく権利行使をしなかった事実などを挙げるが,前掲各証拠によれば,被告はこれらと同様の主張及び証拠の提出を東京訴訟においても行っていたことが認められる。
 上記事実によれば,本件訴訟における被告の主張中本件契約の成立及び効力を争う部分は,東京訴訟における主張の実質上のむし返しというべきことが明らかである。そして,このように後訴における主張が前訴のそれのむし返しにすぎない場合には,後訴における主張は,信義則に照らして許されないものと解するのが相当である(最高裁判所昭和51930日第1小法廷判決,最高裁判所昭和52324日第1小法廷判決参照。)。
 したがって,本件訴訟においても,証拠及び弁論の全趣旨に基づき,本件契約は有効に成立したものと認めるのが相当であり,これに反する被告の主張は理由がないというべきである。
イ 本件契約の存否について
 被告は,仮に,本件契約が有効に成立していたとしても,同契約は,当時Cないし被告が脱退原告に対して負っていた総額11万米ドルの支払債務の返済を担保するためにされたものであるから,脱退原告が本件契約後に行った本件著作物に関するライセンス事業により上記債権を回収したことによって,本件契約は終了したと主張する。
 しかしながら,前記認定のとおり,被告は本件契約を締結するに当たって本件契約書を作成したものであるから,本件契約の内容については本件契約書の記載に従って定められたものと解するのが相当であるところ,本件契約書には,被告の上記主張に沿う記載は何ら存在しない。かえって,本件契約書には,「私,Cは,第1条記載の全ての動画及び映画のライセンス付与について,既に全額を受領済みであることを本契約により宣言し,ここに株式会社円谷プロド・アンド・エンタープライズを代表し,その社印を押印し,署名する。」との記載が存在することからすると,本件契約は,被告ないしCが,同人らの脱退原告に対する債務の支払に代えて,脱退原告に対して本件独占的利用権を許諾したものと考えるのが自然である。
 したがって,被告の主張は理由がない。

 [本件契約に基づく被告の債務の内容について]
ア 本件著作物及び旧ウルトラマンキャラクターについて
 脱退原告が本件著作物について日本以外の国における独占的利用権を有することについては,東京高裁判決により確認されている。上記利用権は,本件契約に基づいて脱退原告に付与されたものであるから,同利用権の内容については,本件契約の内容によって定まるものである。
 そこで検討するに,本件契約書は,「ライセンス付与契約書」という表題の下に,前文において,「株式会社円谷プロド・アンド・エンタープライズは,脱退原告に対し,以下の契約条項及び契約条件でライセンスを付与するものとする。」と述べた上,第1条において,本件著作物ほか3作の映画を特定し,第2条において,「契約地域及び契約期間」として,「ネガプリントを初めに制作した日から,日本を除くすべての国における,不特定期間の独占権」と記載し,第3条において,「ライセンスの範囲」として,「本ライセンス付与契約により生ずる全ての権利は,以下のものを含み,かつ,それらに限定される」とし,「配給権」(3.1),「複製権」(3.3),「第1条記載のフィルムの制作において使用された全てのモデル及びキャラクターについて,全ての素材及びあらゆる形態による,オリジナルのキャラクターに基づく商業上の目的のためにする複製」(3.7)等を列挙していることが認められる。
 上記記載に鑑みると,本件契約書は,第1条で特定した映画についての独占的な利用権を脱退原告にライセンス(許諾)するものであり,利用権の内容には,旧ウルトラマンキャラクターを素材とするキャラクター商品を複製,販売等する権利も含まれ,本件契約に基づき,被告が日本以外の国において第三者に対して本件著作物及び旧ウルトラマンキャラクターの利用を許諾することも禁じているものと認められる
 これに対し,被告は,本件契約は,脱退原告に対してマスター・ライセンシーの立場でライセンス契約を締結する権限を付与したものであり,被告が,別途マスター・ライセンシーを設定するのではなく,個別に第三者にライセンスすることまで禁ずるものではないと主張する。しかしながら,本件契約書には被告の上記主張に沿う記載は何ら存在せず,他に同主張を裏付ける証拠はないから,被告の主張は理由がない。
イ 本件著作物が制作された後に制作されたウルトラマン映画及び新ウルトラマンキャラクターについて
 参加人は,本件契約に基づき脱退原告に付与された本件独占的利用権は,本件著作物を翻案・変形した著作物(二次的著作物)を制作し,利用する独占的権利を含む(本件契約書第33.23.3)ものであり,かかる権利が本件独占的利用権に含まれないとしても,脱退原告が本件著作物ないし旧ウルトラマンキャラクターについて独占的利用権を有する以上,被告が同キャラクターに類似するキャラクターの利用を第三者に許諾してはならない義務を負うことは当然であると主張する。
 しかしながら,上記解釈は,@「Production Right」(制作権)という用語は,著作権法における用語ではなく,いわゆる翻案権は,英語では通常「adaptation」と表記されること,A本件契約書の第3条の3.7は,ウルトラマンキャラクターの利用について,「第1条記載のフィルムの制作において使用されたオリジナルのモデル及びキャラクターについて」と,許諾の対象となるキャラクターを特定して記載しており,本件著作物の二次的著作物に登場するウルトラマンキャラクターについては,許諾の対象として想定していないことがうかがえること,などの事実と相いれないものであるから,これを採用することはできない。また,本件独占的利用権の内容に本件著作物の翻案権が含まれない以上,脱退原告が本件著作物の独占的利用権を有するからといって,これにより当然に,被告が本件著作物の二次的著作物を制作したり,被告が制作した二次的著作物を利用したりすることを制限することができるものではないことは,当然である。したがって,参加人の上記主張は理由がない。

