著作権重要判例要旨[トップに戻る]







表現の自由とその制限
「‘第一次教科書訴訟’事件」
平成50316最高裁判所第三小法廷(昭和61()1428 

1 本件検定において合格とされた図書については、その名称、著作者の氏名及び発行者の住所氏名等一定の事項が官報に公告され(旧検定規則121項)、文部大臣が都道府県の教育委員会に送付する教科書の目録にその書目等が登載され、教育委員会が開催する教科書展示会にその見本を出品することができる(教科書の発行に関する臨時措置法51項、613項)。そして、前記のとおり、学校においては、教師、児童、生徒は右出品図書の中から採択された教科書を使用しなければならないとされている。他方、不合格とされた図書は、右のような特別な取扱いを受けることができず、教科書としての発行の道が閉ざされることになるが、右制約は、普通教育の場において使用義務が課せられている教科書という特殊な形態に限定されるのであって、不合格図書をそのまま一般図書として発行し、教師、児童、生徒を含む国民一般にこれを発表すること、すなわち思想の自由市場に登場させることは、何ら妨げられるところはない(原審の適法に確定した事実関係によれば、現に上告人は、昭和324月に検定不合格処分を受けた高等学校用日本史の教科用の図書とほとんど同じ内容のものを、昭和34年に一般図書として発行している。なお、上告人がその後も、右検定不合格図書を「検定不合格日本史」の名の下に、一般図書として発行し、版を重ねていることは、周知のところである)。また、一般図書として発行済みの図書をそのまま検定申請することももとより可能である。
2 憲法212項にいう検閲とは、行政権が主体となって、思想内容等の表現物を対象とし、その全部又は一部の発表の禁止を目的とし、対象とされる一定の表現物につき網羅的一般的に、発表前にその内容を審査した上、不適当と認めるものの発表を禁止することを特質として備えるものを指すと解すべきである。本件検定は、前記のとおり、一般図書としての発行を何ら妨げるものではなく、発表禁止目的や発表前の審査などの特質がないから、検閲に当たらず、憲法212項前段の規定に違反するものではない。このことは、当裁判所の判例(最高裁昭和591212日大法廷判決)の趣旨に徴して明らかである。
3 また、憲法211項にいう表現の自由といえども無制限に保障されるものではなく、公共の福祉による合理的で必要やむを得ない限度の制限を受けることがあり、その制限が右のような限度のものとして容認されるかどうかは、制限が必要とされる程度と、制限される自由の内容及び性質、これに加えられる具体的制限の態様及び程度等を較量して決せられるべきものである。これを本件検定についてみるのに、()前記のとおり、普通教育の場においては、教育の中立・公正、一定水準の確保等の要請があり、これを実現するためには、これらの観点に照らして不適切と認められる図書の教科書としての発行、使用等を禁止する必要があること(普通教育の場でこのような教科書を使用することは、批判能力の十分でない児童、生徒に無用の負担を与えるものである)、()その制限も、右の観点からして不適切と認められる内容を含む図書のみを、教科書という特殊な形態において発行を禁ずるものにすぎないことなどを考慮すると、本件検定による表現の自由の制限は、合理的で必要やむを得ない限度のものというべきであって、憲法211項の規定に違反するものではない。このことは、当裁判所の判例(最高裁昭和49116日大法廷判決、最高裁昭和58622日大法廷判決、最高裁平成471日大法廷判決)の趣旨に徴して明らかである。











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