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本文とは別個に記事のタイトル自体が被害者の名誉を毀損すると認定した事例
「『週刊アサヒ芸能』女子アナ記事事件」平成150218日東京地方裁判所(平成14()1522 

2 事案の概要
 本件は,フリーランスのアナウンサーである原告が,平成1312月及び平成67月に発売された「週刊アサヒ芸能」に掲載された記事によって名誉を毀損されたとして,これを発行した被告株式会社徳間書店並びに平成13年の記事を執筆した記者及び平成13年当時の週刊アサヒ芸能の編集長に対して,損害賠償とともに,平成13年の記事に関して週刊アサヒ芸能裏表紙に謝罪広告を掲載することを求めている事案である。
 (略)
3 当裁判所の判断
1 争点1(本件記事@等は原告の名誉を毀損するものか)について
(1) 「愛人」等の記述について
ア まず,本件記事@,本件表紙及び本件広告における「Dの元愛人」との記載(本件タイトル),本件記事@におけるDとの不倫が報じられたこともあった旨の記述(本文),原告が男性関係で失敗した旨の記述(本文),結婚していたにもかかわらずDとの不倫が報道され愛人扱いもされた旨の記述(本文)は,原告が過去にDと不倫関係にあったとの事実を摘示したものであることは明らかで,一般人に対し,このような不倫関係が存在したとの印象を与え,原告の名誉を毀損するものというべきである。
イ これに対し,被告らは,原告とDとの関係はすでに多くのメディアにより報道されており,世間一般に広く知れ渡っていることであるから,本件記事@により原告の社会的評価が低下することはないと主張する。
 そこで,原告とDとのこれまでの報道内容(以下「既報記事」という。)を検討する。…
 ところで,上記のとおり原告とDとの関係が話題となったのは平成58月であるところ,本件雑誌が発売されたのは平成1312月であり8年間以上の隔たりがあり,直近の報道でも平成99月であり,本件雑誌の発売とは4年以上の隔たりがある。そして,既報記事のうち初期の報道は,原告とDとの不倫を主題としてものであったが,平成6年以降の記事は,Dと他の女性との関係を報じるにあたって原告を引き合いに出したものや,原告を紹介するにあたって平成58月の報道に触れたものにすぎない。
 一方,本件記事@の主題は,本件映像に関するものであることは明らかであり,既報記事の報道内容とは質的に異なる上,原告が「Dの元愛人」であったか否かにより,その記事の内容に変化をきたすものとは認められない。そして,週刊アサヒ芸能と既報記事の雑誌の読者層が同一とは限らず,上記のとおり既報記事の報道時期と本件雑誌の発売時期とは相当間隔があいていることの諸点を考慮すれば,既報記事をもって原告の社会的評価がすでに低下していて本件記事@によって新たに原告の社会的評価が低下することはない,ということはできない。
ウ なお,被告らは,その主張のアにおいて,原告は有名な女子アナウンサーとして活躍しているから,有名タレントと同様に新聞,雑誌等の記事の対象になることを容認していたとか,過去の報道について何ら名誉回復のための措置を取っておらず,Dとの関係が報じられることについて包括的に容認していたなどと主張しているが,有名なアナウンサーだからといって名誉やプライバシーが当然に保護されないということはないし,また,平成5年当時に原告が既報記事に対して法的手段等を採らなかったことをもって,その報道内容を容認したことになるものではないことも当然である。したがって,被告らの上記主張を採用することはできない。
(2) 本件映像に関する記述について
ア 次に,本件記事@,本件表紙及び本件広告における「Aアナを襲うこれが『乳首モロ出し画像』だ!」との記載(本件タイトル)について検討すると,この記載は,原告の乳首が映った映像が存在し,その映像が本件雑誌に掲載されているとの事実を摘示したものと認められ,このタイトルだけを読んだ一般読者にその様な印象を与えるものであり,これにより女性としての原告の社会的評価を下げ,その名誉を毀損するものと認めるのが相当である。
 これに対し,被告らは,本件タイトルの趣旨は,原告が映っていないにもかかわらず映っているとして話題になっていた本件映像に原告が襲われていること,すなわち,本件映像によって原告が被害にあっていることを示すものであると主張する。しかし,本件タイトルのみを目にした一般読者の通常の読み方を基準とすると,「乳首モロ出し画像」との表現は,誰の映像か明記されていないこともあって,通常その上部に氏名が記載されている原告の映像であるとの印象を抱かせるものであり,「襲う」との表現も,原告が自身の「乳首モロ出し画像」を暴露されているとの印象を強めるものであると解されるのであって,一般読者に被告らが主張するような印象を抱かせるものではないというべきである。
イ 他方,本件記事@の本文は,冒頭部分で本件映像が原告を映したものであるかのような記述がなされているものの,本件番組のプロデューサーが本件映像が資料映像であると述べた旨が明確に記載されており,それを前提として,原告を映した画像であると誤解されることは容易に想像でき,原告が「今回の事件」の被害者であることや,本件映像がインターネット上で取引されていることなどの記述がなされているのであって,これらの記述は,テレビ朝日の本件番組で,原告の乳首を映したものと一般視聴者に誤解されるような画像が放送されたことや,インターネット上でそのような誤解を前提として画像が取引されていることなどを報道したものであり,原告の名誉を毀損するものとはいえない。