 [被告の債務不履行及び不当利得の有無について]
 本件契約に基づく被告の債務の内容については,上記で判示したとおりである。上記解釈を前提として,被告の債務不履行及び不当利得の有無について検討する。
(1) 本件ライセンス契約@について
ア 被告の債務不履行
 …によれば,被告は,平成891日,バンダイに対し,「ウルトラマン」,「ウルトラセブン」,「帰ってきたウルトラマン」,「ウルトラマンエース」,「ウルトラマンタロウ」,「ウルトラマンレオ」,「ザ・ウルトラマン」,「ウルトラマン80」,「ULTRAMAN TOWARDS THE FUTURE」,「ウルトラマン:THE ULTIMATEHERO」及び「ウルトラマンティガ」の全キャラクターの名前,ロゴ,シンボル,商標,著作権,類似品,描写及び写真について,ライセンス期間を同日から平成91231日までとして,韓国,香港,マカオ,台湾,シンガポール,マレーシア,フィリピン,タイ王国及びインドネシアにおける利用権をライセンスしたこと(本件ライセンス契約@),上記ライセンス期間は現在に至るまで更新されていること,が認められる。 

本件ライセンス契約@における対象物のうち,「ウルトラマン」,「ウルトラセブン」,「帰ってきたウルトラマン」,「ウルトラマンエース」及び「ウルトラマンタロウ」は,旧ウルトラマンキャラクターであり,同契約は韓国等の外国における上記キャラクターの利用を許諾するものであるから,被告が本件ライセンス契約@を締結し,上記ライセンス期間を更新したことは,本件契約の債務不履行に当たると認められる。
イ 脱退原告の損害
 本件契約は,本件著作物及び旧ウルトラマンキャラクターの日本以外の国における利用について,脱退原告に独占的利用権を許諾したものであり,被告が,脱退原告の許諾なくして,日本国外において上記本件著作物等の利用を許諾することについても,禁ずるものである。したがって,日本以外の国において本件著作物及び旧ウルトラマンキャラクターを利用することを希望する者は,脱退原告との間で本件著作物等の利用許諾契約を締結する以外に方法はなかったものと認められる。また,…によれば,脱退原告は,本件ライセンス契約@が締結及び更新された当時,チャイヨ社を通じて,タイ王国及び中国において,ウルトラマン映画及びウルトラマンキャラクター等に関するライセンス事業を展開していたことが認められる。
 よって,被告が本件ライセンス契約@を締結し,上記ライセンス期間を更新したことにより,脱退原告は,本件ライセンス契約@の相手方であるバンダイとの間でこれと同様の内容のライセンス契約を締結し,本件ライセンス契約@所定のライセンス料を得る機会を失ったものと認められる。
 本件ライセンス契約@のライセンス料については,全正味販売額のうち卸売価格の7.0%(ライセンシーがライセンサーに対して日本国内市場の小売価格に対しロイヤリティを支払済みである製品については,卸売価格の5.5%)と定められている(第2())ほか,上記ライセンス期間(平成891日から平成91231日まで)に適用される最低ロイヤリティ保証金を450万円とする旨が定められている(第2())。
 一方,本件における証拠を精査しても,上記の正味販売額の具体的金額を認めるに足りる証拠はないので,本件では,上記最低保証金をもって,本件ライセンス契約@により被告の得たライセンス料,すなわち脱退原告の逸失利益と認めるのが相当である。そして,上記のとおり本件ライセンス契約@はその後も更新されていると認められ,同契約におけるライセンス期間は16か月間(平成891日から平成91231日まで)であるため,平成18518日までの間に,7回の更新(平成1011日,同1151日,同1291日,同1411日,同1551日,同1691日,同1811日をそれぞれ始期とするもの。)がされたものと認められ,これらの契約に基づく最低ロイヤリティ保証金の合計額は3600万円(450万円×8)となる。また,本件ライセンス契約@の対象となるウルトラマンキャラクター11個のうち,旧ウルトラマンキャラクターは,上記のとおり5個であることが認められる。
