著作権重要判例要旨[トップに戻る]







インターネットを介した国内放送海外視聴サービス提供事業者の侵害主体性
「ビデオデッキレンタルシステム『ロクラクU』事件-差戻審-
平成240131日知的財産高等裁判所(平成23()10011等) 

 [事案の概要]
 1審,差戻前の第2審,上告審,差戻後の当審の経緯は,以下のとおりである。
(1) 1
 原告らは放送事業者であり,脱退原告らは放送事業者であった者である。脱退前原告らは,被告が「ロクラクUビデオデッキレンタル」との名称で,インターネット通信機能を有する21組のハードディスクレコーダー「ロクラクU」のうち,1台を日本国内に設置し,テレビ放送に係る放送波をその1台に入力するとともに,これに対応する1台を利用者に貸与又は譲渡することにより,当該利用者をして日本国内で放送されるテレビ番組の複製又は視聴を可能にするサービス(「本件対象サービス」)を行うことは,原告NHK及び脱退前原告東京局各社が著作権を有する別紙著作物目録記載の各テレビ番組(「本件番組」)及び脱退前原告らが著作隣接権を有する別紙放送目録記載の放送(「本件放送」)に係る音又は影像の複製に当たり,上記著作権(著作権法21条)及び著作隣接権(著作権法98条)を侵害するとして,本件番組を複製の対象とすること及び本件放送に係る音又は影像を録音又は録画の対象とすることの差止め,本件対象サービスに供されているロクラクUの親機の廃棄を求めるとともに,損害賠償の支払を求めた。これに対し,被告は,本件サービス(親子機能を有する2台のロクラクUをセットにして,双方を有償で貸与するか,子機ロクラクを販売し,親機ロクラクを有償で貸与する事業。以下同じ)において,本件放送番組等の複製行為の主体は被告でないなどとして争った。
 1審は,被告が本件放送番組等の複製行為を行っていることを認め,被告に対し,著作権(著作権法21条)及び著作隣接権(著作権法98条)に基づき,本件番組を複製の対象とすること及び本件放送に係る音又は影像を録音又は録画の対象とすることの差止め,本件対象サービスに供されているロクラクUの親機の廃棄,並びに損害賠償請求の一部について認容し,その余の脱退前原告らの請求を棄却した。
 これに対し,被告が,第1審判決の取消しと脱退前原告らの請求の全部棄却を求めて控訴し,脱退前原告らが,第1審判決の脱退前原告ら敗訴部分の取消しと損害賠償請求の全部認容を求めて附帯控訴をした。
(2) 差戻前の第2
 差戻前の第2審(知的財産高等裁判所平成20年(ネ)第10055号,第1069号事件)において,脱退原告フジテレビが脱退し,原告フジテレビが訴訟承継した。
 差戻前の第2審は,本件サービスは,利用者の自由な意思に基づいて行われる適法な私的使用のための複製行為の実施を容易にするための環境,条件等を提供しているにすぎないものであって,被告が本件放送番組等の複製行為を行っているものとは認められないとして,第1審判決中,被告敗訴部分を取り消し,脱退前原告ら(ただし,脱退原告フジテレビが脱退し,原告フジテレビが訴訟承継人となっている。)の請求(附帯控訴部分を含む。)をいずれも棄却した。
 これに対し,上記脱退前原告らが,差戻前の第2審判決の取消しを求めて,上告(最高裁判所平成21年(オ)第680号)及び上告受理申立て(最高裁判所平成21年(受)第788号)をした。
(3) 上告審及び差戻後の当審
