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利用許諾契約の解釈(25)
DVD『中国の世界遺産』事件」平成230711日東京地方裁判所(平成21()10932 

【コメント】本件は、中国中央電視台(中華人民共和国の国営放送。以下「CCTV」。)のグループ会社で中華人民共和国法人である原告が、CCTVの放送用として製作された「中国世界自然文化遺産」と題する記録映画の著作権を有するとして、被告の製作・販売に係る「中国の世界遺産」と題するDVDが当該記録映画を複製又は翻案したものである旨主張して、被告に対し、不法行為に基づく損害賠償金等の支払を求めた事案です。 

 本件各原版の利用許諾の有無について
(1) …によれば,以下の各事実がそれぞれ認められる。
GMG,卓倫社及び新天社とは,平成1564本件意向協議書を締結した。本件意向協議書には,「本協議書中の各代理授権事項と許可は,その他の付随協議書の中で別途取決めるものとする。」(冒頭)と定められ,概念の定義として,「『本番組』とは,授権側が提供する編集済みの完成されたテレビ番組『世界自然文化遺産』中国編(全二十八本)をいう。」(1.1.(a)),「『素材』とは,授権側が編集していない,『本番組』を制作するためのオリジナル資料をいう。」(1.1.(b))とされている。そして,「『BJZL』(注記:卓倫社を指す。)はここにGMGSTS(注記:新天社を指す。)に代理として,全世界に向けて(中国大陸は除く)本番組を発行,販売,放映する権利を授権する。」(3.1),「『BJZL』はここにGMGSTSに代理として,本番組の素材を利用して番組を改編し,全世界に向けて(中国大陸は除く)改編番組を発行,販売,放映する権利を授権する。」(3.2),「『BJZL』はGMGSTSの代理として授権するが,本番組及び本番組の素材を利用して改編した番組から派生したすべての既知または未知の関連製品には以下のものが含まれるが,それに限るものではない。即ち音声映像製品(DVD/VCD/VHS/CD/CD-R),印刷出版製品,キャラクター商品,宣伝商品などを全世界に向けて(中国大陸は除く)発行,販売をする権利。」(3.3)と定められたほか,「BJZLの提供する本番組は…デジタル方式の中国語ナレーション版,字幕/ナレーションなしのPAL.NTSC方式版とアナログテープ中国語ナレーション版,字幕/ナレーションなしのPAL.NTSC方式版…を提供する。」(4.3),「BJZLGMGSTSに対して代理授権した本番組,素材の期限は〔六〕年とする。具体的な開始時期については,各付随協議書で確定する。」(5.1),「相手方の書面での同意なしで,いかなる一方も本協議書下の権益を第三者に譲渡してはならない」(20.1)と定められた。
卓倫社とGMGとは,平成15812日,本件意向協議書を合意解除しGMGは,原告に対し,同年95日付け書面をもって,その旨を通知した。
本件終了協議書には,原告と卓倫社とは,平成15627,本番組に関する本件基本個別協議書を締結し,中国大陸を除く地域における本番組及びその改編番組の発行に関して,卓倫社が原告を代理していること(前文(1)),卓倫社とGMG及び新天社とは,同月4日,本番組に関する「番組放映権の発行販売の授権に関する協議書」(以下「本件授権協議書」という。)及び本件意向協議書を締結し,卓倫社がGMG及び新天社に対して全世界(中国大陸を除く。)において本番組及びその改編番組を発行する権利を付与していること(前文(2)),各当事者は,本件基本個別協議書,本件授権協議書及び本件意向協議書を期限前に終了させる予定であること(前文(3))にかんがみ,原告及び卓倫社は,本件終了協議書の締結日をもって本件基本個別協議書を期限前に終了させることに同意し,卓倫社及びGMGは,本件終了協議書の締結日をもって本件授権協議書及び本件意向協議書を期限前に終了させることに同意すること(1条),本件基本個別協議書,本件授権協議書及び本件意向協議書の終了日から5日以内に,卓倫社及びGMGは,本番組(改編番組を含む。)