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債権(損害賠償請求権・不当利得返還請求権)譲渡の有効性が問題となった事例
「円谷プロ国際契約事件B」平成220930日東京地方裁判所(平成21()6194 


 脱退原告は参加人に対して損害賠償請求権ないし不当利得返還請求権を有効に譲渡したかについて
(1) 債権譲渡の有無について
 …によれば,@脱退原告は,参加人に対し,平成201224日,本件独占的利用権を譲渡し,参加人の事業として本件独占的利用権に基づく事業を展開することを合意したこと,A脱退原告は,参加人に対し,平成2129日,前記の損害賠償請求権を含む,本件契約の債務不履行に基づく損害賠償請求権を譲渡し,被告に対して債権譲渡通知をしたこと,B脱退原告は,参加人に対し,遅くとも平成21622日(訴え変更申立書の作成日)までに,前記の不当利得返還請求権を含む,本件契約の債務不履行に起因する不当利得返還請求権を譲渡し,被告に対して債権譲渡通知をしたこと,が認められ,同認定を左右するに足りる証拠はない。
 これに対し,被告は,脱退原告は本件契約上のすべての権利を平成193月にBに譲渡したものであり,上記譲渡後に脱退原告と参加人との間で本件債権譲渡があったとしても,参加人は無権利者である脱退原告から本件契約上の権利を譲り受けることはできない,と主張する。
 しかしながら,仮に,上記@ないしBの債権譲渡に先立ち,これらの権利が脱退原告からBに譲渡されていたとしても,本件では,脱退原告から被告に対してその旨の債権譲渡通知はされていないことから,脱退原告がこれらの権利を参加人に対して二重に譲渡したとしても,同譲渡が当然に無効となるものではなく,被告の主張は理由がない。
(2) 債権譲渡の効力について
 被告は,本件債権譲渡は脱退原告と参加人がタイ最高裁判決上の義務を潜脱する意図で行ったものであり,このような債権譲渡の目的や,参加人が設立され本件債権譲渡が行われた時期,本件債権譲渡において対価の合意がされておらず,参加人の役員に脱退原告の子が加わっていること,本件債権譲渡はタイ王国刑法に違反し国際的な組織犯罪を構成するものであることなどの事実を考慮すると,本件債権譲渡は,通謀虚偽表示に基づく無効なものであると推定され,かつ,我が国の公序に反する無効なものであると主張する。
 また,被告は,本件債権譲渡は参加人に訴訟行為をさせることを主たる目的とする信託行為であるから信託法10条に違反し,かつ,参加人は他人の権利を譲り受けて訴訟その他の手段によってその権利の実行をすることを業として上記債権を譲り受けたものであるから弁護士法73条に違反し,無効であるとも主張する。
 確かに,本件債権譲渡がされるまでの経緯,すなわち,タイ最高裁判決が出されて数か月後に日本において参加人が設立され,同判決により脱退原告による権利主張等が禁止された本件独占的利用権や本件契約に基づく損害賠償請求権等が脱退原告から参加人に譲渡され,譲渡後直ちに参加人が被参加事件に独立当事者参加していることなどからすると,本件債権譲渡が行われた背景に,タイ最高裁判決による不利益をできるだけ避けようとする脱退原告の意図が存在することがうかがえる。
 しかしながら,タイ最高裁判決における本件契約の成否に関する判断が我が国における確定判決及び当裁判所の認定と相反するものであることについては,前記のとおりであり,当裁判所における認定に従えば,脱退原告が被告に対して本件損害賠償請求権及び本件不当利得返還請求権を行使することは,何ら違法となるものではないから,かかる権利を脱退原告が参加人に譲渡することが,我が国の公序に反するものとは認め難い。
 また,…によれば,本件債権譲渡の際に参加人から脱退原告に対して特段の対価は支払われていないと認められるものの,この点について,脱退原告及び参加人は,本件債権譲渡の対価については,本件独占的利用権に基づく事業全体の収益性ないし将来性が不明であることなどを考慮して,参加人の事業が収益をあげることができたときに,事業収益から合理的割合の金額を支払う旨を合意したと述べている。そして,前記認定のとおり,本件契約の成否をめぐって,脱退原告と被告との間に長年にわたる紛争が存在し,タイ王国及び中国においては東京高裁判決と異なる判断が出されるなど,上記紛争は相当複雑かつ激しいものとなっており,現時点では,紛争解決の確たる見通しを立てることは困難な状況にあること,などの事情を鑑みると,本件独占的利用権を脱退原告から参加人に譲渡することにより,参加人の事業として本件独占的利用権に基づく事業を展開することとし,本件債権譲渡の対価について上記のような合意をした旨の,脱退原告らの上記供述は,特段不自然なものとは認められない。
 上記事実を考慮すると,本件債権譲渡は,脱退原告が参加人と通じてした虚偽の意思表示によるものとは認められず,また,公序良俗に違反するものとも認められないというべきである。
 また,上記認定事実に照らすと,本件債権譲渡が,参加人に訴訟行為を行わせることを主たる目的としてされたものとは認められず,参加人が,他人の権利を譲り受けて訴訟その他の手段によってその権利の実行をすることを業とする者であるとも認められないから,本件債権譲渡は,信託法10条及び弁護士法73条に違反するものでもない。
 
以上のとおり,本件債権譲渡が無効であるとする被告の主張は,いずれも理由がない。











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