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野球選手契約に用いられる統一契約書の条項が問題となった事例
プロ野球ゲームソフト・カード事件平成180801日東京地方裁判所(平成17()11826 

【コメント】本件は、プロ野球選手である原告らが、所属球団である各被告らとの間において、プロ野球ゲームソフト及びプロ野球カードにつき、各被告らが第三者に対して各原告らの氏名及び肖像の使用許諾をする権限を有しないことの確認を請求した事案です。これに対し、被告らは、野球選手契約に用いられる統一契約書16条(以下「本件契約条項」という。)により、原告らの氏名及び肖像の商業的利用権(パブリシティ権)が被告らに譲渡され又は被告らに独占的に使用許諾されていると主張しました。

 なお、本件で問題となった「本件契約条項(統一契約書16条)」は、次のとおりの規定です。
1項」…「球団が指示する場合,選手は写真,映画,テレビジョンに撮影されることを承諾する。なお,選手はこのような写真出演等にかんする肖像権,著作権等のすべてが球団に属し,また球団が宣伝目的のためにいかなる方法でそれらを利用しても,異議を申し立てないことを承認する。」
2項」…「なおこれによって球団が金銭の利益を受けるとき,選手は適当な分配金を受けることができる。」
3項」…「さらに選手は球団の承諾なく,公衆の面前に出演し,ラジオ,テレビジョンのプログラムに参加し,写真の撮影を認め,新聞雑誌の記事を書き,これを後援し,また商品の広告に関与しないことを承諾する。」 


1 本件契約条項の解釈について
(1) 前記の各事実に証拠を総合すれば,次の各事実が認められる。
 (略)
(2) 以上認定の事実を前提に,判断する。
ア 前記認定のとおり,統一契約書が初めて作成された当時の本件契約条項に相当する規定は,メジャーリーグの大リーグ契約条項を参考にして起案されたものであった。なお,当時,我が国においては,そもそも「パブリシティ」(選手の氏名及び肖像が有する顧客吸引力などの経済的価値を独占的に支配する財産的権利)という概念及びその用語になじみがなく,大リーグ契約条項を参考に本件契約条項に相当する規定を起案するに際し,英語の「publicity purposes」を「宣伝目的」と翻訳したものである。
 そして,前記認定のとおり,統一契約書が制定される以前から,球団ないし日本野球連盟が他社に所属選手の氏名及び肖像を商品に使用すること(商業的使用ないし商品化型使用)を許諾することが行われていたから,本件契約条項に相当する当初の規定も,かかる実務慣行のあることを前提にして起案されたものと解される。したがって,統一契約書が制定された昭和26年当時,選手の氏名及び肖像の利用の方法について,専ら宣伝のために用いる方法と,商品に付して顧客吸引に利用する方法とを明確に峻別されていたとは考え難く,「宣伝目的」から選手の氏名及び肖像の商業的使用ないし商品化型使用の目的を除外したとする事情を認めることはできない
 しかるに,本件契約条項は,その後のパブリシティ利用に対する理解の変化にもかかわらず,その内容が変更されないまま,球団と所属選手との間で毎年同一内容で締結し直され(更改),今日に至っているものである。
 前記認定のとおり,各球団においては,本件契約条項に基づいて,各球団が所属選手の氏名及び肖像の使用を第三者に許諾し得るとの理解の下に,古くは被告巨人軍の昭和36年の例にもあるとおり,長期間にわたり,野球ゲームソフト及び本件野球カードを始めとする種々の商品につき,所属選手の氏名及び肖像の使用許諾を行ってきたものである。とりわけ,カルビーに対する使用許諾は昭和48年にも遡り,かつ,相当長期間にわたるものである。また,野球ゲームソフトにしても,昭和63年にまで遡ることができる。
 このように,野球ゲームソフト及び本件野球カードについては,長きにわたり選手において自らの氏名及び肖像が使用されることを明示又は黙示に許容してきたのであって,また,前記認定のとおり,これらの商品は消費者の定番商品として長らく親しまれてきたものであり,プロ野球の知名度の向上に役立ってきたものである。
 ところで,このようにして制定された本件契約条項2項では,所属選手の肖像の利用に基づいて球団が受けた金銭につき,選手が適当額の分配金を受ける旨が規定され,利用行為が有償でされる場合のあることが予定されているが,同項の実質的内容も,その前身である当初の条項から変わっていないものである。
