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他人の名誉を毀損する事実を摘示した者が免責を受けるために真実性を立証すべき範囲
「べツド拘束告発事件」?昭和581020日最高裁判所第一小法廷(昭和56()25/昭和550926?大阪高等裁判所(昭和52()1684 

【コメント】「他人の名誉を毀損する事実を摘示した者は、その重要な部分について真実性を立証することによって、免責を受けることができる」という趣旨を判示しています。 

【最高裁】

 原審が適法に確定した事実関係のもとにおいては、上告人A1に対する本件告発が虚偽の事実を申告したものとはいえず、被上告人らが新聞記者に公表した上告人A1及び訴外Dについての本件告発事実については、重要な部分につき真実性の証明があつたとし、したがつて、右告発及び公表がいずれも不法行為とならないとした原審の判断は、正当として是認することができ、また、被上告人らが、上告人A2に対する本件告発をし、かつ、右告発事実を新聞記者に公表するに当たり、訴外E(旧姓F)の主治医として同訴外人に対し当該告発にかかる行為をした者が上告人A2であると信じたことには、相当な理由があるといえるから、被上告人らには故意・過失がなく、したがつて右告発及び公表はいずれも不法行為を構成しないとした原審の判断も、正当として是認するに足りる。…

【控訴審】

 名誉段損による不法行為の成否
一、 事実の公共性の検討
 第一審被告らの本件告訴ないし新聞社への公表が、真実性の証明によつて違法性を阻却し不法行為責任を否定することを得る「公共の利害に関する事実」に係るものであるか否かにつき検討する。
 名誉棄損の真実性の証明上問題となる右の「公共の利害に関する事実」とは、多数一般の利害に関する事実を指し、とくに国家ないし社会全般の利害に関する事実がこれにあたる。そして、前示…の精神医療の歴史における閉鎖療法から開放療法へ、鎖から科学的治療へと発展する沿革に照らすと、精神病院における治療の極端な立遅れを指摘し、ベツド拘束等の非近代性と非科学性を社会に訴えるため告発を行ない、新聞社の取材に応じてその告発事実を公表することは、単なる一病院の特定の患者の治療の当否を越えて、広く精神医療全般の発展と適正を図るものであり、ひいては国家ないし社会全般の利害に関する事実に係るものというべきである。
二、 目的の公共性の検討
 本件の告発ないしその新聞記者に対する公表が「もつぱら公益を図る目的」に出たものであるか否かにつき検討する。
(一) ここに「もつぱら公益を図る目的」とは、主要な動機が公益のためであれば、その動機に多少私的な動機が混入していても差支えないと考える。けだし、人間の心理作用は複雑であり、唯一の動機のみに基づき行動することを期待するのは著しく困難であるから、「もつぱら」といつてもこれが必ずしも公益目的以外の他の目的の介入を絶対的に否定する趣旨とはいえないからである。
(二) …の各事実を考え併せると、第一審被告G、同Hらは、医師として精神医療の適正化、近代化ないし患者の人権に対する使命に燃えて、他の第一審被告らは看護婦ないし患者代表としてこれを支持し、共に主として精神医療の発展と適正、近代化ないし精神病患者の人権を擁護するという公益を図る目的で本件告発ないし新聞記者の取材に応じで告発事実を公表するにいたつたものであるが、第一審被告らのうちには、本件告発、新聞記者への公表にいたる過程において、多少医師、看護婦等従業員の労働条件改善などの私益に関する動機が混入していたものもあるが、これは付随的な軽微な目的にすぎず、主要な公益目的を否定するものでないことが認められ、この認定に反する当審証人Fの証言の一部は前掲各証拠に照らしにわかに措信できず、他にこれを覆えすに足る証拠がない。
 したがつて、本件告発ないし新聞記者に対する告発事実の公表はもつぱら公益を図る目的に出たものといわねばならない。
三、 事実の真実性の検討
 新聞記者に対して公表、摘示された事実が真実であることが証明されたか否かにつき検討する。
(一) ここにいう真実の証明は、摘示された事実のうち重要でない枝葉の点に関して多少真実と合致しない点があつても、その重要な部分について真実であることが証明されれば足りると解されるところ、特定の事実を告発したとの事実を新聞記者に公表した場合には、右告発が、誣告罪ないし不当告発として不法行為を成立させるに足る違法な虚偽の事実の申告でないことが証明されれば、右真実性の証明があつたものというべきである。
(二) 本件告発事実は、そのうち第一審原告A2B2の主治医として昭和44927日以降診療を担当したとの事実を除き、前示…において説示したとおりすべて違法な虚偽の事実の申告といえないことが認められるから、真実性の証明があつたものというべきであり、かつ、右第一審原告A2を主治医とした点も、真実ではなかつたが、少なくとも、第一審被告らにおいてこれを真実と信ずるにつき、確実な資料・根拠に照らしてみて相当の理由があり、その過失が認められないことは、前示…において説示したとおりである。
四、 不法行為成否の判断
 民事上の不法行為たる名誉毀損については、表現の自由を定める憲法21条、名誉毀損罪の事実証明について定める刑法230条ノ2の趣旨に照らし、その行為が公共の利害に関する事実にかかり、もつぱら公益を図る目的に出た場合には、摘示された事実が真実であることが証明されたときは、その行為は違法性を欠き不法行為は成立しないし、右事実の真実であることの証明がなくても、その行為者においてその事実を真実と信ずるについて相当の理由があるときは、右行為には故意又は過失がなく、結局不法行為は成立しないものと考える(最判昭41623)。
 
本件告発ないし新聞記者に対するその公表は、前示のとおり公共の利害に関する事実に関するもので、しかも、第一審被告らがもつぱら公益を図る目的に出たものであり、摘示された事実の真実性の証明があるか、その証明のない部分についてはこれを真実と誤信するにつき相当な理由があつたものといえるから、違法性ないし故意、過失を欠くものであつて、名誉毀損による不法行為が成立しないことが明らかである。











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