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名誉毀損-肯定事例(2)-
SNS全柔協』書込み事件」平成221021日大阪地方裁判所(平成22()3273 

【コメント】本件は、「全柔協」と通称される原告が、インターネット上のいわゆるソーシャルネットワーキングサイト「mixi」のコミュニティ「接骨院・整骨院の経営を考える」(「本件コミュニティ」)において、ハンドルネーム「P2」を名乗って「本件各書き込み」を行った被告に対し、「本件各書き込みの内容は、原告の営業上の信用を害する虚偽の事実である」(不正競争防止法2114号に基づく主張)及び「本件各書き込みによって原告の社会的名誉及び信用が毀損され、業務が妨害された」(不法行為に基づく主張)として、損害賠償の支払などを求めた事案です。 

 [原告について]
 原告が,大阪市内に主たる事務所を置き,「全柔協」と通称される,柔道整復師や鍼灸師の組合員を擁する協同組合であり,柔道整復師や鍼灸師の養成校である学校法人も設立していることについて,被告は争っていない。
 [被告及び被告の行為について]
(1) 書き込みの事実
 …によれば,「P2」のハンドルネームを使用している人物により,本件各書き込みが行われた事実が認められる。
(2) 書き込みの主体
 原告は,本件各書き込みの主体であり,「mixi」において「P2」のハンドルネームを使用している人物は,被告であると主張する。
 この点,被告は,「mixi」内の「P2」のページにおいて,被告の顔写真が掲載されていることや,プロフィールに被告の電話番号やメールアドレスが記載されていることは認めている。また,被告は,平成22125日に,本件各書き込みが原告の名誉・信用を害するとして,書き込みの削除,謝罪,300万円の損害賠償を請求する,原告代理人弁護士作成の内容証明郵便を受領しているが,その後,「P2」は,上記内容の文書が原告代理人弁護士から送付されてきた旨の書き込みを行っている。さらに,被告が,原告の代表理事であるP3を糾弾する文書を送付していた事実も認められる。
 これらのことからすれば,本件各書き込みを行った「P2」とは,被告であると認められる。
 [名誉・信用毀損について]
 文章中の表現が他人の名誉や信用を毀損するか否かは,当該文章を読むであろう一般的な読者の,通常の知識と読み方を基準とした場合に,当該表現が当該他人の社会的評価や信用を低下させる内容といえるか否かを基準として判断すべきである。
 したがって,文章に実名が記載されていない場合であっても,当該文章の一般的な読者であれば,そこに記載された他人の属性等について一定の知識や情報を有しており,そのような読者が当該文章を読めば,当該他人を特定することが可能な程度の情報が記載されているのであれば,名誉毀損や信用毀損が成立しうるというべきである。
 以下,本件各書き込みについて検討する。
(1) 本件書き込み1について
ア 本件書き込み1の内容
 本件書き込み1は,柔道整復師が開業する際の所属団体の選択について注意を促す内容であり,選択すべきでない団体の属性として,次の要素が挙げられている。
 () 大坂(大阪の誤記であることが明らか)に本部を置く柔整団体である。
 () 協同組合である。
 () 柔整学校法人を設立している。
イ 原告の属性
 他方,原告は,次のような属性を有する(争いがない。)。
 () 大阪市内に主たる事務所を置く,柔道整復師等を擁する団体である。
 () 協同組合である。
 () 柔道整復師等を養成する学校法人を設立している。
ウ 原告の特定
 前記ア,イのとおり,原告は,本件書き込み1において「柔道整復師が開業する際に,所属団体として選択すべきでない」と評された団体の属性を,いずれも備えている。
 しかし,「大坂に本部を置く柔整団体が次々と査察を受けています。」との記載は,明らかに複数の団体を指す表現である。また,「協同組合などを隠れ蓑にして柔整学校法人まで設立し理事長までになっている」との記載は,記載者において特定の人物を指していることは窺えるものの,限定的な条件ではないため,読者において該当者を特定できるとはいい難い。したがって,この条件を満たす人物が限られていたとしても,表現自体において原告の代表理事を指すものとはいえない
 したがって,本件書き込み1が原告についてのものであるとは認められない。
(2) 本件書き込み2について
ア 本件書き込み2の内容
 本件書き込み2は,「全柔協」に対し検察による捜査が行われたため,各柔整団体に所属する整骨院や接骨院等が損害を受けており,柔道整復師業界に不利益な制度ができるかもしれないという内容のものである。
 