の各種コピー,素材及び関係資料を廃棄し,又は原告に返却すること,ただし,原告は,GMGが本件各原版の中国語マスターテープを適切に保有することに同意すること(4条),各当事者は,本件基本個別協議書,本件授権協議書及び本件意向協議書の既に履行済みの部分及び本件終了協議書8条による履行予定部分(本件各原版)に関して,GMGが原告に196000米ドルの許諾料を直接支払い,原告が上記の許諾料を受け取った後15日以内に,卓倫社に許諾料の30%に当たる485688人民元の代理費を支払うことに同意すること(5条),GMGは,平成163月に上記の196000米ドルのうち8400米ドルを原告に支払っており,その余の187600米ドルについては,本件終了協議書が締結され,正式な契約文書を実際に受領した後15日以内に,原告の口座に送金すること(6条),各当事者は,GMGが本件終了協議書6条の定めに基づき,所定の期限までに残高187600米ドルの許諾料の支払を完了させた後,本件各原版につき,GMGが日本国内における音声・映像作品の独占的な発行権を所有し,授権期間を同月22日から平成22321日とすることに同意すること(8条),本件終了協議書は,すべての当事者が署名・押印し,かつ,本件終了協議書のすべての頁に割り印を押捺した時点で効力を生じること(15条)などが定められた。そして,卓倫社は,平成17523日,本件終了協議書に代表者が署名するとともに会社印を押印し,GMGは,同年714日,本件終了協議書に代表者が署名した。原告については,代表者の署名及び会社印の押印がされているが,その期日については記載がない。また,原告が本件終了協議書に割り印を押捺している。
(2) 以上に基づいて,本件各原版の利用許諾の有無について検討する。
ア 本件終了協議書前文(1)の定めに照らすと,原告は,卓倫社に対し,本件基本個別協議書により,本件各原版の利用許諾の代理権限を授与したと認めるのが相当であり,本件意向協議書の定めに照らすと,卓倫社は,GMGに対し,本件意向協議書により,本件各原版の利用許諾をするとともに(3.1),本件各原版を利用するための具体的方法として,卓倫社が本件各原版の編集していないオリジナル資料である「素材」(1.1(b))として,本件各原版の複製物であるNTSC方式のテープ(本件マスターテープ)を提供し(4.3),本件マスターテープの利用権限(本件マスターテープの改編を含む。ただし,中国大陸を除く。)を授与した(3.2)と認めるのが相当である。
 なお,本件終了協議書によれば,本件基本個別協議書による原告から卓倫社への代理授権の日は,本件意向協議書の締結の日である平成1564日より後の同月27日とされているが,たとえ本件意向協議書の後に本件基本個別協議書による授権がされたとしても,本件終了協議書中には,そのことによって本件意向協議書の効力が左右される旨の記載はないから,本件終了協議書の当事者である原告と卓倫社及びGMG間において本件意向協議書の効力が認められていたものと解される。また,本件終了協議書は,すべての当事者が署名・押印し,本件終了協議書のすべての頁に割り印を押捺した時点で効力を生じる旨定められているところ,GMGについては,代表者の署名はあるものの,押印はされていない。しかし,代表者の署名がある以上,GMGに合意する意思はあったと認められるし,GMGは本件意向協議書を合意解除している以上,本件各原版についての権限を回復するために本件終了協議書に合意する利益もあったというべきである。これらに加え,本件訴訟の当事者も本件終了協議書の成立について特段争っていないことに照らせば,本件終了協議書は,GMGの代表者が署名した平成17714日ころに,有効に成立したと認めるのが相当である。
 この点,原告は,本件意向協議書は,あくまでも意向協議書であり,GMGと新天社に対する各代理授権と許可は別途付随協議書の中で定められて初めて効力が発生する旨主張する。しかしながら,原告とGMG及び新天社とは,本件意向協議書とともに,本件授権協議書を締結しており(本件終了協議書前文(2)),本件授権協議書が付随協議書であると推認されること,GMGが本件各原版の中国語マスターテープ(本件マスターテープ)を保有していたこと(本件終了協議書4条)を考慮すると,本件意向協議書にいう付随協議書が締結され,本件各原版の利用権限が授与されたと認めるのが相当であるから,原告の主張は採用できない。
 また,原告は,本件意向協議書は,GMG単独ではなく新天社との共同授権である旨主張するが,本件意向協議書には,授与された代理権限について,GMGと新天社が共同で行使をしなければならない旨の規定は存在しない上,新天社を当事者とすることなく,卓倫社とGMGとは,本件意向協議書を合意解除し,原告と卓倫社及びGMGとは,本件終了協議書を締結していることを考慮すると,卓倫社は,本件意向協議書により,GMGGに対して個別に利用権限を授与したと認めるのが相当であるから,原告の主張は採用できない。