 最高裁判所は,平成221028日,上記上告を棄却するとともに,上記上告受理申立てについて,これを受理するとの決定をした。そして,最高裁判所は,平成23120日,「放送番組等の複製物を取得することを可能にするサービスにおいて,サービスを提供する者(以下『サービス提供者』という。)が,その管理,支配下において,テレビアンテナで受信した放送を複製の機能を有する機器(以下『複製機器』という。)に入力していて,当該複製機器に録画の指示がされると放送番組等の複製が自動的に行われる場合には,その録画の指示を当該サービスの利用者がするものであっても,サービス提供者はその複製の主体であると解するのが相当である」として,本件サービスにおける親機ロクラクの管理状況等を認定することなく,上記脱退前原告らの請求を棄却した差戻前の第2審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとして,差戻前の第2審判決を破棄し,親機ロクラクの管理状況等について更に審理を尽くさせるため,本件を知的財産高等裁判所に差し戻した。
 (略)
 [当裁判所の判断]
1 争点1(被告は,本件放送番組等の複製の主体か)について
 上記…のとおり,最高裁判所は,「放送番組等の複製物を取得することを可能にするサービスにおいて,サービスを提供する者(サービス提供者)が,その管理,支配下において,テレビアンテナで受信した放送を複製の機能を有する機器(複製機器)に入力していて,当該複製機器に録画の指示がされると放送番組等の複製が自動的に行われる場合には,その録画の指示を当該サービスの利用者がするものであっても,サービス提供者はその複製の主体であると解するのが相当である。」,「複製の主体の判断に当たっては,複製の対象,方法,複製への関与の内容,程度等の諸要素を考慮して,誰が当該著作物の複製をしているといえるかを判断するのが相当である」等と判示して,本件サービスにおける親機ロクラクの管理状況等について,更なる審理を尽くさせる必要があるとした。
 当裁判所は,審理の結果,本件サービスにおける,複製の対象,方法,複製への関与の内容,程度等の諸要素を考慮すると,被告は,放送番組等の複製物を取得することを可能にする本件サービスにおいて,その支配,管理下において,テレビアンテナで受信した放送を複製の機能を有する機器に入力していて,当該複製機器に録画の指示がされると放送番組等の複製が自動的に行われる場合におけるサービス提供者に該当し,したがって,被告は,本件放送番組等の複製の主体であると認定,判断すべきであると解した
 その理由は,以下のとおりである。
(1) 事実認定
 (略)
(2) 判断
 上記認定した事実に基づいて判断する。
 まず,ロクラクUは,親機ロクラクと子機ロクラクとをインターネットを介して11で対応させることにより,親機ロクラクにおいて受信した放送番組等を別の場所に設置した子機ロクラクにおいて視聴することができる機器であり,親機ロクラクは,設置場所においてテレビアンテナを用いて受信した放送番組等をハードディスクに録画し,当該録画に係るデータをインターネットを介して,子機ロクラクに送信するものであって,ロクラクUは,親子機能を利用するに当たり,放送番組等を複製するものといえる。
 また,被告は,上記のような仕組みを有するロクラクUを利用者にレンタルし,月々,賃料(レンタル料)を得ている(なお,被告は,第1審判決前の時点において,一般利用者に対し,親機ロクラクと子機ロクラクの双方を販売していたとは認められないのみならず,同判決後の時点においても,親機ロクラクと子機ロクラクのセット価格が398000円と高額に設定されていることからすれば,親機ロクラクと子機ロクラクの双方を購入する利用者は,ほとんどいないものと推認される。)。そして,日本国内において,本件サービスを利用し,居住地等では視聴できない他の放送エリアの放送番組等を受信しようとする需要は多くないものと解されるから,本件サービスは,主に日本国外に居住する利用者が,日本国内の放送番組等を視聴するためのサービスであると解される。
 