 そこで,上記3600万円に11分の5を乗じた金額(36,000,000×5/1116,363,636(円)。ただし,1円未満切捨て。)をもって,本件契約の債務不履行に基づく脱退原告の損害と認めるのが相当である。
ウ 被告の不当利得
 本件独占的利用権は,民法703条にいう「財産」に該当し,無断実施者がこれによって「利益」を得,独占的利用権者たる他人に損失を及ぼしたときは,不当利得として同利益を返還すべき義務を負うといえる。本件では,本件契約に違反して本件ライセンス契約@を締結しライセンス料を得た被告の行為により,本件独占的利用権を有する脱退原告に損失が生じ,他方,被告に利得が生じていることは,明らかである。また,被告は,本件契約を締結しながら,同契約に違反する内容の本件ライセンス契約@を締結し,これを更新したものであるから,上記利得に法律上の原因がないことについて,悪意であったと認められる。
 よって,脱退原告は,被告に対し,上記イの損害額と同額の不当利得返還請求権を取得したものと認められる。
 これに対し,被告は,上記利得は被告が第三者との間でライセンス契約を締結した結果として得られたものであり,法律上の原因があると主張する。しかしながら,参加人が主張する利得とは,被告がライセンス料相当額の支払を免れたことであり,被告が本件独占的利用権の対象となる旧ウルトラマンキャラクターの利用を許諾した以上,脱退原告に対してライセンス料相当額の支払を免れる法律上の原因はないので,被告に利得がないとはいえず,被告の主張は理由がない。
 (略)
(5) タイ最高裁判決との関係について
 以上のとおり,被告は,本件ライセンス契約@を締結してこれを更新し,バンダイからライセンス料を得ることによって,本件契約に違反し,脱退原告に対して16363636円の損害及び損失を与えたものと認められる。
 
これに対し,被告は,タイ最高裁判決により,タイ王国において脱退原告が本件契約に基づくウルトラマン映画及びウルトラマンキャラクターの利用権を有しないことが確認され,本件契約に基づく脱退原告のいかなる権利主張も禁じられたものであるから,脱退原告は,タイ王国において過去及び将来のいかなる時点においても,ウルトラマン映画等について第三者にライセンスを付与して利益を得る機会はなかったと主張する(なお,前記のとおり,本件ライセンス契約@の対象地域にはタイ王国が含まれている。)。
 しかしながら,上記タイ最高裁判決は,本件契約書が偽造されたものであり,本件契約の成立は認められないとの判断を前提とするものであり,かかる判断は,我が国における確定判決である東京高裁判決及び本件訴訟における当裁判所の前記認定と全く相反するものである。そして,本件契約の成否及び本件契約の内容に関する当裁判所の前記認定に従えば,本件独占的利用権を有する脱退原告が,タイ王国において本件著作物ないし旧ウルトラマンキャラクターのライセンス事業を行うことは,何ら違法なものではなく,そうである以上,被告による本件ライセンス契約@の締結等により,脱退原告は上記ライセンス機会を失ったものと認めるのが相当であり,被告の上記主張は理由がない。
(6) 権利濫用の抗弁について
 被告は,本件契約はCないし被告が脱退原告に対して負っていた債務の返済を担保するためにされたものであり,同債務が返済済みであることや,上記内容のタイ最高裁判決の存在等の事情に鑑みると,本件損害賠償請求及び本件不当利得返還請求は権利の濫用に当たるとも主張する。
 しかしながら,本件契約がCらの債務の返済を担保するためにされたものとは認められないことについては,前記で認定したとおりである。また,タイ最高裁判決の存在が本件損害賠償請求及び本件不当利得返還請求が権利濫用であることを基礎付けるに足りる事実とならないことは,上記(5)に判示したところから明らかであり,被告の上記主張は理由がない。

 ⇒「控訴審」参照












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