 そして,前記認定のとおり,各球団は,許諾先から受領した使用料の全部又は一部を氏名及び肖像の使用がされた選手に対して分配してきたが,前記認定のとおり,選手会ないし選手らのうちの一部の者が各球団による氏名及び肖像の管理について異論を唱えるようになるまでは,選手側から明示的な異議はなかったものである。
イ 以上の事情を総合的に勘案し,本件契約条項1項に「球団が宣伝目的のためにいかなる方法でそれらを利用しても」とあって利用の態様に限定が付されていないことにもかんがみると,同項にいう「宣伝目的」は広く球団ないしプロ野球の知名度の向上に資する目的をいい,「宣伝目的のためにいかなる方法でそれらを利用しても」とは,球団が自己ないしプロ野球の知名度の向上に資する目的でする利用行為を意味するものと解される。
 そして,選手の氏名及び肖像の商業的使用ないし商品化型使用の場合においても,球団ないしプロ野球の知名度の向上に役立ち,顧客吸引と同時に広告宣伝としての効果を発揮している場合があるから,選手の氏名及び肖像の商業的使用ないし商品化型使用も,それが球団ないしプロ野球の知名度の向上に資する限り,これに含まれるというべきである。なお,「いかなる方法で」という文言は,あくまで上記のような「宣伝目的のため」にされるものでなければならない。また,球団が第三者に対して使用許諾することも含まれる。
 本件契約条項1項にいう「球団が指示する場合」についても,このように球団が自己ないしプロ野球の知名度の向上に資する目的で行う場合を意味するものであるから,球団の指示も,従前の運用に照らし,一般的・包括的なもので足り,撮影の内容,日時及び場所等につき具体的な指示がされることまでは要しないというべきである。
 そして,本件契約条項が選手の肖像の利用に関する,球団と所属選手との間に存する唯一の定めであり,前記認定の統一契約書制定前に販売された玩具の例をみても明らかなように,選手の肖像を広告宣伝に利用する場合でも,販売する商品に商業化目的で利用する場合でも,肖像に当該選手の氏名を付して利用する形態が多く存在することにかんがみると,本件契約条項1項の「肖像権,著作権等」のうちに,選手の氏名を利用する権利も含まれると解すべきである。また,本件契約条項1項にいう「写真,映画,テレビジョン」は,例示にすぎないものと解される。
 そして,本件契約条項3項は,明文をもって,選手が所属球団の承諾なしに公衆の面前に出演すること等をしない不作為義務を定めている。なお,氏名及び肖像が有する顧客吸引力などの経済的価値を独占的に支配する財産的権利が元来選手の人格権に根ざすものであることにかんがみれば,球団において合理的な理由なく承諾しないことがあってはならない。
ウ 以上によれば,本件契約条項は,その1項において,具体的であれ包括的であれ球団が指示する場合に所属選手の撮影の応諾義務があることを定めるとともに,それにより撮影された選手の写真の肖像及び選手の氏名について,球団において,球団ないしプロ野球の知名度の向上に資する目的である限りいかなる方法によって使用したとしても,選手は異議を述べない義務を定めたものと解される。また,その2項において,球団がライセンシーから使用の対価を受けた場合に選手が適当な対価の分配を受け得る権利を定め,その3項において,選手が球団の承諾なく公衆の面前に出演しない等の不作為義務を定めたものである
 よって,本件契約条項により,商業的使用ないし商品化型使用の場合を含め,球団ないしプロ野球の知名度の向上に資する目的の下で,選手が球団に対してその氏名及び肖像の使用を独占的に許諾したものと解するのが相当である。
 そして,このように解することで,球団が多大な投資を行って自己及び所属選手の顧客吸引力を向上させている状況に適合し,投資に見合った利益の確保ができるよう,かかる顧客吸引力が低下して球団又は所属選手の商品価値が低下する事態の発生を防止すべく選手の氏名及び肖像の使用態様を管理するという球団側の合理的な必要性を満たし,交渉窓口を一元化してライセンシーの便宜を図り,ひいては選手の氏名及び肖像の使用の促進を図ることができるものである。
エ ところで,本件野球カードに使用される選手の写真は,球団の指示に基づいて撮影されたものである。また,野球ゲームソフトに使用される選手の写真及び動画も,球団の指示に基づいて撮影されたものである。
