著作権重要判例要旨[トップに戻る]







著作物使用料債務についての免責的債務引受の事実を認めなかった事例
「管理著作物使用料支払業務担当者移籍事件」
平成221124日東京地方裁判所(平成22()17479 

【コメント】本件は、著作権等管理事業法に基づいて登録を受けた著作権等管理事業者である原告が、@被告株式会社に対し、録音利用許諾契約に基づく原告の管理著作物の使用料、違約金及び当該使用料に対する商事法定利率年6分の割合による遅延損害金並びにインタラクティブ配信利用許諾契約に基づく原告の管理著作物の使用料及びこれに対する約定の遅延損害金の支払を、A被告株式会社の代表者である被告Aに対し、会社法4291項に基づく前記各使用料相当額の損害賠償金及びこれに対する民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を、それぞれ求めた事案です。

[参考:会社法429条(役員等の第三者に対する損害賠償責任1]
役員等がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、当該役員等は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。 


 [原告の被告会社に対する請求について]
 被告らは,被告会社が,本件録音利用許諾契約につき録音契約解約申込書を,本件インタラクティブ配信利用許諾契約につきインタラクティブ配信契約解約申込書を,それぞれ提出したことにより,その債務を免れていると主張する。
 しかしながら,本件録音利用許諾契約及び本件インタラクティブ配信利用許諾契約(以下,両契約を併せて「本件各契約」という。)につき解約がされたからといって,それによって,本件各契約が継続している間に発生した使用料債務が,当然に消滅するものではない
 また,被告らの主張は,当該使用料債務につき,サニックス又は被告会社からサニックスに移籍したBによる債務引受がされた旨の主張であるとも解されるところ,証拠によれば,被告会社は,原告に対し,録音契約解約申込書を提出し,平成174月末日をもって本件録音利用許諾契約を解約し,同契約に基づく使用料の請求書の送り先をサニックス(担当B)とするように申し入れていることが認められる。しかしながら,他方で,録音契約解約申込書には,同日までの著作物使用料については,被告会社が支払うことが明記されていることからすれば,録音契約解約申込書の提出によって,被告会社が,原告に対し,被告会社からサニックス又はBに対する当該使用料債務についての免責的な債務引受その他の債務の承継についての承諾を求めたものと認めることはできない。また,インタラクティブ配信契約解約申込書には,そもそも,請求書の送付先をサニックス又はBとするよう求める等の使用料債務の承継又は支払に関する記載はない
 そして,他に,サニックス又はBが,本件各契約に基づく被告会社の著作物使用料債務(以下「本件使用料債務」という。)につき債務引受をし,原告がそれを承諾したことその他の原因によって,被告会社が本件使用料債務を免れたと認めるに足る証拠はない。
 したがって,被告らの前記主張は,理由がない。
 (略)
 [原告の被告Aに対する請求について]
 原告の被告Aに対する請求は,@被告Aが,Bに対して本件各契約に係る事務を一任し,被告会社を本件使用料債務の債務不履行に陥らせたことを理由とする取締役の任務懈怠,A本件使用料債務の支払についての意図的な遅滞を理由とする取締役の任務懈怠,BBのサニックスへの移籍が予定された状況下で,漫然と録音利用申込み及び著作物の利用を行って弁済の見込みのない著作物使用料を発生させ,原告に著作物使用料の回収を困難にさせたことを理由とする取締役の任務懈怠に基づき,本件使用料債務相当額の損害賠償を求めるものである。
 このうち,@及びAは,いずれも被告会社が履行を遅滞していることについての被告Aの取締役としての任務懈怠を主張するものであると解されるところ,仮に,被告Aの任務懈怠行為が認められ,被告会社による債務の履行が遅滞した事実があったとしても,当該任務懈怠行為と相当因果関係がある損害は,履行を遅滞していることによって生ずる損害であって,原告の主張する本件使用料債務相当額が,当然に履行を遅滞していることによって原告に生じた損害となるものではない。そして,原告は,履行を遅滞していることによって,原告に本件使用料債務相当額の損害が発生したことを基礎付ける事情について,何ら主張していないから,原告の主張は,失当である(なお,原告は,本件使用料債務の履行を遅滞していること自体を理由とする損害については,何ら主張していない。)。
 
また,Bの弁済の見込みのない著作物使用料債務を発生させたことについての任務懈怠については,被告会社が,原告に対し,原告の管理著作物の録音利用申込みをし,又は当該著作物の利用を行った段階で,当該著作物の利用に伴う著作物使用料につき,支払の見込みがなかったと認めるに足る証拠はないから,原告の当該主張は,理由がない。











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