さらに,本件サービスは,利用者が,日本国内に親機ロクラクの設置場所(上記のとおり,電源供給環境のほか,テレビアンテナ及び高速インターネットへの接続環境を必要とする。)を確保すること等の煩わしさを解消させる目的で,サービス提供者が,利用者に対し,親機ロクラクの設置場所を提供することを当然の前提としたサービスであると理解できる。
 そして,被告は,本件モニタ事業当時には,ほとんどの親機ロクラクを被告本社事業所内に設置,保管し,これに電源を供給し,高速インターネット回線に接続するとともに,分配機等を介して,テレビアンテナに接続することにより,日本国外に居住する利用者が,日本国内の放送番組等の複製及び視聴をすることを可能にしていたことが認められる。
 また,被告は,本件サービスにおいて,当初は,親機ロクラクの設置場所として,被告自らハウジングセンターを設置することを計画していたこと,ところが,被告は,原告NHKらから,本件サービスが著作権侵害等に該当する旨の警告を受けたため,利用者に対し,自ら或いは取扱業者等をして,ハウジング業者等の紹介をし,ロクラクUのレンタル契約とは別に,利用者とハウジング業者等との間で親機ロクラクの設置場所に係る賃貸借契約を締結させるとの付随的な便宜供与をしたこと,親機ロクラクの設置場所に係る賃料については,被告自ら又は被告と密接な関係を有する日本コンピュータにおいて,クレジットカード決済に係る収納代行サービスの契約当事者になり,本件サービスに係る事業を継続したことが認められる。
 上記の複製への関与の内容,程度等の諸要素を総合するならば,@被告は,本件サービスを継続するに当たり,自ら,若しくは取扱業者等又はハウジング業者を補助者とし,又はこれらと共同し,本件サービスに係る親機ロクラクを設置,管理しており,また,A被告は,その管理支配下において,テレビアンテナで受信した放送番組等を複製機器である親機ロクラクに入力していて,本件サービスの利用者が,その録画の指示をすると,上記親機ロクラクにおいて,本件放送番組等の複製が自動的に行われる状態を継続的に作出しているということができる。したがって,本件対象サービスの提供者たる被告が,本件放送番組等の複製の主体であると解すべきである。
(3) 被告の主張に対して
 被告は,本件サービス開始以降,親機ロクラクの設置,保管は,取扱業者等の仲介により,NS社,WPAM社及びホライズン社等のハウジング業者が行っており(現在レンタルされている親機ロクラクの約9割がホライズン社に設置されている。),被告は,本件モニタ事業時に被告本社事業所に設置された親機ロクラクが全て他所に移動された平成18110日以降,親機ロクラクの設置,保管には関与しておらず,設置場所に関する対価も得ていないと主張する。
 (略)
 しかし,上記各証拠は,いずれも被告とその関係者との間の内部的な文書にすぎず,仮にこれが作成名義人により作成日付の日に作成されたものであるとしても,その記載内容が直ちに事実であると推認することはできない上,上記各証拠に記載された内容は,以下のとおり,到底採用することができない。
 (略)
 以上によれば,被告提出の上記各証拠は,客観的な事実や関係者の供述と齟齬する部分があり,採用することができない。被告は,第1審において,脱退前原告らのみならず,裁判所からも,親機ロクラクの具体的設置状況について明らかにするよう求められながら,信用性に乏しい上記各証拠の提出を繰り返しており,このような不誠実な訴訟態度に照らしても,被告の親機ロクラクの設置場所に関する上記主張を採用することはできない。
(4) 小括
 以上のとおり,被告は,本件サービスを継続するに当たり,自ら,若しくは取扱業者等又はハウジング業者を補助者とし,又はこれと共同し,本件サービスに係る親機ロクラクを設置,管理しており,その管理支配下において,テレビアンテナで受信した放送番組等を複製機器である親機ロクラクに入力していて,本件サービスの利用者が,その録画の指示をすると,上記親機ロクラクにおいて,本件放送番組等の複製が自動的に行われる状態を作出しているということができる。したがって,本件対象サービスの提供者たる被告が,本件放送番組等の複製の主体であると解すべきである。
 
本件においては,被告は,利用者から親機ロクラクの設置場所に関する対価を,直接的に受領しているか否か,また,本件対象サービスに係る親機ロクラクの設置場所がどこであるか,必ずしも確定的に認定することはできないが,そのような事情は,前記の認定,判断を左右するものではない。また,仮に,親機ロクラクの多くが,ホライズン社に設置されているとしても,被告の管理支配下にあるものとみることができる。











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