著作権重要判例要旨[トップに戻る]







利用許諾契約の解釈(26)
「マンモス3DCG事件平成231129日東京地方裁判所(平成22()28962/平成240425日知的財産高等裁判所(平成23()10089 

【原審】

(2) 原告の許諾の有無
ア 被告は,遅くとも平成19810日までに,原告から,本件各画像を本件書籍に掲載することの許諾を受けていた旨主張するので,以下において判断する。
 (略)
イ 以上を前提に,被告主張の原告の許諾の有無について検討する。
() まず,被告は,@原告は,本件書籍中の本件各画像を複製して掲載する箇所の本文の記述(以下「本件記述」という。)の最終的な内容の確認を許諾の条件としているが,その趣旨は,平成19626日のメールにあるとおり,「内容的に間違いのあるもの,適さないもの」には協力できないということであるから,結局のところ,原告が求める許諾条件は,本件記述が内容的に適さないもの又は内容的に間違っているものではないということにあるとの前提に立った上で,原告が同年810日に本件各画像のデータファイルを被告に提供し,併せてこれに関する借用書を提示した時点において,上記許諾条件は満たされていた,A原告が本件記述の最終的な内容を現に確認することが許諾の条件であったとしても,原告は,同年73日の時点で最新の原稿である(証拠)原稿を「確認」し,また,平成218月末ころには,本件ゲラ刷り原稿の送付を受けてこれを「拝見」し,その後の経緯からすれば,本件ゲラ刷り原稿について原告は特段の訂正なく承認したということにほかならないから,上記許諾条件は満たされていたとして,遅くとも平成19810日の時点には,原告は被告に対し,本件各画像を複製して本件書籍の本文中に掲載することを許諾した旨を主張する。
 しかしながら,被告の主張は,以下のとおり理由がない。
a 上記@の点について
 前記アの認定事実によれば,原告は,最初に本件マンモスの写真の提供に応ずる意向である旨をC1に伝えた平成19626日のメールでは,「あくまで最終記事内容を当方が確認の上とさせていただきます。」と述べ,更に,本件各画像のデータファイルを添付して送信した同年810日のメールでも,「必ずゲラ刷りの段階で拝見させていただくことを,これら2点の写真原稿をお貸しする条件とします。」と述べているのであり,これらの事実からすると,原告は,C1とのメールによる交渉経過の中で,本件記述の最終的な内容を原告自身が確認し,了承することを,本件書籍中に本件各画像を複製して掲載することを認める条件とする旨を明確に表明していたものということができる。
 一方で,被告が上記@で主張するように原告がC1に送信した平成19626日のメールには,「本件だけでなく,常にマスコミの方々への対応として,内容的に間違いのあるもの,適さないものに対しては研究所としてご協力できないという姿勢を保っているためです。」との記載があるが,上記記載は,原告が被告に対し,本件記述の最終的な内容を原告自身が確認し,了承するとの許諾条件を求める理由を説明することによって,当該条件が原告にとって重要なものであることを強調する趣旨の記載と理解されるのであって,少なくともこの記載から,本件記述の内容が「内容的に適さないもの又は内容的に間違っているものではない」という条件さえ満たせば,本件記述の最終的な内容を原告自身が確認し,了承するとの許諾条件は満たさなくてもよいものとする趣旨を読み取ることはできないというべきである。
 したがって,被告の上記@の主張は理由がない。
b 上記Aの点について
