著作権重要判例要旨[トップに戻る]







黙示の利用許諾を認定した事例(14)
「『愛の劇場』オープニングテーマ楽曲制作事件平成230324日東京地方裁判所(平成21()43011/平成230809日知的財産高等裁判所(平成23()10030 

※【 】は、控訴審で付加された箇所。

 [事案の概要]
 本件は,原告らが,同人らの作曲した楽曲が株式会社東京放送(以下「東京放送」という。)の制作するテレビ番組のオープニングテーマとして長期間にわたって使用されたものの,一部の期間については原告らの許諾を得ずに上記使用がされたと主張して,会社分割により東京放送の権利義務を包括的に承継した被告に対し,上記楽曲の使用料相当額の不当利得の返還及びこれに対する民法704条所定の法定利息の支払を求めた事案である。
 (争いのない事実等)
(1) 東京放送は,平成1511月ころ,ケネックジャパン株式会社(以下「ケネック社」という。)に対し,当時同局で放映されていた昼のドラマシリーズ「愛の劇場」の新たなオープニングに利用されるCGアニメーション(以下「本件オープニング映像」という。)の制作を依頼した。
 「愛の劇場」は,昭和44224日から平成21327日までの間,東京放送及びその系列局において,毎週月曜日から金曜日の午後1時から1時半までの放送枠で放送されたテレビドラマシリーズの総称であり,共通したオープニング映像が使用されていた。
(2) ケネック社は,平成1512月ころ,原告Aに対し,本件オープニング映像に付ける音楽の制作(作曲,演奏,録音物の制作)を依頼した
 原告A及び同原告から協力を求められた原告Bは,平成151224日ころまでに,全部で7秒程度の長さの下記楽曲(以下「本件楽曲」という。)を制作し,同曲をケネック社に納品した。原告Aは,上記納品の際,ケネック社から,「TBS愛の劇場,音楽制作費」の名目で,20万円の支払を受けた(なお,上記納品の際,原告らが本件楽曲を「愛の劇場」のオープニングに使用することを許諾していたか否かについては,後記のとおり当事者間に争いがある。)。
 