 本件野球カードは,長い歴史があり,一般の消費者が容易に入手することができる身近な商品であり,また,野球ゲームソフトも消費者が応援する球団の選手の立場になってプロ野球を疑似体験し得るものであって,いずれも被告ら球団ないしプロ野球の知名度の向上に役立っていることは明らかである。よって,被告ら球団において,所属選手の氏名及び肖像をこれらに使用許諾することは,本件契約条項1項にいう「宣伝目的のため」の「利用」に当たるということができる。
(3) 被告らの主張について
 被告らは,本件契約条項1項の「肖像権,著作権等のすべてが球団に属し」との文言及び同3項を根拠に,選手から球団への氏名及び肖像の商業的利用権の譲渡があった旨主張する。
 しかし,氏名及び肖像の商業的利用権の譲渡がされているのであれば,利用の目的がいかなるものであったとしても,選手が異議を述べる余地はないはずであるにもかかわらず,本件契約条項1項は,宣伝目的のための利用に関して選手が異議を述べないことを定めているのみである。また,同3項の不作為義務は,逆に球団の承諾があれば選手は主体的に商品の広告等に関与することができることを定めたものといえるところ,球団が所属選手から氏名及び肖像の商業的利用権の譲渡を受けた場合よりも,球団が使用許諾を受け,債権的権利を有するにすぎない場合の方により親和的である。後者のように解する場合には,独占的許諾という強い意義を有する根拠規定となるものである。なお,同3項の規定は,球団にとって不都合な態様による選手の氏名及び肖像の利用の排除を確保するための定めであると推認できるところ,球団にとって不都合な態様による選手の氏名及び肖像の利用を排除するためには,その譲渡ではなく,その独占的使用許諾でも十分目的を達成することができる。
 そうすると,本件契約条項は,選手が所属球団に対し,その氏名及び肖像につき,独占的に使用許諾することを定めるものにすぎず,選手が氏名及び肖像の商業的利用権を所属球団に譲渡することを定めるものとはいえない
(4) 原告らの主張について
ア 原告らは,氏名及び肖像の広告宣伝型利用と商品化型利用の性質の違い等を指摘して,両者を峻別し,本件契約条項においては前者のみが予定され,後者は予定されていないと主張する。
 しかしながら,そもそも両者を明確に区別することは難しく,氏名及び肖像の商品化型利用の場合においても,球団等の知名度の向上に役立ち,顧客吸引と同時に広告宣伝としての効果を発揮している場合がある。このように,氏名及び肖像の商業的使用ないし商品化型使用と広告宣伝型使用とは,互いに排斥し合う関係にあるとはいえない。また,統一契約書の文言上も,両者は明確に区別されているとまではいえないし,前記認定のとおり,統一契約書制定前にも商品化型利用の実績があり,同条はこの実績を踏まえて両者を区別することなく起案されたものである。そして,同条にいう「宣伝目的」の意義も前記のとおり広く解することが可能である。加えて,前記のとおり,野球ゲームソフト及び本件野球カードは,商品に原告ら選手の氏名及び肖像が使用されているもの(商業的使用ないし商品化型使用)ではあるが,これらが球団ないしプロ野球の知名度の向上に役立っていることは明らかであり,本件契約条項1項にいう「宣伝目的」を充足するものである。
 したがって,原告らの主張する上記の違い等は,前記判断を左右するものではない。
 (略)
(5) 小括
 以上のとおり,本件契約条項は,商業的使用ないし商品化型使用の場合を含め,球団ないしプロ野球の知名度の向上に資する目的の下で,選手が球団にその氏名及び肖像を独占的に使用許諾することを定めたものと解される。野球ゲームソフト及び本件野球カードへの選手の氏名及び肖像の使用は,球団ないしプロ野球の知名度の向上に資する目的で行われ,本件契約条項1項の「宣伝目的」に含まれるから,被告らは,野球ゲームソフト及び本件野球カードにつき,原告らの氏名及び肖像を第三者に使用許諾する権限を有するものである。
2 不合理な附合契約について
(1) 証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
 (略)
(2) 以上の事実を前提に,判断する。
ア 原告らは,選手と球団との間には,情報(知識),経験及び交渉力の格差があり,肖像の利用に関する本件契約条項の内容を交渉によって変更する可能性が欠如している旨主張する。
 (略)
イ しかしながら,本件契約条項3項では球団の承諾がある場合に選手が商品の広告に関与することができる旨が定められているところ,前記認定のとおり,実際に,選手が球団から明示又は黙示に承諾を得てテレビに出演したり,商品の広告に関与する等の事例があった。