 被告が上記Aにおいて原告が平成1973日の時点で最新の原稿である(証拠)原稿を確認したことを根拠とする点については,(証拠)原稿は,本件書籍が発行される2年以上前の時点における草稿にすぎないものであり,現にその内容をみても,最終的な本件記述の内容とは随所に異なる部分が存在し,特に,被告各画像についての説明部分が(証拠)原稿中には存在しないことからすると,原告が(証拠)原稿の内容を確認したからといって,本件記述の最終的な内容を確認したことにならないことは明らかである。
 また,被告が上記Aにおいて原告が平成218月末ころに本件ゲラ刷り原稿の送付を受けてこれを見ていることなどを根拠とする点については,そもそも平成218月末ころに生じた事実によって,被告が主張する平成19810日の時点における許諾の存在を根拠づけることはできないのみならず,原告が平成218月末ころに本件ゲラ刷り原稿の送付を受けた以降の経過をみても,原告が,被告に対し,平成211026日に本件書籍(第1刷)が発行されるまでの間に,本件ゲラ刷り原稿の内容を了承する旨の意思を示した事実をうかがうことはできない。
 かえって,原告は,同年921日,C1に対し,「先日お送りいただいたB1氏の校正修正の件」については国際学会からの帰国後に連絡する旨のメールを送信し,本件ゲラ刷り原稿の確認とその結果についての連絡は後日行うことを明言しているのに対し,C1は,同月24日,原告宛に,その日が本件書籍の校了の予定日であること,内容に事実関係の間違いなど修正の必要な点がある場合には,翌日までであれば日程を一日ずらして対応することなどを記載したメールを送信したものの,原告が国内に不在であったため,結果的には,原告との間で連絡が取られないまま,本件書籍の校了に至ったことからすれば,原告が同年8月末ころに本件ゲラ刷り原稿の送付を受けてこれを見たからといって,本件記述の最終的な内容を原告自身が確認し,了承するとの許諾条件が満たされたことにならないというべきである。
 したがって,被告の上記Aの主張も理由がない。
c 小括
 以上のとおりであるから,原告が被告に対し本件各画像を複製して本件書籍の本文中に掲載することを許諾したとの被告の主張は,これを認めることができない。
() 次に,被告は,@一般に,出版社等が,著作権者からその著作に係る写真等を書籍に複製して利用することの許諾を受ける場合,書籍の本文中への掲載の許諾があれば,特段の意思表示がない限り,表紙への掲載も,当然に許諾の範囲に含まれるものといえる,A本件においては,本件各画像を複製して本件書籍の本文中に掲載することについて原告の許諾があり,その許諾に当たって,原告が掲載の場所や方法等について何らかの条件を提示した事実が見当たらないとして,原告は,被告に対し,本件書籍の本文中への掲載のみならず,本件画像1の表紙カバーへの掲載についても許諾した旨を主張する。
 しかしながら,被告主張の上記@の点は,出版業界にそのような慣行が存在することを認めるに足りる証拠はなく,また,上記Aの点は,前記()のとおり,そもそも原告が被告に対し本件各画像を複製して本件書籍の本文中に掲載することを許諾したとの事実自体が認められないのであるから,これを前提とする被告の主張に理由がないことは明らかである。
 したがって,被告の上記主張は,採用することができない。
() 以上のとおり,被告主張の原告の許諾の事実はいずれも認められない。
(3) まとめ
 以上によれば,被告各画像は,いずれも原告の許諾なく,本件画像1又は本件画像2を複製したものと認められるから,被告が被告各画像を掲載した本件書籍を発行及び頒布する行為は,原告が本件各画像について有する著作権(複製権,譲渡権)の侵害に当たるものと認められる。

