著作権重要判例要旨[トップに戻る]







著作権侵害の成否(9)
「‘吹きゴマ折り図事件平成230520日東京地方裁判所(平成22()18968/平成231226日知的財産高等裁判所(平成23()10038 

【原審】

 原告は,本件折り図と被告折り図は,いずれも完成形の折り方を表現するものであり,手順1ないし10の説明図と完成形を示した説明図の選択及び組合せはすべて類似し,また,選択したそれぞれの説明図においては,折り筋・折り目,矢印の配置が些末な点を除いて同一であり,しかも,折り紙の向きがすべて同じであり,重要な説明文においても同様の表現が用いられているから,被告折り図から,本件折り図の表現上の本質的特徴を直接感得することができる旨主張する。
 しかしながら,原告の主張は,以下のとおり理由がない。
 原告は,本件折り図と被告折り図は,手順1ないし10の説明図と完成形を示した説明図の選択及び組合せはすべて類似し,また,選択したそれぞれの説明図においては,折り筋・折り目,矢印の配置が些末な点を除いて同一であり,しかも,折り紙の向きがすべて同じである旨主張する。
 確かに,原告が主張するように,本件折り図と被告折り図は,32の折り工程からなる「へんしんふきごま」(吹きゴマ)の折り方について,10個の図面(説明図)及び完成形を示した図面(説明図)によって説明し,各説明図でまとめて選択した折り工程の内容及び紙の上下左右の向きを一定方向に固定している点で共通し,また,折り筋・折り目,矢印の配置についても,大部分が共通しているといえる。
 しかし,「へんしんふきごま」の折り方そのものは,所与のものであることから,折り筋を付ける箇所,折り筋に従って折る方向を示す矢印の配置が共通することは避けられないことである。
 また,32の折り工程のうち,どこからどこまでの折り工程を一つの手順にまとめて何個の説明図を用いて説明するかについては選択の幅があるが,本件折り図のように,各折り工程を1ないし10の手順にまとめて10個の図面(説明図)を用いた構成とすること自体はアイディアであり,著作権法によって保護される表現とはいえない
 さらに,本件折り図に示すような向きに紙の向きを固定した上で,各折り工程を説明することは,ありふれた表現である
 したがって,上記の共通点は,本件折り図の表現上の本質的特徴を示したものということはできないから,上記の共通点が存在するからといって,被告折り図から,本件折り図の表現上の本質的特徴を直接感得することができるものではない

【控訴審】

 また,原告は,本件折り図の「32の折り工程のうち,どの折り工程を選択し,一連の折り図として表現するか,何個の説明図を用いて説明するか」は,アイデアではなく,表現であるとして,被告折り図と本件折り図とは,上記の点において共通するので,被告が被告折り図を作成する行為は,本件折り図について有する原告の複製権ないし翻案権を侵害すると主張する。
 しかし,原告の主張は,主張自体失当である。
 すなわち,著作権法により,保護の対象とされるのは,「思想又は感情」を創作的に表現したものであって,思想や感情そのものではない(著作権法211号参照)。原告の主張に係る「32の折り工程のうち,10個の図面によって行うとの説明の手法」それ自体は,著作権法による保護の対象とされるものではない
 上記のとおり,被告折り図と本件折り図とを対比すると,①32の折り工程からなる折り方について,10個の図面(説明図)及び完成形を示した図面(説明図)による説明手法,②いくつかの工程をまとめた説明手法及び内容,③各説明図は,紙の上下左右の向きを一定方向に固定し,折り筋を付ける箇所を点線で,付けられた折筋を実線で,折り筋を付ける手順を矢印で示しているという説明手法等において共通する。しかし,これらは,読者に対し,わかりやすく説明するための手法上の共通点であって,具体的表現における共通点ではない。そして,具体的表現態様について対比すると,本件折り図と被告折り図とは,上記のとおり,数多くの相違点が存在する。被告折り図は本件折り図の有形的な再製には当たらず,また,被告折り図から本件折り図の表現上の本質的特徴が直接感得できるともいえない。
 
したがって,被告が,被告折り図を作成することによって本件折り図を複製ないし翻案した旨の原告の主張は採用できない。











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