 本件契約条項2項では球団が所属選手の氏名及び肖像の使用を許諾したことにより受けた使用料の当該選手への分配を定めているところ,前記認定のとおり,野球ゲームソフトに関しては,使用料の分配をする実務が確立されており,その分配率も年々増加している。また,前記認定のとおり,本件野球カードに関しても,被告ベイスターズ以外の被告らにおいては,選手に対して使用料の分配をする実務が確立され,使用料の分配率は球団によって異なるものの,現実に分配金が支払われている。なお,被告ベイスターズにおいても,従前は,選手に対し,本件野球カードの現物を支給するに止め,分配金を支払っていなかったが,平成17年度から,本件野球カードに係る使用料の2割に相当する額の金員を支払うようにライセンス実務を変更した。
 さらに,前記認定のとおり,各球団においては,選手の肖像等を使用許諾するに際し,対象選手から希望ないし意見を聴いたり,サンプルを配付したりして,使用を許諾された商品に選手の意向が可及的に反映されるよう配慮し,選手においても本件野球カード等への氏名及び肖像の使用状況を認識しているものである。また,前記認定のとおり,平成12年ころに選手会ないし選手らのうちの一部の者が各球団による選手の氏名及び肖像の管理について異論を唱えるようになるまでは,選手側から明示的な異議はなかったものである。
 そして,前記認定のとおり,実際に統一契約書に特約条項を挿入した事例があることに照らせば,氏名及び肖像の利用に関する特約を締結することも不可能とはいえない。また,選手らが球団と個別に又は集団で交渉することにより,球団と選手らとの間の使用料の分配率の増額変更を実現する余地もあり得るものと解される。
 なお,プロ野球の野球選手契約において統一的な取扱いがされているのは,球団の間で資金力に強弱のある状況の下で,プロ野球の発展と球団及び個人の利益の保護ないし助長を図る点にあるが(野球協約3条),プロ野球全体の発展のためには一定程度の集合的処理が望ましい。本件契約条項の定めは,球団が多大な投資を行って自己及び所属選手の顧客吸引力を向上させている状況に適合し,投資に見合った利益の確保ができるよう,かかる顧客吸引力が低下して球団又は所属選手の商品価値が低下する事態の発生を防止すべく選手の氏名及び肖像の使用態様を管理するという球団側の合理的な必要性を満たし,交渉窓口を一元化してライセンシーの便宜を図り,ひいて選手の氏名及び肖像の使用の促進を図るものであるから,各球団において本件契約条項を適用し,これに従った運用を行うことには,一定の合理性がある。
ウ 以上のとおり,本件契約条項は,選手による契約の相手方の選択の可能性は制限され,かつ選手が氏名及び肖像の使用に係る規定の変更を求め得る余地は小さいものではあるが,選手が主体的に商品広告等へ関与する途が開かれており,かつ現に球団から使用料の分配が行われており,交渉により球団と選手らとの間の使用料の分配率の増額変更を実現する余地もあり得るものである。そして,本件契約条項全体を前記認定のとおり解釈する限り,これが不合理であるとまではいい難い
 そうすると,本件契約条項は,球団と選手との間の野球選手契約において付款たる地位を占めているとしても,不合理な内容の附合契約であるとはいえない。
 (略)
(3) 小括
 以上のとおり,本件契約条項の規定が公序良俗に反し民法90条により無効であるとの原告らの主張は理由がない。
3 独占禁止法違反について
(1) 独占禁止法違反の契約の有効性
 原告は,各球団が本件契約条項に基づいて原告ら選手の肖像権を一方的に奪うことは,独占禁止法295号に基づく一般指定14項の優越的地位の濫用に当たる行為であるか,又は一般指定13項の拘束条件付取引に当たる行為であって,健全な取引秩序を乱し,かつ,公正な商慣習の育成を阻害するものとして公序良俗に反し,無効である旨を主張する。
 しかしながら,そもそも,独占禁止法19条に違反した契約の私法上の効力については,その契約が公序良俗に反するとされるような場合は格別として,同条が強行法規であるからとの理由で直ちに無効であると解すべきではない。けだし,独占禁止法は,公正かつ自由な競争経済秩序を維持していくことによって一般消費者の利益を確保するとともに,国民経済の民主的で健全な発達を促進することを目的とするものであり,同法20条は,専門的機関である公正取引委員会をして,取引行為につき同法19条違反の事実の有無及びその違法性の程度を判定し,その違法状態の具体的かつ妥当な収拾,排除を図るに適した内容の勧告,差止命令を出すなど弾力的な措置をとらしめることによって,同法の目的を達成することを予定しているのであるから,同法条の趣旨に鑑みると,同法19条に違反する不公正な取引方法による行為の私法上の効力についてこれを直ちに無効とすることは同法の目的に合致するとはいい難いからである(最高裁昭和52620日第二小法廷判決参照)。
 
