著作権重要判例要旨[トップに戻る]







既存の著作物への依拠性(13)
「中小企業診断士『2次ストレート合格講座』テキスト事件」平成230228日東京地方裁判所(平成21()23987 

【コメント】本件は、被告株式会社東京リーガルマインド(以下「被告LEC」)の講座におけるビデオ講義を担当した原告が、講義のために作成した資料を被告経営戦略研究所株式会社(以下「被告経営戦略」)に提出したところ、被告らが、原告に無断でこれを複製、改竄し、被告LECの講義用のテキストとして作成し配布したと主張して、被告らに対し、著作権(複製権)侵害及び著作者人格権(同一性保持権)侵害に基づく損害賠償の支払を求めた事案です。 

1 争点(1)(第8回テキスト原稿及び被告LECテキスト(第8回)は,原告メモ等に依拠して作成されたものか否か)について判断する。
 (略)
2 検討
(1) 以上の認定事実によると,原告は,本件講座の「第8回」のビデオ講義を担当し,ビデオ収録の際も,その旨告げていたところ,被告LECのスケジュール表によれば,本件講座の「第8回」は「財務」の講義であること,講義のテーマである「ビジネスプランの作成と評価」は,「新規事業開発」の主要項目ではあるが,本件講座においては,「第5回新規事業開発」の講義では扱わず,上記テーマが,財務会計と密接な関係があるため,第8回「財務」で詳しく展開することとされたこと,被告経営戦略のRも,「新規事業開発」の講義を2つに分け,「新規事業開発」の内容の一部を「財務」との関連での講義として構成した旨述べていること等からすると,原告が担当した講義は,「第8回財務」のビデオ講義であったと認めるのが相当である(原告は,担当したのは「新規事業開発」の講義であり,「第8回財務」ではなかったと主張するが,これを認めるに足りる証拠はない。)。
(2) そして,1に,第8回テキスト原稿及び被告LECテキスト(第8回)の作成経緯についてみると,上記認定のとおり,本件講座の「第8回財務」で使用された被告LECテキストの原稿の納品時期については,Rと被告LEC間におけるテキスト原稿のやり取りの経緯や,被告経営戦略が被告LECに提出した平成132月分の報酬支払明細書の記載,被告経営戦略が作成した内部資料である本件講座のスケジュール表における平成13226日時点でのテキスト等の準備に関する進捗状況,その後の報酬の支払の経緯,被告LECテキスト(第8回),第8回テキスト原稿及び原告メモ等の対比等によると,被告LECテキスト(第8回)の原稿は,平成132月中には完成し,既に被告LECに納品されていたと認めるのが相当である。
 すなわち,@Rは,テキストの前半部分を執筆した時点で,平成132月中頃,原告に後半部分の執筆と講義を依頼することとし,原告に対し,講義の趣旨を説明したり,項目,参考文献を提示して,具体的な指示を出していたこと,A原告は,その後,1週間程度で第8回テキスト原稿の後半印刷文字部分を送付してきたが,校正原稿については,Rは前半部分のみを推敲し,後半部分は原告が作成したものであるとの理由で,手を入れておらず,同年2月中には,被告LECに納品したこと,B原稿料も,執筆した頁数に応じて,原告とRで按分して支払をしたこと等,経緯に関して合理的な説明をしており,上記納品の時期は,委託業務の遂行と被告LECに対する請求の時期,被告LECによる原稿料の支払の時期とも整合している。
 2に,第8回テキスト原稿又は被告LECテキスト(第8回)と原告メモ等を形式面から対比すると,@被告LECテキスト(第8回)と第8回テキスト原稿は,概ね形式面において同一であるが,これらと原告メモ等と比較すると,主要項目の項目立ては同一であるが,小項目を設けるか否かについては,必ずしも同一ではなく,A原告メモ等の講義メモの手書きによる前半部分は,大半が口述用の文体で記載され,被告LECテキスト(第8回)とも第8回テキスト原稿と類似していない。
 3に,被告LECテキスト(第8回)及び第8回テキスト原稿と,原告メモ等を内容面から対比すると,原告メモ等の手書きによる前半部分及びカードにおいて,簡潔に記載されている項目について,被告LECテキスト(第8回)及び第8回テキスト原稿においては,説明文で記載されているなど,表現が異なっており,被告LECテキスト(第8回),第8回テキスト原稿及び原告メモ等は,客観的にも類似していると認めることができない。なお,前記のとおり,被告LECテキスト(第8回)の「8)成長管理」の項目の記載中には,第8回テキスト原稿にはその記載がなく,原告メモ等の記載とほぼ同一の部分があるが,他方,「8)成長管理」の中で,第8回テキスト原稿及び原告メモ等に共通に使用されている図表「創業期と転換期のマネジメント」は,いずれも株式会社グロービズ著「MBAビジネスプラン」の184頁「図表414創業期と転換期のマネジメント」を典拠としていると考えられるなど,被告LECテキスト(第8回)の「8)成長管理」の上記部分が,他の文献等によらずに,原告メモ等に基づいていると断定するだけの根拠もなく,上記第1ないし第3で認定したところに照らしても,上記部分があるからといって,被告LECテキスト(第8回)が原告メモ等に依拠したものと認めることはできない
 そうすると,被告LECテキスト(第8回)及び第8回テキスト原稿は,その作成の経緯や,形式面・内容面における対比からみて,原告メモ等に基づいて作成されたと認めることは困難であり,上記原稿は,平成132月中に完成し,被告LECに納品されたと認めるのが相当というべきである。
 したがって,原告によるビデオ講義の収録後,平成133月上旬に被告経営戦略に送付した原告メモ等に依拠して,Rにおいて,被告LECテキスト(第8回)を作成したとする原告の主張は,上記の第8回テキスト原稿の納品時期等との関係で認めることはできないというべきであり,その他,これを認めるに足りる証拠はない。
3 原告の予備的主張について
(1) また,原告は,被告経営戦略の他の講師であるSと行っていた他の書籍の執筆の関係で,原告メモ等を平成132月中に送付した可能性がある等と主張し,本人尋問においても,その旨供述するが,あくまでも可能性に留まるものであり,Rにおいて,原告メモ等の原稿に基づいて第8回テキスト原稿が作成されたことを推認するには足りないというべきである。
 仮に,原告メモ等が,平成132月中に被告経営戦略に送付され,第8回テキスト原稿及び被告LECテキスト(第8回)のうち,原告メモ等に依拠して作成された部分があったとしても,その場合は,前記のとおり,原告は,その部分についての原稿料を受領しているから,原告メモ等の利用について許諾していたものということができ,複製権侵害は成立しない
 (略)
4 以上によれば,争点(3)(著作権侵害行為の成否)については,第8回テキスト原稿による原告メモ等の流用,使用に基づき,被告LECテキスト(第8回)により原告メモ等の著作権が侵害されたとの原告の主張は,上記のとおり,原告メモ等に依拠して上記原稿及びテキストが作成されたことを認めることはできないから,理由がない。また,争点(4)(著作者人格権侵害行為の成否)について,原告メモ等の著作者人格権(同一性保持権)が侵害されたとの原告の主張も,同様に,認めることはできないと言わざるを得ない。
 
したがって,その余の点について判断するまでもなく,原告の請求は,理由がない。











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