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印税請求権の消滅時効の成否が問題となった事例
「『生命の實相』復刻版事件」平成230304日東京地方裁判所(平成21()6368等) 

 印税請求権の消滅時効の成否
ア 被告日本教文社は,被告日本教文社の原告社会事業団に対する印税の支払時期は,原則として月末締め翌月20日払(20日が休日の場合はその翌営業日),印税が1000万円を超える高額の場合は,月末締めで翌月20日と翌々月20日の2回に分けて支払うことを慣例としていたから,原告社会事業団の被告日本教文社に対する本件@の各書籍の印税請求権の消滅時効については,各版の支払期日である発行月の翌月20日(20日が休日の場合はその翌営業日)から順次時効期間が進行し,本件@の書籍1の初版,2版,5版,7版,9版ないし18版及び本件@の書籍2の初版ないし3版に係る印税請求権(合計2690万円)については,別紙1及び2の「支払期日」欄記載の日から商事債権の消滅時効期間である5年が経過しているから,消滅時効が完成した旨主張する。
 そこで検討するに,被告日本教文社の原告社会事業団に対する印税の支払時期は,原則として発行月の月末締め翌月20日払(20日が休日の場合はその翌営業日),印税が1000万円を超える高額の場合は,月末締めで翌月20日と翌々月20日の2回に分けて支払うことを慣例としていたこと(当事者間に争いがない。)からすれば,原告社会事業団の被告日本教文社に対する本件@の各書籍の印税請求権の支払期日は,被告日本教文社主張のとおり,別紙1及び2の「支払期日」欄記載の日と認めるのが相当である。
 そして,原告社会事業団は,上記支払期日から本件@の各書籍の印税請求権を行使することができるから,当該支払期日を起算点として消滅時効がそれぞれ進行するものと解される。
 しかるに,原告社会事業団の被告日本教文社に対する本件@の各書籍の印税請求権は,商行為である出版に関する行為(商法5026号)によって生じた債権であることから商事債権に該当するものと認められ,その消滅時効期間は5年となるところ,本件@の書籍1及び本件@の書籍2に係る印税請求権のうち,本件@の書籍1の初版,2版,5版,7版,9版ないし18版及び本件@の書籍2の初版ないし3版に係る印税請求権については,別紙1及び2の「支払期日」欄記載の日から商事債権の消滅時効期間である5年が経過しているから,消滅時効が完成したものと認められる。
 これに対し原告社会事業団は,「出版」とは,「複製」と「頒布」とで一つの行為が構成されており,実際に販売(頒布)されときに著作権者への印税の支払を行うのが自然であることからすれば,本件@の各書籍が1冊でも流通に置かれていれば,出版が継続しているといえるから,原告社会事業団の被告日本教文社に対する本件@の各書籍の印税請求権の消滅時効は進行しない旨主張する。
 しかし,本件@の各書籍が流通に置かれていることは,原告社会事業団が本件@の印税請求権を行使することの法律上の障害となるものとはいえず,原告社会事業団の主張は,独自の見解として採用することができない。
イ 被告日本教文社が本訴において消滅時効を援用したことは当裁判所に顕著である。
 そうすると,原告社会事業団の本件@の各書籍の印税請求権(別紙1及び2の「未払額」欄記載の合計2740万円)のうち,被告日本教文社が消滅時効を援用した合計2690万円については,時効により消滅したものと認められる。
 これに対し原告社会事業団は,出版社として長年の付き合いがあり,信頼関係もあった被告日本教文社から,長年の間にわたり,被告日本教文社が原告社会事業団に支払うべき本件@の各書籍の印税に未払がある事実を明らかにされることはなかったのであるから,被告日本教文社による本件@の各書籍の印税請求権についての消滅時効の援用は,著作権を尊重すべき立場にある出版社としてあるまじき反社会的態度であり,信義則に反し,権利の濫用に当たり許されない旨主張する。
 しかし,前記認定のとおり,被告日本教文社の原告社会事業団に対する印税の支払時期は,原則として月末締め翌月20日払(20日が休日の場合はその翌営業日),印税が1000万円を超える高額の場合は,月末締めで翌月20日と翌々月20日の2回に分けて支払うことを慣例としていたこと,原告社会事業団は,本件昭和49年契約に基づき被告日本教文社に対して出版状況を問い合わせて確認することが可能であったにもかかわらず,第1事件の訴え提起に至るまでそのような確認を行った形跡はうかがわれないことに照らすならば,被告日本教文社の消滅時効の援用が権利の濫用に当たるとまでは認められない。
ウ 小括
 
したがって,原告社会事業団の本件昭和49年契約に基づく本件@の各書籍の印税請求は,50万円(本件@の書籍119版の未払分)の支払を求める限度で理由があるが,その余の請求は理由がない。











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