もっとも,卓倫社とGMGとは,平成15812日,本件各原版の利用許諾を定めた本件意向協議書を合意解除し,GMGは,原告に対し,同年95日付け書面をもって,その旨を通知しているから,卓倫社が原告を代理して行ったGMGに対する本件各原版の利用許諾の効果は消滅したと認めるのが相当である。
 この点,被告は,本件意向協議書は,卓倫社,GMG及び新天社間で締結された3社間の合意であって,新天社を除いた卓倫社とGMGの二者のみで,解除の合意をしたとしても本件意向協議書に関する限り何らの法的効力も有しないのであって,このことは,GMGの解除通知より後に有効に成立した本件終了協議書中に,本件意向協議書が有効に存続していることを前提とした記載があることからも裏付けられる旨主張する。
 しかしながら,上記アのとおり,卓倫社は,本件意向協議書により,GMGに対して個別に利用権限を授与したと認めるのが相当であるから,本件意向協議書について,卓倫社とGMGとの契約部分のみを解除することは妨げられないというべきである。また,確かに,本件終了協議書には,卓倫社及びGMGは,本件終了協議書の締結日をもって本件意向協議書を期限前に終了させる旨が定められている(1条)が,他方で,GMGは,原告に対し,所定の期限までに残高187600米ドルの許諾料の支払を完了させると,GMGが日本国内における独占的な発行権をさかのぼって有する内容となっており(8条),利用権限が有効に存続していたのであれば,条件付の権限付与を行う必要はないのに,あえてそのような権限付与をしていることを考慮すると,本件終了協議書はGMGの利用権限が既に消滅していたことを前提とするものとみるべきであるから,被告の主張は採用できない。
 また,GMGが原告に対して所定の期限までに残高187600米ドルの許諾料の支払を完了したことを的確に認めることができる証拠はないから,本件終了協議書8条により,GMGが本件各原版の利用権限を得たということもできない。
 さらに,被告は,本件終了協議書に基づく解除は合意解除であり,かつ,将来に向かってのみ効力が生じるのであるから,合意解除前の第三者である被告に対する権利許諾関係には影響を及ぼさないと主張する。
 しかし,上記被告の主張は,卓倫社とGMGとの間の本件意向協議書に基づく利用許諾関係が,本件終了協議書による合意解除により初めて消滅したことを前提とするものであるが,上記のとおり,卓倫社とGMGとの間の利用許諾契約は,平成15812日の本件意向協議書の合意解除によって既に終了しているのであって,これと前提を異にする被告の主張を採用することはできない。
ウ 以上のとおり,GMGは,本件原版供給契約当時,本件各原版の利用権限を有していないから,被告が本件原版供給契約によって本件各原版の利用許諾を得たとは認められないし,その他これを的確に認めることができる証拠もない。
 したがって,被告の本件各原版の利用許諾の主張は理由がない。
(3) そして,原告は,被告各DVDが本件各原版を複製又は翻案したものである旨主張するところ,本件各原版と被告各DVDとの類似性及び依拠性については争いがなく,@被告第1巻〜第4巻,第6巻及び第7巻は,本件第1巻〜第4巻,第6巻及び第7巻と動画映像・音楽・音声(ただし,ナレーションを除く。)について全く同一であり,A被告第5巻は,本件第5巻にはない「鎮国寺」のシーン等が約2分半追加され,他方で,本件第5巻に存在するインタビュー等がすべて削除されているものの,被告第5巻のうち,追加映像は全体の約7%であり,その余の約93%の部分については,本件第5巻と動画映像・音楽・音声(ただし,ナレーションを除く。)について全く同一であり(ただし,動画映像・音楽・音声の順番が4か所で入れ替えられ,エンディング部分では各部分の動画映像が編集されて使用されている。),B上記@及びAに共通する被告各DVDと本件各原版との相違点は,オープニング映像,日本語のナレーションとテロップの付加である。
 
以上に照らすと,被告各DVDは,本件各原版に依拠し,かつ,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しているのであって翻案に当たるから,被告は,本件各原版の翻案権を侵害したものである。











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