著作権重要判例要旨[トップに戻る]







政治宣伝用ビラへの写真の無断掲載の適法引用が問題となった事例(2)
「都議会議員肖像写真無断利用事件」平成230209日東京地方裁判所(平成21()25767等) 

【コメント】原告は、職業写真家であり、「本件写真」を撮影した者です。被告は、「A調査会」ないし「A1調査会」の名称で政治活動を行っている者です。
 本件本訴は、原告が、被告に対し、公明党所属のB都議会議員(「B議員」)のウェブサイト(「本件サイト」)から本件写真の電子データ(「本件画像データ」)をダウンロードし、これを利用して「被告写真1」を「本件ビラ1」に、「被告写真2」を「本件ビラ2」に、「被告写真3」を「本件ビラ3」に掲載して街頭で通行人に頒布し、「被告写真4」を自らが管理するインターネット上のウェブサイトにアップロードして自己のブログ(「本件ブログ」)に掲載し、「被告写真5」を街宣車(「本件街宣車」)の車体上部に設置された看板(「本件看板」)に掲載した被告の行為は、原告の有する本件写真の著作権(複製権、譲渡権、公衆送信権〔送信可能化権〕)及び著作者人格権(同一性保持権)を侵害すると主張して、著作権法112条に基づき、@本件写真を掲載したビラの頒布の差止めと廃棄、A被告写真4をインターネット上のウェブサイトで送信可能化することの差止めを求めるとともに、不法行為による損害賠償請求権に基づき、B損害賠償金(著作権侵害による財産的損害、著作者人格権侵害による精神的損害及び弁護士費用)及びこれに対する遅延損害金の支払を求めた事案です。 


 著作権法321項の「引用」に当たるか
ア 被告は,本件各ビラ等に本件写真の複製物である被告各写真を掲載したことにつき,公表された写真を報道,広報目的で引用するものであるから,著作権法321項で保護されるべき適法な引用に当たると主張する。
イ …によれば,次の事実が認められる。
 (略)
ウ 公表された著作物は,引用して利用することができるが,その引用は,「公正な慣行」に合致するものでなければならず,また,「報道,批評,研究その他の引用の目的上正当な範囲内」で行われるものでなければならない(著作権法321項)。
 これを本件についてみるに,本件各ビラ等は,要するに,都議選の候補者であったB議員について不正があったとの主張を宣伝広報し,あるいはB議員が被告に対し街宣活動の禁止を求める仮処分を申し立てたことを批判するためのものであって,本件写真それ自体や,本件写真に写った被写体の姿態,行動を報道したり批評したりするものではない。被告は,B議員を特定し,本件各ビラ等を見た者に具体的にB議員をイメージさせる目的で本件写真を引用したと主張するが,特定のためであれば,同議員の所属,氏名を明示すれば足りることであるし,イメージのためであれば,B議員の他の写真によって代替することも可能であり,本件写真でなければならない理由はない。また,本件各ビラ等は本件写真の全体をほぼそのまま引用しているが,身振り手振りも含めた本件写真の全体を引用しなければならない必要性も認められない。さらに,著作物の引用に当たっては,その出所を,その複製又は利用の態様に応じて合理的と認められる方法及び程度により,明示しなければならないが(著作権法4811号),本件各ビラ等においては,本件写真の出所が一切明示されておらず,これが他人の著作物を利用したものであるのかどうかが全く区別されていない。
 このように,そもそも,本件各ビラ等に本件写真を引用しなければならない必然性がないこと,本件写真の全体を引用すべき必要性もないこと,本件写真の出所が一切明示されていないことなどからすれば,本件各ビラ等が被告の政治的言論活動のために作成されたものであることを考慮しても,これに本件写真の複製物である被告各写真を掲載したことが,「公正な慣行」に合致するものということはできず,また,「報道,批評,研究その他の引用の目的上正当な範囲内」で行われたものということもできない
 したがって,本件各ビラ等に本件写真の複製物である被告各写真を掲載したことが著作権法321項の「引用」に当たるということはできない。
 
よって,被告の主張は採用できない。











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