そして,「全柔協」について,次の要素が挙げられている。
 () 大阪に本部を置いている。
 () 協同組合・学校法人等である。
イ 原告の属性
 他方,原告は,次のような属性を有する(争いがない。)。
 () 大阪市内に主たる事務所を置いている。
 () 協同組合であり,学校法人を設立している。
 () 全柔協と通称される。
ウ 原告の特定
 「全柔協」は,一般的には原告を指す略称と認められるところ,前記ア,イのとおり,原告は,本件書き込み2における「全柔協」の属性をいずれも備えている。
 また,本件コミュニティは,柔道整復師の経営能力について考えるものであるから,本件コミュニティにおける書き込みであれば,「柔」は柔道整復師を指すと受け取られるし,「協」は協同組合の意であることが現実に記載されているから,「全柔協」とは,大阪にある柔道整復師関係の協同組合ということになる。そして,本件コミュニティの趣旨からして,そのメンバーは,柔道整復師業界の関係者や,同業界に興味を持つ者がほとんどであると考えられるから,本件コミュニティの一般的な読者の通常の注意の読み方を基準とすれば,本件書き込み2の「全柔協」は,原告のことであると理解できたといえる
 したがって,本件書き込み2は,原告を特定した書き込みであると認められる。
エ 名誉・信用毀損該当性
 前記ウのとおり,本件書き込み2は,一般的な読者(本件コミュニティのメンバー)の通常の注意と読み方を基準とすれば,原告に対し検察による捜査が行われ,原告に所属すると不利益を被るとの事実を摘示するものと認められる
 そうすると,本件書き込み2が示した事実は,原告の社会的評価・信用を低下させるものといえるから,原告は,本件書き込み2によって名誉・信用を毀損されたものと認められる
 なお,本件コミュニティのメンバーの通常の知識からして,検察による捜査が行われたのは原告に対してではないと明確に認識できた者もいたと考えられるが,このことは上記認定を左右しない。
(3) 本件書き込み3について
ア 本件書き込み3の内容
 本件書き込み3は,「全柔協」が,会員のレセプトの付け増し請求や,元会員名義での架空請求などの犯罪を行っていることを示す内容のものである。
 そして,「全柔協」について,次の要素が挙げられている。
 () 大阪に本部を置いている。
 () 協同組合・学校法人等である。
 () 朝日放送(大阪)の番組に出演している。
イ 原告の属性
 他方,原告は,次のような属性を有する(()を除き,争いがない。)。
 () 大阪市内に主たる事務所を置いている。
 () 協同組合であり,学校法人を設立している。
 () 代表理事が朝日放送(大阪)の番組に出演している。
 () 全柔協と通称される。
ウ 原告の特定
 本件書き込み2と同様の理由に加え,前記ア()とイ()が共通することからも,本件書き込み3は,原告を特定した書き込みであると認められる。
エ 名誉・信用毀損該当性
 本件書き込み2と同様,一般的な読者(本件コミュニティのメンバー)の通常の注意と読み方を基準とすれば,本件書き込み3は,原告が架空請求などの犯罪を行っている事実を摘示するものと認められる。
 そうすると,本件書き込み3が示した事実は,原告の社会的評価・信用を低下させるものということができるから,原告は,本件書き込み3によって名誉・信用を毀損されたものと認められる
 (略)
 [損害について]
(1) 無形損害について
 本件書き込み23は,ことさらに,大阪で逮捕された業者と原告とを混同させ,原告の社会的評価・信用を低下させようとする意図が窺える,悪質なものといえる。
 一方,被告は,平成22125日に,原告代理人から内容証明郵便を受領して,「全柔協」を名指しした書き込みを自主的に削除しており,本件書き込み2が掲載されたのは1か月と1週間程度,本件書き込み3が掲載されたのは1週間程度と,いずれも比較的短い期間である。
 また,本件コミュニティのメンバー数は,本件書き込み2直後の平成211218日時点で2093名であるところ,これは,同時点において,同じ「mixi」内の柔道整復師関係のコミュニティである「鍼灸・柔道整復・按摩マッサージ」のメンバー数が3490名,同じく「柔道整復師・接骨院」のメンバー数が4664名であるのと比べて,必ずしも少ないとはいえないが,柔道整復師全体の数からすると僅かであり(毎年5000人が柔道整復師となっている。),本件コミュニティ自体が「接骨院・整骨院の経営を考える」という限定的な集団であるといえる(これらのコミュニティにおける書き込みは,コミュニティの構成員以外の者は閲覧することができない。)。
 また,本件コミュニティのメンバーのうち何人が,現実に本件書き込み23を閲覧したかも不明である。しかも,本件書き込み2について,本題からずれているとたしなめるメンバーが存在したり,本件書き込み3について,詐欺事件を起こしたのは原告ではないとして,混同していないメンバーが存在するなど,本件コミュニティのメンバーは,必ずしも本件書き込み23を,原告の社会的評価・信用を低下させるものとして真摯に受け取っていたわけではないことが認められる。
 これらの事情を考慮すると,本件書き込み23により原告の被った無形損害は,50万円と認めるのが相当である。
(2) 弁護士費用について
 本件事案の内容や認容額などを考慮すると,被告の不法行為による弁護士費用相当額の損害は,5万円と認めるのが相当である。
 [原告の名誉・信用の回復措置について]
 
原告の損害を回復させるための謝罪広告については,本件書き込み23による名誉・信用毀損の内容,程度に照らし,必要性があるとまでは認め難い。











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