著作権重要判例要旨[トップに戻る]







ゲームソフト開発における下請業者の注意義務
「サウンドノベルゲーム用シナリオ無断改変事件」
平成130830日大阪地方裁判所(平成12()10231 

【コメント】本件は、被告が原告の作成したシナリオを429箇所にわたり無断で改変し、その題号を変更したことにより、原告の著作者人格権(同一性保持権)を侵害し、原告に精神的損害を与えたとして、原告が被告に慰謝料を請求した事案です。

 本件における主要な事実関係は、次のとおりです。

原告(ゲームシナリオライター)は、株式会社ヴィジットとの間で、同社が発売するプレイステーション用ゲームソフト「ノベルス ゲームセンターあらしR」に組み込むためのゲームシナリオの製作を原告に委託する旨の契約(「本件契約」)を締結し、本件契約に従って、シナリオ「毎日がすぷらった」(「本件シナリオ」)を作成した。
被告は、ヴィジットの下請会社としてゲームソフト「ノベルス ゲームセンターあらしR」の製作を担当したものであり、原告から提出された本件シナリオを使用して、サウンドノベルゲーム「毎日がすぷらった」(「本件ソフト」)を製作した。
被告は、本件ソフトの製作に当たり、原告の了承を得ることなく、本件シナリオに別紙対照表記載の改変を加えた。
原告は、ヴィジットとの間で、@ヴィジットは、原告に対し、本件シナリオの内容につき、被告により無断改変がなされたことにおいて管理責任を怠ったことを認め、陳謝する、Aヴィジットは、原告に対し、本件シナリオの無断改変と別の約束違反とを合わせて慰謝料金10万円の支払義務のあることを認め、これを同月末日限り支払うという条項を含めた訴訟外の和解をし、同日、ヴィジットから和解金10万円を受領した。
 


 [被告の過失について]
 被告は、ゲームソフト製作を業とする有限会社であり、日常的に、他人が作成したシナリオ、コンピュータグラフィック、音楽等の著作物を利用してソフトウエアを製作しているものであるから、これらの著作物の利用に当たっては、それが著作者人格権侵害とならないよう注意すべき義務があり、本件のように、シナリオ委託契約が原告とヴィジットとの間で締結され、原・被告間に直接の契約関係が存在しない場合であっても、原告の作成に係るシナリオを改変するに当たっては、まずヴィジット又は原告に対し、契約中に開発者によるシナリオの改変を許す旨の約定があるか否かを確認し、そのような約定がない場合は、シナリオの著作者である原告に対し、改変の内容、方法、範囲等を明確にした上で、承諾を求めるべき義務を負っていたというべきである。
 しかるに、被告は、ヴィジット又は原告に対し、本件契約の内容を確認することなく、本件契約中には、ソフト開発者側で原告の了解なくしてシナリオの改変を行うことができる旨の条項が存在しないことを看過して、原告に無断で本件改変を行い、これにより原告の同一性保持権の侵害を惹起したものであるから、被告には、この点について過失があり、本件改変により原告が被った損害を賠償する責任を負う。
 [原告とヴィジットとの訴訟外の和解によって、被告は責任を免れるかについて]
 被告は、本件改変について、原告と被告の使用者であるヴィジットとの間で訴訟外の和解が成立している以上、原告が被告に責任を追及することはできないと主張する。
 ヴィジットは、被告の使用者として、被告がシナリオ、コンピュータグラフィック、音楽等の著作物を利用して本件ソフトを作成するに当たり、著作者人格権侵害を惹起しないよう指示、監督する義務を負っているにもかかわらず、被告に対する相当の監督を怠ったことにより、本件改変による著作者人格権侵害を発生させたものであるから、著作権法201項、民法709条、715条に基づき、本件改変により原告に生じた損害を被告と連帯して賠償する責任を負うものといえる。
 
しかし、使用者責任が成立する場合であっても、被用者について不法行為の要件が充たされる以上、被害者が被用者を相手どって損害賠償請求を行うことを否定する理由はない。加えて、ヴィジットと原告の和解契約には、原告が別途被告に対して責任を追求することを妨げない旨の条項があることを考慮すれば、原告とヴィジットとの間の訴訟外の和解は、原告の被告に対する損害賠償請求権の行使に影響を与えるものではなく、原告がヴィジットから受領した和解金10万円のうち本件改変によって原告が被った損害に対する賠償の趣旨で支払われた分がその限度で損害のてん補と評価される(ただし、その額は明らかでない。)にとどまる。











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