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一般不法行為の成否-否認事例(21)-
「データ復旧サービス広告用文章事件」
平成221210日東京地方裁判所(平成20()27432)/平成230526日知的財産高等裁判所(平成23()10006 

【コメント】本件は、原告が、インターネット上に開設するウェブサイトにデータ復旧サービスに関する文章を掲載した被告の行為は、主位的に、@原告が創作し、そのウェブサイトに掲載したデータ復旧サービスに関するウェブページのコンテンツ又は広告用文章を無断で複製又は翻案したものであって、原告の著作権及び著作者人格権を侵害する不法行為に当たると主張して、被告に対し、損害賠償金の支払いなどを求めるとともに、予備的に、A一般不法行為に当たると主張して、被告に対し、上記@と同額の損害賠償金の支払いなどを求めた事案です。 

 【原審】

 一般不法行為の成否について
 原告は,先行企業としての業務経験に基づき試行錯誤の上に完成させた自社のオリジナルの広告文につき,同一サービスに新規参入する業務経験のない大手のライバル企業によって盗用されない利益は法的保護に値するものであるから,先行する競合企業である原告の広告文言を盗用した被告の行為は,社会的相当性を逸脱し原告の法的保護に値する利益を侵害した点で不法行為を構成すると主張する。
 別紙文章対比表の原告文章欄及び被告文章欄記載の各下線部分の表現は,記載順序や構成,用語や言い回しなどがほぼ共通していること,被告文章の作成担当者であるAは,被告文章を作成するに当たりデータ復旧サービスを行っている1000〜200社のウェブサイトを閲覧し参考にしており,原告文章が掲載された原告のウェブサイトを閲覧しこれを参考にした可能性があること,Aが被告文章における表現をどのように推敲し,どのような理由から採用したのかなど被告文章の具体的な作成経緯が主張,立証されていないことなどからすると,被告文章は,原告文章に依拠して作成されたことがうかがわれる。
 しかしながら,@別紙文章対比表のとおり,同表の被告文章欄記載の文章のうち,原告文章の表現と類似しているのは下線が付されている部分のみであり,全体の2分の1以上を占めるその他の部分は原告文章の表現と類似していないこと,A原告文章と被告文章の表現が類似している部分は,上記で説示したように,データ復旧サービスの内容を一般消費者向けに説明する際に広く用いられている一般的なもので普通に考えられる工夫であること,B被告文章は広告用の文章であって被告は被告文章の出版,ウェブサイトへの掲載等により直接利益を得ているわけではないこと,C広告用文章を閲覧した者が当該サービスを利用するか否かは,その広告用文章の表現内容のみではなく,当該サービス自体の内容や価格,その実績等によるところが大きいことなどからすると,被告文章が原告文章に依拠して作成されたものであったとしても,被告が被告文章を被告ウェブサイトへ掲載した行為が,公正な競争として社会的に許容される限度を逸脱した不正な競争行為として不法行為を構成すると認めることはできない
 
したがって,原告主張の一般不法行為を認めることはできず,原告の一般不法行為に基づく請求も理由がない。

 【控訴審】

 一般不法行為の成否について
(1) 控訴人は,先行企業としての業務経験に基づき試行錯誤の上に完成させた自社のオリジナル広告文につき,同一サービスに新規参入する業務経験のない大手ライバル企業によって盗用されない利益は法的保護に値するものであるから,先行競合企業である控訴人の広告文言を盗用した被控訴人の行為は,社会的相当性を逸脱し控訴人の法的保護に値する利益を侵害した点で不法行為を構成すると主張する。
(2) 控訴人文章…と被控訴人文章…の各表現は,記載順序や構成,用語や言い回しなどがほぼ共通していること,被控訴人文章の作成担当者であるAは,被控訴人文章を作成するに当たりデータ復旧サービスを行っている100ないし200社のウェブサイトを閲覧して参考にしており,控訴人文章が掲載された控訴人のウェブサイトを閲覧し,これを参考にした可能性があること,被控訴人文章は,控訴人文章以外の広告文章とは共通性がないことなどからすると,被控訴人文章は,控訴人文章に依拠して作成されたものと推認せざるを得ない。
 (略)
 したがって,控訴人がAの説明に疑問を抱き,著作権侵害が認められないとしても,なお被控訴人の行為を強く非難することは,それ自体無理からぬところである。
(3) しかるところ,控訴人は,@他人の文章に依拠して別の文章を執筆し,ウェブサイトに公表する行為が,営利目的によるものであり,文章自体の類似性や構成・項目立てから受ける全体的印象に照らしても,他人の執筆の成果物を不正に利用して利益を得たと評価される場合には,当該行為は公正な競争として社会的に許容される限度を超えるものとして不法行為を構成するというべきである,A控訴人文章は,控訴人において,世間一般に知られていなかったサービスにつき,顧客から誤解に基づくクレームを受けた等の業務経験に鑑み,試行錯誤を行いながら,控訴人代表者が,テクニカルライターとしての経験を活用して書き上げたものであり,被控訴人は,このような先行企業による成果物に無断で「ただ乗り」し,他人の成果物を不正に利用してビジネス上の利益を享受していることは明らかである,B保護されるべき企業の利益は,直接的なものに限られるものではないなどと主張する。
(4) しかしながら,控訴人主張の「オリジナル広告文」が法的保護に値するか否かは,正に著作権法が規定するところであって,当該広告が著作権法によって保護される表現に当たらず,その意味で,ありふれた表現にとどまる以上,これを「オリジナル広告」として,控訴人が独占的,排他的に使用し得るわけではない
 したがって,被控訴人が控訴人のそのような広告と同一ないし類似の広告をしたからといって,被控訴人の広告について著作権侵害が成立しない本件において,著作権以外に控訴人の具体的な権利ないし利益が侵害されたと認められない以上,不法行為が成立する余地はない
 そして,控訴人文章の作成について,いかに控訴人代表者が創意工夫をこらしたとしても,それが著作権法の保護に値せず,そのほか著作権以外に控訴人の具体的な権利ないし利益の侵害が認められない以上,一般不法行為を理由に,法的保護を受けることができないことはいうまでもない。著作権法の保護の対象とされない表現物については,原則として自由に利用し得るものであり,前記説示のとおり,控訴人文章と被控訴人文章とは,表現それ自体でない部分又は表現上の創作性のない部分において同一性を有するにすぎない以上,被控訴人文章をウェブサイトに公開したことをもって,公正な競争として社会的に許容される限度を超えたものということはできない
 さらに,被控訴人が,被控訴人文章をウェブサイトに公開したことをもって,被控訴人に控訴人指摘の何らかの利益が生じたとしても,その点について控訴人が法的保護に値する立場にない本件においては,これをもって公正な競争として社会的に許容される限度を超えたなどといい得る前提があるものではない。
(5) したがって,控訴人の主張は失当というほかない。











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