著作権重要判例要旨[トップに戻る]







60条の適用解釈が問題となった事例(6)
「『生命の實相』復刻版事件」平成230304日東京地方裁判所(平成21()6368等) 

 [亡Aの死後の人格的利益の侵害行為の有無]
ア 原告Xは,本件Aの書籍1は,亡Aの死亡後,原告社会事業団らが亡Aの著書「生命の實相<黒布表紙版>」の第16巻として出版された「神道篇日本国の世界的使命」から「第1章古事記講義」を抜き出し,別の題号である「古事記と日本国の世界的使命−甦る『生命の實相』神道篇」を付して共同で出版したものであるところ,第16巻は戦後に「生命の實相」として出版された書籍から亡Aによって削除され,その出版を許さなかった著作物であるから,原告社会事業団らによる本件Aの書籍1の出版は,著作者である亡Aが存命であればその著作者人格権(同一性保持権)の侵害となるべき行為に該当し,亡Aの意を害するものであるから,著作権法60条に違反する旨主張する。
 そこで検討するに,…を総合すれば,@原告Xは,昭和60617日に死亡した亡Aの子であり,その遺族であること,A本件Aの書籍1は,「生命の實相<黒布表紙版>」の第16巻として出版された「神道篇日本国の世界的使命」から「第1章古事記講義」を抜き出したものであり,その題号は「古事記と日本国の世界的使命−甦る『生命の實相』神道篇」であること,B「生命の實相<黒布表紙版>」(全20巻)は,原告社会事業団の基本資産である本件生命の實相に含まれ,その第16巻の著作権は,原告社会事業団に帰属すること,C本件Aの書籍1は,原告社会事業団の許諾に基づいて,被告光明思想社が平成20927日に初版を発行したものであること,D戦後,亡Aの生前に発行された「生命の實相」と題する書籍には,「生命の實相<黒布表紙版>」の「第16巻神道篇」の内容は掲載されていないこと,E本件Aの書籍1の内容は,昭和1011月に亡Aが連続講義として第1回生長の家指導者講習会で行われた内容につき,月刊雑誌「生長の家」で昭和114月から連載されたものであって,それ自体の内容で完結した一体性のあるものであり,当該部分は,戦前に株式會社光明思想普及會が「驀進日本の心と力」という題号の単行本として独立して出版されたことがあることが認められる。
 一方で,亡Aが「生命の實相<黒布表紙版>」の第16巻「神道篇日本国の世界的使命」の「第1章古事記講義」の部分を戦後発表しない意思であったことを認めるに足りる証拠はない。
 かえって,甲25(神示講義「秘められたる神示」昭和361122日初版発行)には,「アメリカ軍を中心とする占領軍が日本に上陸して来て,神道と称う民族信仰を政府が利用して國民を戦争にあふつたのであるから,日本神道はよろしくないといふやうな進駐軍総司令部の意向であるといふので,『生命の實相』の第十六巻に収録されてあつた『古事記』の講義なども発禁の運命を甘受しなければならなかつた。私は,日本國家の前途を思ひ,日本民族に課せられた運命を思ひ,泣くに泣けない悲しみの中に,眠られぬ幾夜を過ごしてゐた(後略)」(6頁〜7頁)との記載があり,また,甲26(「生長の家五十年史」)には,「例へばこの期間中の昭和二十四年十一月より『生命の實相』全二十巻が復刊されることになつたのであるが,復刊するにあたつて,「天皇」及び「日本国」の実相と使命が説かれてゐる箇所は,削除されねばならなかつた。とりわけ“神道篇”は「古事記講義」が収録されてゐたために,GHQの検閲を受ける前に全集から取除かれ,“宗教戯曲篇”に変更されることになつた。」(382頁)との記載がある(判決注・原文の一部の漢字を常用漢字で表記)。
 また,本件Aの書籍1の題号は,「古事記と日本国の世界的使命−甦る『生命の實相』神道篇」であり,「生命の實相<黒布表紙版>」第16巻「神道篇日本国の世界的使命」の「第1章古事記講義」の篇名及び章名と一致していないが,「甦る」の2文字が加わったこと以外は,使用されている用語も同一で,これを並べ替えたものであることに照らすならば,本件Aの書籍1を上記題号とすることは,亡Aが存命であれば,その意に反する題号の改変には当たらないものと認められる
イ 上記認定事実を総合すれば,亡Aを著作者とする「生命の實相<黒布表紙版>」の第16巻「神道篇日本国の世界的使命」の中の「第1章古事記講義」の部分について,題号を「古事記と日本国の世界的使命−甦る『生命の實相』神道篇」として本件Aの書籍1を出版することは,「亡Aの意を害しない」(著作権法60条ただし書)ものと認められる
 したがって,本件Aの書籍1の出版が著作者である亡Aが存命であればその著作者人格権(同一性保持権)の侵害となるべき行為に該当するとの原告Xの上記主張は採用することができない。
 [謝罪広告掲載請求の可否]
ア 前記認定のとおり,本件Aの書籍1の出版が著作者である亡Aが存命であればその著作者人格権(同一性保持権)の侵害となるべき行為に該当するものではないから,原告Xの謝罪広告掲載請求は,理由がない。
イ 次に,原告社会事業団は,本件Aの書籍1は,亡Aが戦後の「生命の實相」より削除し,その出版を許さなかった著作物であり,原告社会事業団らによる本件Aの書籍1の出版行為は,「生長の家」の布教活動を不当に妨害するものであり,原告生長の家の名誉をも侵害するものである旨主張する。
 しかしながら,前記認定のとおり,本件Aの書籍1を出版することは,亡Aの意を害しないものと認められるから,原告生長の家の上記主張は,その前提を欠くものである。
 また,本件Aの書籍1の出版が原告生長の家における現在の布教活動の方針に反するとしても,本件Aの書籍1の著作権者である原告社会事業団が被告光明思想社に出版の許諾を行い,被告光明思想社がその許諾に基づいてこれを出版することは,著作権法上著作権あるいは出版権に基づく権利行使として認められているものであり,原告社会事業団及び被告光明思想社の上記行為が「生長の家」の布教活動を不当に妨害するものと認めることはできない。
 したがって,原告生長の家の謝罪広告掲載請求は,その余の点について判断するまでもなく,理由がない。
 
また,原告生長の家の本件Aの書籍1の出版による名誉毀損を理由とする損害賠償請求も理由がない。











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