本件契約条項が公序良俗に反するとはいえないことは前記2のとおりであるが,念のため,原告らの主張する独占禁止法違反の有無について,以下判断する。
(2) 独占禁止法の規定
 独占禁止法29項は,同項各号に該当する行為で,公正な競争を阻害するおそれがあるもので(公正競争阻害性),公正取引委員会が指定するものを「不公正な取引方法」としており,同項4号は「相手方の事業活動を不当に拘束する条件をもつて取引すること。」を,同項5号は「自己の取引上の地位を不当に利用して相手方と取引すること。」をそれぞれ「不公正な取引方法」として挙げている。
 そして,公正取引委員会は,昭和57618日告示第15号により,同項を受けて「不公正な取引方法」を定めているが(いわゆる一般指定),一般指定13項は独占禁止法294号を,一般指定14項は独占禁止法295号をそれぞれ受けて規定されたものである。
 一般指定13項は,「拘束条件付取引」として,「前二項に該当する行為のほか,相手方とその取引の相手方との取引その他相手方の事業活動を不当に拘束する条件をつけて,当該相手方と取引すること。」と定め,一般指定14項は,「優越的地位の濫用」として,その柱書で「自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して,正常な商習慣に照らして不当に,次の各号のいずれかに掲げる行為をすること。」と定め,その3号で「相手方に不利益となるように取引条件を設定し,又は変更すること。」と,その4号で「前三号に該当する行為のほか,取引の条件又は実施について相手方に不利益を与えること。」とそれぞれ定めている。
(3) 一般指定14項について
 まず,被告ら球団は,原告ら選手に対して優越的な地位にあり,前記2のとおり,選手がFA制度を利用したり,選手会においてストライキをすることができるとしても,その優位性は左右されるものではない。
 しかしながら,仮に原告ら選手が独占禁止法21項にいう「事業者」に当たるとしても,本件契約条項の規定はその内容が不合理とはいい難いものであって,前記2(2)で判示した同規定の合理性を支える事情の内容にかんがみると,氏名及び肖像を使用する正常な商習慣に照らして不当であるということはできない。
 よって,一般指定14項にいう「正常な商習慣に照らして不当」にも,同法295号にいう「自己の取引上の地位を不当に利用し」にも当たるとはいえず,また同法29項柱書にいう「公正な競争を阻害するおそれがある」に当たるとはいえない。
 そうすると,その余の点につき判断するまでもなく,本件契約条項の規定及びこれに従った運用は,一般指定14項に当たらず,したがって独占禁止法295号に当たらない。
 結局,一般指定14項及び独占禁止法295号を根拠とする原告らの無効主張は理由がない。
(4) 一般指定13項について
 次に,一般指定13項に該当し,独占禁止法上違法と評価される(同法19条)には,一般指定13項にいう「相手方の事業活動を不当に拘束する条件」を付して取引をする必要があるが,前記2と同様,本件契約条項は不合理とはいい難く,相手方(選手)の事業活動を不当に拘束する条件であるとまではいうことができない。
 そうすると,その余の点につき判断するまでもなく,本件契約条項の規定及びこれに従った運用は,一般指定13項に当たらず,したがって独占禁止法294号に当たらない。
 結局,一般指定13項及び独占禁止法294号を根拠とする原告らの無効主張は理由がない。
 (略)
4 結論
 以上の次第で,被告ら球団は,野球ゲームソフト及び本件野球カードについて,本件契約条項1項に基づいて所属選手の氏名及び肖像を第三者に使用許諾する権限を有しており,かつ同項は無効とはいえない。そうすると,原告らの本件請求は,理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。
 
なお,長年にわたって変更されていない本件契約条項は,時代に即して再検討する余地のあるものであり,また,分配金についても各球団と選手らが協議することにより明確な定めを設ける必要があることを付言する。

 
控訴審同旨











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