【控訴審】

(2) 被控訴人の許諾の有無
ア 許諾の有無
 前記認定の事実によれば,本件各画像の利用に関しては,控訴人のAと被控訴人の間の電子メールにより交渉されたものであるところ,被控訴人のAに対する電子メールには,「あくまで最終記事内容を当方が確認の上とさせていただきます。」「必ずゲラ刷りの段階で拝見させていただくことを,これら2点の写真原稿をお貸しする条件とします。」と記載され,被控訴人は,控訴人書籍中の本件各画像を複製して掲載する箇所の記述の最終的な内容を被控訴人自身が確認し,了承することをもって,利用を許諾する条件としていたものということができる。
 しかるに,控訴人は,平成195月から同年8月までの折衝がその後途切れて約2年が経過した平成218月末ころになって,控訴人書籍を同年9月末に発行する予定であるとして,最終のゲラ刷り原稿を送付し,被控訴人がこれを点検する期限を同月2日ころまでと一方的に決め,かつ,その期限までに被控訴人から返事がなかったのに,その最終的な確認をとることもなく,同年10月に控訴人書籍を発行したものであって,被控訴人による最終記事内容の確認という条件が成就したことを認めるに足りない
 そうすると,被控訴人が本件各画像の利用を許諾したということはできない
イ 控訴人の主張について
() 控訴人は,被控訴人は,利用許諾協議の当初から本件各画像の利用そのものは許諾していたものであり,遅くとも被控訴人が本件各画像のデータファイルを控訴人に提供し,併せてこれに関する借用書を提示した平成19810日までに,被控訴人から,本件各画像を控訴人書籍に掲載することの許諾を受けていた旨主張する。
 しかしながら,被控訴人が本件各画像のデータファイルを控訴人に提供し,併せてこれに関する借用書を提示した平成19810日付けの電子メールには,被控訴人が「必ずゲラ刷りの段階で拝見させていただくことを,これら2点の写真原稿をお貸しする条件とします。」と記載していたものである。よって,同日までに利用そのものを無条件で許諾していたということはできないし,控訴人書籍中の本件各画像を複製して掲載する箇所の記述の最終的な内容を被控訴人自身が確認し,了承することをもって,利用を許諾する条件としていたものである。
 控訴人は,被控訴人が控訴人書籍の原稿についての変更を要求すべき何らの権限を有していない者であるから,本件各画像の利用そのものの許諾を覆す理由にはなっていないと主張するが,控訴人書籍の原稿(ゲラ)を読んだ被控訴人が,その原稿の下で本件各画像を掲載するのが相応しくないと考えれば,本件各画像の掲載を許諾しないというだけのことであって,それにもかかわらず,控訴人が控訴人書籍に本件各画像の掲載を必要とするのであれば,控訴人書籍の原稿を変更するなどして被控訴人から本件各画像を掲載することの許諾を得なければならないし,控訴人書籍の原稿を変更することができないのであれば,その原稿の下で本件各画像を掲載することを断念しなければならないというだけのことであって,被控訴人に当該原稿についての変更を要求すべき権限があるか否かといった問題ではない。
 平成19626日付けの被控訴人の電子メールに「本件だけでなく,常にマスコミの方々への対応として,内容的に間違いのあるもの,適さないものに対しては研究所としてご協力できないという姿勢を保っているためです。」との記載があるが,それも,以上と同趣旨であって,内容的に適さないもの又は内容的に間違っているものであるか否かを被控訴人が確認した上で本件各画像の掲載を許諾するという趣旨にほかならず,被控訴人の確認を得なくても,内容的に適さないものでなければ又は内容的に間違っていないものであれば本件各画像を掲載し得るという趣旨までを読み取ることはできないというべきである。
() 控訴人は,被控訴人は,平成1973日の時点で,最新の原稿を確認したことにより,許諾条件が満たされたと主張する。
 しかしながら,平成1973日の時点の最新の原稿を確認したとしても,その原稿は,控訴人書籍が発行される2年以上前の時点における草稿にすぎないものであり,現にその内容も,特に,控訴人各画像についての説明部分が存在しないなど,最終的な控訴人書籍における記述の内容とは異なる部分が随所に存在するものであって,これが最終的な内容を確認したことにならないことは明らかである。
() 控訴人は,被控訴人が,平成218月末ころには,ゲラ刷り原稿の送付を受け,特段の訂正なく承認したとも主張する。
 しかしながら,被控訴人がゲラ刷り原稿の送付を受けたとしても,控訴人の側で一方的に極めて短い期限を定めたものである上,被控訴人は,その後,国際学会からの帰国後に連絡する旨の電子メールを送信したものであって,ゲラ刷り原稿の確認とその結果についての連絡がされていないことからも,これを承認したということはできない。
() 控訴人は,一般に,出版社等が,著作権者からその著作に係る写真等を書籍に複製して利用することの許諾を受ける場合,書籍の本文中への掲載の許諾があれば,特段の意思表示がない限り,表紙への掲載も,当然に許諾の範囲に含まれるものであり,本件においては,控訴人書籍の本文中への掲載のみならず,本件画像1の表紙カバーへの掲載についても許諾があると主張する。
 しかしながら,書籍の本文中への掲載の許諾があれば,特段の意思表示がない限り,表紙への掲載も,当然に許諾の範囲に含まれるといった慣行が存在することを認めるに足りる証拠はない上,そもそも被控訴人が控訴人に対し本件各画像を複製して控訴人書籍の本文中に掲載することを許諾したこと自体が認められない以上,これを前提とする表紙カバーへの掲載の許諾があったとする控訴人の主張には,理由がない。
() 以上のとおり,被控訴人が控訴人に対し本件各画像を複製して控訴人書籍の本文中に掲載することを許諾したとの控訴人の主張は,これを認めることができない。
(3) 小括
 
以上によれば,控訴人各画像は,いずれも被控訴人の許諾なく,本件画像1又は本件画像2を複製したものと認められるから,控訴人が控訴人各画像を掲載した控訴人書籍を発行及び頒布する行為は,被控訴人が本件各画像について有する著作権(複製権,譲渡権)の侵害に当たるものと認められる。











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