 楽曲名:「愛の劇場」オープニングテーマ〜ホワイトチャイム〜
(3) 東京放送は,平成161月から平成213月までの間,毎週月曜日から金曜日まで,テレビドラマ「愛の劇場」のタイトルバック音楽として,本件楽曲のテレビ放送を行い,また,本件楽曲を放送用に録音した(これらの利用行為を併せて,以下「本件使用」という。)。
(4) 原告らは,平成1841日付けで,本件楽曲に係る著作権(以下「本件著作権」という。)を,被告系列の音楽会社である株式会社日音(以下「日音」という。)に譲渡し(以下「本件譲渡契約」という。),日音は,本件譲渡契約(第6条)に基づき,本件著作権の管理を社団法人日本音楽著作権協会(以下「JASRAC」という。)に委託した。
 その後,日音は,JASRACから,平成1841日から平成20331日までの本件使用に係る本件楽曲の使用料を受領し,原告らに対し,本件著作権譲渡の対価として,本件譲渡契約(第10条)に基づき上記金額の2分の1を分配した。
(5) 原告Aは,平成2126日,被告に対し,平成1611日から平成18331日までの本件使用に係る本件楽曲の著作権使用料が支払われていないので,これを支払ってほしい旨を通知した。これに対し,被告は,平成2132日付けの内容証明郵便により,原告Aに対し,本件使用について東京放送はケネック社を通して原告Aから許諾を得ており,原告Aに対して使用料を支払う理由はない旨を回答した。
(6) 被告は,平成2141日付け会社分割により,同日付けで,東京放送から同社のテレビ放送事業に関する権利義務を包括的に承継した。
 (略)
 [当裁判所の判断]
1 争点1(原告らは,被告に対して本件使用を許諾したか)について
(1) 認定事実
 (略)
(2) 上記事実関係によれば,@東京放送は,ケネック社に対して本件オープニング映像の制作を依頼するに当たって,同映像に係る著作権処理をすべて済ませた物を納品するよう求め,ケネック社は,これを承諾して本件オープニング映像を制作し,東京放送に納品していること,A原告らは,本件オープニング映像用に本件楽曲を制作して同曲をケネック社に納品し,本件楽曲が平成161月から「愛の劇場」のオープニング映像用のタイトルバックとして使用されていることを認識していたにもかかわらず,平成2012月までの約5年間,東京放送に対して本件楽曲の使用料を請求していないこと,B本件楽曲は,全体で7秒程度のごく短いものであり,ケネック社から原告らに支払われた20万円という金額は,「愛の劇場」のオープニング映像としての使用料を含むものであったとしても,特段不自然とはいえないこと,などが認められ,これらの事実に鑑みると,原告らは(原告Bについては原告Aを通して),ケネック社又は東京放送に対し,金20万円を対価として,本件楽曲を本件オープニング映像に使用することを許諾したものと認めるのが相当であり,許諾に当たり,原告らの主張するような停止条件が付されていたと認めることはできない。
 また,原告らは,平成1841日付けで日音との間で本件譲渡契約を締結し,同日以後の本件使用に係る使用料については,日音から本件著作権の信託譲渡を受けたJASRACを通じて分配金を受け取っていることが認められるが,本件譲渡契約の締結された経緯については上記(1)に認定のとおりであり,東京放送が本件使用に関して原告らに使用料の支払義務があることを前提としたものではなかったものであるということができるから,上記本件譲渡契約の締結等の事実は,上記認定を左右するものではない。
(3)ア 原告らは,平成161月から本件楽曲が使用されていることを認識していたにもかかわらず,平成2012月までの5年間,東京放送に対し本件楽曲の使用料を請求しなかった理由として,使用料の件はケネック社から東京放送に伝わっていると考え,東京放送のような大企業が使用料を支払わないということはあり得ないと思い,また,使用料の話を急がせれば,東京放送から本件楽曲の使用を打ち切られてしまうのではないかと心配したからであると主張し,原告X1は,陳述書及び本人尋問において,これに沿った供述をする。
 しかし,原告X1の上記供述は,採用することができない。原告X1は,それまで,楽曲制作時に一括して著作権使用料を受領したことも,楽曲の著作権を譲渡した上で,使用に応じて著作権使用料の支払を受けたこともあり,楽曲制作の依頼を受ける際には,著作権の権利処理方法及び対価について必ず考え,相手方に対して,著作権の権利処理及び対価についての交渉をするなど,著作権の権利処理や対価については高い関心があり,また,楽曲制作時に一括して著作権使用料が支払われることがあることも認識していたと認められる。原告X1が,上記のような知識,経験を有していた点に照らすならば,東京放送が本件楽曲の使用を開始した後,長期間にわたって,使用料の支払を受けなかったにもかかわらず,使用料の請求をすることも,支払の確認もしなかった理由は,原告X1とケネック社との合意の内容として,同原告が東京放送が本件楽曲を使用することを許諾し,その際に受領した前記の20万円の金額中に,本件楽曲の使用料が含まれていたことを認識していたからであると解するのが自然である。さらに,原告X1は,平成1841日付けで本件譲渡契約を締結した際にも,それ以前の本件使用に対する使用料の支払について何の確認等も行っておらず,その後,同日以降の本件楽曲の使用に対する著作権使用料が日音から支払われた後においても,それより以前の本件楽曲の使用に対する使用料の支払について,使用料の請求や確認は,一切行っていない。原告X1が,同原告と東京放送ないしケネック社との間の合意によって,平成1611日分から使用料の支払を受けられる権利を有していたと認識,理解していたのであれば,東京放送ないしケネック社側の認識を確認することすらしなかった点について,合理性な説明がなされていないというべきである。上記の事実経緯に照らすならば,前記のとおり,東京放送を信用したために使用料の請求をしなかったという原告X1の供述は採用することができない。また,20万円とは別途に使用料を支払うことが許諾の停止条件になっていたと解することもできない。
