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事実を真実と誤信したことにつき相当の理由がある場合と名誉毀損罪の成否
「『夕刊和歌山時事』事件」昭和440625日最高裁判所大法廷(昭和41()2472 

 しかし、所論にかんがみ職権をもつて検討すると、原判決が維持した第一審判示事実の要旨は、
 「被告人は、その発行する昭和38218日付『夕刊和歌山時事』に、『吸血鬼Aの罪業』と題し、BことC本人または同人の指示のもとに同人経営のD特だね新聞の記者が和歌山市役所土木部の某課長に向かつて『出すものを出せば目をつむつてやるんだが、チビリくさるのでやつたるんや』と聞こえよがしの捨てせりふを吐いたうえ、今度は上層の某主幹に向かつて『しかし魚心あれば水心ということもある、どうだ、お前にも汚職の疑いがあるが、一つ席を変えて一杯やりながら話をつけるか』と凄んだ旨の記事を掲載、頒布し、もつて公然事実を摘示して右Sの名誉を毀損した。」
というのであり、第一審判決は、右の認定事実に刑法2301項を適用し、被告人に対し有罪の言渡しをした。
 そして、原審弁護人が「被告人は証明可能な程度の資料、根拠をもつて事実を真実と確信したから、被告人には名誉毀損の故意が阻却され、犯罪は成立しない。」旨を主張したのに対し、原判決は、「被告人の摘示した事実につき真実であることの証明がない以上、被告人において真実であると誤信していたとしても、故意を阻却せず、名誉毀損罪の刑責を免れることができないことは、すでに最高裁判所の判例(昭和3457日第一小法廷判決)の趣旨とするところである」と判示して、右主張を排斥し、被告人が真実であると誤信したことにつき相当の理由があつたとしても名誉段損の罪責を免れえない旨を明らかにしている。
 
しかし、刑法230条ノ2の規定は、人格権としての個人の名誉の保護と、憲法21条による正当な言論の保障との調和をはかつたものというべきであり、これら両者間の調和と均衡を考慮するならば、たとい刑法230条ノ21項にいう事実が真実であることの証明がない場合でも、行為者がその事実を真実であると誤信し、その誤信したことについて、確実な資料、根拠に照らし相当の理由があるときは、犯罪の故意がなく、名誉毀損の罪は成立しないものと解するのが相当である。これと異なり、右のような誤信があつたとしても、およそ事実が真実であることの証明がない以上名誉毀損の罪責を免れることがないとした当裁判所の前記判例(昭和3457日第一小法廷判決)は、これを変更すべきものと認める。したがつて、原判決の前記判断は法令の解釈適用を誤つたものといわなければならない。











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