著作権重要判例要旨[トップに戻る]







一般不法行為の成否-否認事例(24)-
「‘吹きゴマ折り図事件平成230520日東京地方裁判所(平成22()18968/平成231226日知的財産高等裁判所(平成23()10038 

【コメント】本件は、折り紙作家である原告が、テレビドラマの番組ホームページに「吹きゴマ」の折り図(説明文を含む。以下「被告折り図」という。)を掲載した被告に対し、主位的に、被告折り図は、「1枚のかみでおる おりがみ おって遊ぶ-アクションおりがみ-」と題する書籍(「原告書籍」)に掲載された「へんしんふきごま」の折り図(説明文を含む。以下「本件折り図」という。)を複製又は翻案したものであり、被告による被告折り図の作成及び番組ホームページへの掲載行為は原告の著作物である本件折り図についての著作権(複製権ないし翻案権、公衆送信権)及び著作者人格権(氏名表示権、同一性保持権)の侵害に当たる旨主張し、著作権侵害及び著作権人格権侵害の不法行為による損害賠償金の支払などを求め、予備的に、仮に被告の上記行為が著作権侵害及び著作権人格権侵害に当たらないとしても、原告の有する法的保護に値する利益の侵害に当たる旨主張し、上記利益の侵害の不法行為による同額の損害賠償金等の支払などを求めた事案です。 

【原審】

 法的保護に値する利益の侵害を理由とする不法行為の成否等について(予備的請求関係)
(1) 法的保護に値する利益の侵害を理由とする不法行為の成否
 原告は,①被告が,本件折り図と同一又は酷似した被告折り図を,本件ドラマの番組宣伝活動の一環として原告に無断で本件ホームページ上に掲載して利用した行為は,創作折り紙作家である原告が長年の研究・試行錯誤・努力の結果,最終成果物として作成した本件折り図を,何らの対価も支払わず,かつ,折り図を作成するまでの人的資源,時間等の負担を全く負わず,原告の努力の成果をかすめ取るものである,②被告は,原告が創作した「へんしんふきごま」の折り紙を,無断で本件ドラマで使用し,被告折り図を本件ホームページに掲載することによって,ドラマの視聴率を高め,ひいては広告収入等の増加という効果を得ており,このように原告が研究・工夫して作製した「へんしんふきごま」とその折り図に視聴者・読者の誘引力が認められる以上,それらの管理及び利用について許諾を与えることによって得られる利益は法的保護に値するのであって,この利益を蔑ろにして収益を上げた被告の行為は違法性が高い,③一般に他者の出版物の無断転用は禁じられているというのが出版業界及び放送事業界で確立された商慣習であって,被告の行為はこのような商慣習を全く無視する,いわゆる「フリーライド(ただ乗り)」行為にほかならず,社会に多大な影響力を有するメディアの一社として知的財産権等の保護に努めるべき社会的責任を負う被告が,かえって他者の権利侵害を助長する行為に及んだという点からも,一層違法性が高いなどとして,被告が被告折り図を作成し,これを本件ホームページに原告に無断で掲載した行為は,公正な自由競争として社会的に許容される限度を超えるものであって,原告の法的保護に値する利益を違法に侵害したものとして不法行為を構成する旨主張する。
 しかしながら,原告の主張は,以下のとおり理由がない。
ア 前記のとおり,被告折り図から本件折り図の表現上の本質的特徴を直接感得することができないのであるから,被告が被告折り図を本件ホームページに掲載して利用したことは,原告が本件折り図の利用に関して保有する法的利益を侵害したものとは認められない
 また,原告が,原告書籍に本件折り図を掲載して「へんしんふきごま」の折り方を公表したのは,「へんしんふきごま」の折り紙作品を普及させることを前提とするものであって,誰もが「へんしんふきごま」の折り紙作品を作成することを認めたものというべきであるから,被告が原告の許諾を得ずに本件ドラマで「へんしんふきごま」の折り紙作品を用いたことが違法な行為に当たるということもできない
イ なお,前記のとおり,被告折り図は,7番目の説明図における折り筋(折り目)を示した点線の位置が,本件折り図の手順7の説明図に示された正しい位置と異なるため,被告折り図に従って折り進めても,完成形に至ることはできないものであるが,このような不完全な被告折り図を本件ホームページに掲載したことによって原告の法的利益が具体的に侵害されたことを認めるに足りる証拠はない。
 かえって,①被告折り図から本件折り図の表現上の本質的特徴を直接感得することができないこと,②本件ドラマの視聴者と思われる者が,インターネットの質問投稿サイトで,本件ドラマで用いられた「へんしんふきごま」の折り紙作品について質問をしたのに対して,原告書籍の出版社のホームページを紹介する回答が寄せられていること,③本件ドラマの視聴者と思われる者が,自身のブログで,原告書籍を紹介していること,④被告は,平成2172日,原告から,本件ホームページから被告折り図を削除するようメールで抗議を受けた後,同月7日に本件ホームページに被告折り図を掲載することを止めて,その代わりに,「へんしんふきごま」の「正しい折り方」として,原告について紹介し,原告のホームページへのリンクを貼っていることからすると,本件ドラマの視聴者など本件ホームページの閲覧者において被告折り図と本件折り図を誤認混同したり,原告が被告折り図を作成したかのような誤解が生じることはなかったというべきである。
ウ 以上を総合すれば,被告が平成21628日に本件ホームページに被告折り図を掲載し,原告からの抗議を受けた後も5日間にわたって本件ホームページに被告折り図を掲載したままにしておいたという事実を踏まえたとしても,原告が主張する被告の一連の行為が原告の法的保護に値する利益を侵害する違法なものとして不法行為を構成するものと認めることはできない。
(2) 小括
 以上によれば,原告主張の法的保護に値する利益の侵害を理由とする不法行為の成立は認められないから,その余の点について判断するまでもなく,原告の予備的請求は,いずれも理由がない。

【控訴審】

 法的保護に値する利益の侵害を理由とする不法行為の成否等について(予備的請求関係)
 原告は,原告が独自に創作した著作物である「へんしんふきごま」という折り紙作品を,原告の許諾なくこれをテレビで放映することは,公衆送信権の侵害に当たり,不法行為が成立する,被告が,原告の本件折り図を無断で改変し,原告から許諾を得ることなく自身のホームページに掲載し,原告がこれに気付いて被告に平成2172日に抗議したにもかかわらず,相当期間経過後である同月7日まで放置した行為は,不法行為を構成する旨主張する。
 しかし,原告の主張はいずれも失当である。
 …によれば,原告は,平成2195日の被告PRセンター担当者宛てメールで,作品を番組の中に登場させるのに許可は必要だとは思っていない旨回答しており,同年1020日の被告宛て「通知書」でも,「へんしんふきごま」という折り紙作品が番組で放映されたことについての抗議はしていない。そうすると,原告は,「へんしんふきごま」という折り紙作品がテレビ番組において放映されることについては,事後的に許諾を与えたと認められるか,又は,少なくとも社会通念に照らして容認したものと認められるから,被告による上記放映によって原告の公衆送信権が侵害されたとはいえない。
 
また,被告が,原告から許諾を得ることなく,被告折り図を被告のホームページに掲載し,原告が平成2172日に抗議したにもかかわらず,同月7日まで放置する行為をしたとしても,被告折り図が原告の著作権ないし著作者人格権を侵害しないものである以上,被告の上記行為が不法行為を構成するとはいえない。また,前記の事実経過に照らし,被告の行為によって,原告の法律上保護される利益は侵害されていない。











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