 また,原告X1は,本件楽曲の使用を打ち切られてしまうのではないかと心配して,東京放送に使用料の請求を行わなかったと供述する。しかし,上記供述は,原告らの主張と相容れない供述であって,到底採用の限りでない。すなわち,原告らの主張によれば,原告X1とケネック社ないし東京放送と締結した合意の内容は,停止条件が成就しない限り,東京放送には本件楽曲を使用する権限がないというものであるから,原告らの主張を前提にする限り,打ち切られてしまうことを配慮する余地はないというべきである。結局,使用料の請求をしなかった理由は,原告X1は,東京放送が本件楽曲を使用することを許諾していたからであると解するのが合理的である。
イ 原告らは,本件楽曲制作のための実費として別紙実費一覧表記載のとおり約20万円支出していることから,ケネック社から支払を受けた20万円に本件楽曲の使用料も含まれていると解することはできないと主張する。
 原告X1が,@平成151229日にD3万円,A平成16128日にE11000円,B同年312日に原告X27万円,C同月19日に株式会社モリダイラ楽器に18795円,D同年43日にFに3万円支払っていることは認められる。@は中古の録音用機材の購入代金,Aは中古のバックアップ用機材の購入代金,Cはバックアップ用機材の整備費ということであり,これらの機材を購入又は整備した契機が本件楽曲の制作であったとしても,原告X1はこれらの機材をその後も楽曲の制作等に使用したり,さらに第三者に売却したりすることが可能である点を考慮するならば,その購入代金や整備費用全額が本件楽曲制作に要した金額とはいえない。原告提出の音楽制作費御見積書にも,機材の購入代金や整備費用は見積もりの項目として列記されていない(なお,機材の購入代金は「録音テープ料」には当たらない。)。
 以上のとおり,本件楽曲制作のために約20万円の全額を要したと認めることはできない。
ウ また,原告らは,本件楽曲は7秒程度のものであるが,楽曲の使用料は楽曲の長さを基準に決められるものではないこと,本件楽曲の使用料がケネック社から支払われた20万円の一部として含まれるとすると,低額にすぎることから,本件楽曲の使用料は,いまだ支払われていないと主張する。
 しかし,原告らの主張は,以下のとおり採用の限りでない。すなわち,原告X1がイベント用音楽を制作した際に合意した使用料の事例(111万円余から177万円余)は,楽曲の長さや演奏された回数等は明らかではないものの,7秒より長い楽曲であり,イベント会場において通常の態様で繰り返して演奏されることを想定していたものと推測される。
 そして,本件楽曲が7秒程度のごく短いものであること,本件楽曲が毎週月曜日から金曜日まで,タイトルバック音楽としてテレビ放送されるものであること等を総合考慮するならば,20万円は,上記の他の楽曲制作の事例と対比して,本件楽曲の使用料を含めた金額として不当に低額であるともいえない
エ 原告らは,平成1611日から平成18331日までの使用料が20万円に含まれているとすると,本件楽曲の使用形態・使用頻度は同一であるにもかかわらず,平成18331日までとその翌日以降とで使用料が大きく異なることとなり,不自然であると主張する。
 しかし,平成18331日までの本件使用に対する使用料は原告らと東京放送との合意内容により決まるのに対し,その翌日以降の使用料は,JASRACの定める著作物使用料分配規定に基づいて分配されるものであり,その金額が異なるとしても,必ずしも不合理とはいえない。
 その他,原告らは縷々主張するが,前記認定事実等に照らし,いずれも採用できない。
2 よって,その余の点について判断するまでもなく,原告らの請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。

【控訴審】

 当裁判所は,本件控訴はいずれも理由がなく,棄却すべきものと判断する。その理由は,次のとおり付加訂正するほかは,原判決の…記載のとおりであるから,これを引用する。
 (略)
 結論
 
以上のとおりであるから,その余の点について判断するまでもなく,原告の本件各請求はいずれも理由がない。よって,原告らの本件請求をいずれも棄却した原判決は正当であって,本件控訴はいずれも理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。











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