著作権重要判例要旨[トップに戻る]







1136項関係
「日本経済新聞連載記事引用事件」
平成140326日東京地方裁判所(平成13()16152/平成141127日東京高等裁判所(平成14()2205 

【コメント】本件は、原告である新聞社が、被告A(作家)は被告書籍中の記述が原告新聞記事(連載記事『20世紀 日本の経済人』の一部)の名誉声望を毀損する方法で利用(引用)した、又は原告の名誉を毀損したとして、被告Aらに対して、主位的に著作者人格権に基づき、予備的に名誉毀損による不法行為を理由として、謝罪広告の掲載及び損害賠償の支払等を求めた事案です。
 なお、判決中の「著作権法1135項」は、現在は、同「6項」に該当します。 


【原審】

 
他人の言動,創作等について意見ないし論評を表明する行為がその者の客観的な社会的評価を低下させることがあっても,その行為が公共の利害に関する事実に係り専ら公益を図る目的に出たものであり,かつ,意見ないし論評の前提となっている事実の主要な点につき真実であることの証明があるときは,人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評としての域を逸脱するものでない限り,名誉毀損としての違法性を欠くと解される(最高裁判所平成元年1221日第一小法廷判決,平成999日第三小法廷判決参照)。そして,意見ないし論評が他人の著作物に関するものである場合には,上記著作物の内容自体が意見ないし論評の前提となっている事実に当たるから,当該意見ないし論評における他人の著作物の引用紹介が全体として正確性を欠くものでなければ,前提となっている事実が真実でないとの理由で当該意見ないし論評が違法となることはないものと解すべきである(最高裁判所平成10717日第二小法廷判決参照)。そして,以上の法理により意見ないし論評が名誉毀損とならない場合は著作権法1135項が規定する名誉声望毀損行為も成立しないものというべきである。

【控訴審】

 著作権法1135項の規定が,著作者の名誉又は声望を害する方法によりその著作物を利用する行為を著作者人格権の侵害とみなすと定めているのは,著作者の民法上の名誉権の保護とは別に,その著作物の利用行為という側面から,著作者の名誉又は声望を保つ権利を実質的に保護する趣旨に出たものであることに照らせば,同項所定の著作者人格権侵害の成否は,他人の著作物の利用態様に着目して,当該著作物利用行為が,社会的に見て,著作者の名誉又は声望を害するおそれがあると認められるような行為であるか否かによって決せられるべきである。したがって,他人の言語の著作物の一部を引用して利用した場合において,殊更に前後の文脈を無視して断片的な引用のつぎはぎを行うことにより,引用された著作物の趣旨をゆがめ,その内容を誤解させるような態様でこれを利用したときは,同一性保持権の侵害の成否の点はさておき,これに接した一般読者の普通の注意と読み方を基準として,そのような利用態様のゆえに,引用された著作物の著作者の名誉又は声望が害されるおそれがあると認められる限り,同項所定の著作者人格権の侵害となることはあり得るが,その引用自体,全体として正確性を欠くものでなく,前後の文脈等に照らして,当該著作物の趣旨を損なうとはいえないときは,他人の著作物の利用態様により著作者の名誉又は声望を害するおそれがあるとはいえないのであるから,当該引用された著作物の内容を批判,非難する内容を含むものであったとしても,同項所定の著作者人格権の侵害には当たらないと解すべきである。控訴人は,著作権制限規定によって著作者人格権が制限や影響を受けるものではないから(著作権法50条),著作権法1135項の適用においては,「引用」は正確であることを要し,上記のように「全体として正確性を欠く」というあいまいな要件では足りないと主張するが,以上の説示に照らし,採用することができない。
 その場合において,当該引用に係る著作物の内容を批判,非難する表現が,別途名誉毀損の不法行為を構成するかどうかは別論である。なぜならば,著作権法1135項は,上記のとおり,著作物の利用行為に着目した規定であって,名誉毀損の不法行為の成否とは場面を異にするからである。











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