() ところで,雑誌の表紙や広告などに掲記される記事のタイトルは,一般的に,限られた字数の中で記事内容を要約する必要からある程度の省略がなされることがあり,また,読者の関心をひいて購買意欲をそそるためしばしばある程度の誇張や脚色を伴った表現がなされることもあるところ,一般読者もそのような認識に基づいて記事のタイトルを判断するのが通常であると考えられる。そこで,当該記事及びそのタイトル(見出し)が第三者の名誉を侵害するものであるか否かを判断する場合には,タイトルの内容が,記事全体の内容をある程度省略したものであったり,多少の誇張はあるものの本文記事の内容と概ね一致する場合には,これらを一体として判断するのが相当であるが,タイトル(見出し)が記事全体の内容と一致しないものであったり,過度に誇張・脚色がなされているため,一般読者に記事全体から受ける印象と全く異なる印象を与えるような場合には,そのタイトルは,本文記事とは別個の表現物として,独立の判断対象とするのが相当である。
() これを本件についてみると,前記のとおり,本件タイトルの摘示内容は,本件記事@の内容と正反対の内容を持つものと考えられるから,両者を一体の表現物として評価するのは相当でなく,別個の表現物として評価すべきである。そして,上記アで認定判示したとおり,本件タイトルは原告の名誉を毀損するものと認められるところ,本件記事@の本文を読めば,一般読者の誤解は解消されるであろうが,電車の中吊り広告や本件表紙を見た読者が全て本件記事を読むとは限らないから,本件記事@の内容が誤解を与えるものでないとしても,本件タイトルによる原告の名誉毀損を否定することはできないというべきである。
2 争点2(本件記事Aは原告の名誉を毀損するものか)について
(1) 本件記事Aの内容は,…に記載したとおりであり,人妻である原告が,Dのマンションに通うなど平成58月当時に取り沙汰された関係が平成67月時点でもまだ続いていて,夫とは別居していることなどの事実を摘示し,一般読者に対して,原告が結婚しているにもかかわらず不倫相手のマンションに通っているとの印象を与えるものである。さらに,そのタイトルにおいて「通い同棲中」との表現が用いられており,原告が「同棲」と評されるほど足繁くDのマンションに通っているとの印象を与えている。
 このような印象を与える本件記事Aにより,原告の社会的評価が低下することは明らかである。
(2) 被告らは,本件記事@について主張したのと同様,原告とDとの関係はすでに報道により世間一般に知れ渡っているところであり,本件記事Aは原告の社会的評価をさらに低下させるものではないと主張する。
 しかし,本件記事Aは平成67月に発売された週刊アサヒ芸能に掲載されたところ,それ以前に報道されていたのは,上記で認定したとおり,平成58月に原告がDと食事をした後同選手の自宅マンションに赴いたことをもって「不倫デート」などと報じた複数の記事のほか,平成61月にDには原告以外に「本命」の女性がいるとの噂があることなどを報じた記事のみである。
 しかも,本件記事Aは,Dとの関係が大きく報じられた時期から1年近く経過した後のものであることや,既報記事がDとの関係の継続性を指摘していないのに対して,本件記事Aは同時期からDとの関係が継続しているとの事実を新たに摘示し,原告がDのマンションに足繁く通っていることや夫と別居していることなどを紹介することによって,その確実性を強く印象づける結果になっていることなどの事情からすると,本件記事Aは,原告の社会的評価をさらに低下させたものといえる。
3 争点3(慰謝料及び名誉回復措置)について
(1) 慰謝料について
 …によれば,原告は,Dとの関係について報道されたことにより,平成512月にテレビ朝日を退社し,私生活においても平成75月に離婚を余儀なくされ,カウンセリングを受けるなどしていたが,平成114月に慶應義塾大学に入学し,将来に対する希望を持つことができる心理状態になって,平成1210月から,夕方の報道番組である本件番組のレポーターとしてテレビ朝日に復帰したことが認められる。
 そして,本件記事Aは,平成58月に原告とDとの関係が複数の週刊誌等で大きく報道されていた時期から1年近く経過し,世間の原告に対する関心が薄らいできたと考えられる時期に出されたものである。また,既報記事に新たな事実を付け加えるものではあるが,既報記事の内容と同趣旨のものである。更に,本件記事Aの掲載された週刊アサヒ芸能が発売されてから,既に8年以上が経過している。
 また,本件記事@は,テレビ朝日に復帰後1年程度の時期に出されたものであり,原告本人尋問の結果によれば,本件記事@により仕事の量は特に変わらないというものの,原告は萎縮し,また所属事務所のマネージャーから仕事がしにくくなったと言われるなど,原告の仕事や私生活に影響を与えていることが認められる。
 
他方,本件記事@のうちDとの関係は過去に報じられたものであること,記事本文を併せて読めば,本件タイトルのうち本件映像に関する部分を誤解することはないこと,新聞紙上に本件広告が出されたのがスポーツ新聞4紙の東京版・大阪版のみであることなどの事情も認められる。
 上記の各事情及び,前示の認定事実に係る諸般の事情を総合考慮すれば,原告の受けた精神的苦痛を慰謝すべき慰謝料の金額は,本件記事@等のタイトルについては150万円,本件記事Aについては100万円をもって相当と認める。
(2) 謝罪広告について
 本件記事@による原告に対する名誉毀損の態様,その程度及びその影響,原告の職業活動の状況や知名度,本判決により上記の慰謝料の支払が命ぜられること,その他本件に顕れた諸般の事情を総合考慮すれば,原告の名誉を回復するために原告が求めている謝罪広告を必要とするとは認められない。
(3) 弁護士費用について
 
本件訴訟における認容額,訴訟追行の難易,その他本件に顕れた諸般の事情を総合考慮すれば,被告らの不法行為と相当因果関係のある弁護士費用の額は,本件記事@等については20万円,本件記事Aについては10万円をもって相当と認める。











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